コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
彼との実力の差を目の当たりにして、牽制につとめて実行をこちらにだけさせようとしている事に苛立ちを覚えてしまう。
「あなたなら大丈夫ですよっと」
さらに1本。唸り声が大きくなる。鞭の圧が膨らむ。
「何でなのよ! わたしよりあなたの方がずっと強いのに。わたしが弓を使えないからなのっ? あてつけなのおおおぉっ! いやあぁぁぁ!」
あのエルフのように話しながら躱し続けるなんて芸当がいつまでできるかわからない。こちらのお願いも懇願も受け付けてくれない。あの優しさは開店休業中らしい。
また矢が刺さる。続けてもう1本。
「気を確かに! 斧を持って! 構えるっ!」
鼓舞してるつもりらしい。どこまでもサポートのつもりで枝を切るのは代わってくれないみたいだ。死ぬかもしれない。きっとぺちゃんこになるんだ。
この間測ったらCに成長していて喜んだ(真夜中のおっぱーてぃをひとり開催した)ばかりなのに次は測定不可どころか陥没して地面のシミになっちゃうのかしら。
矢が刺さる。魔獣トレントはその唸り声をはっきりと聴かせてはち切れんばかりに力の込められた枝を真上から。いま着地して崩れた体勢では逃げられない。
「今ですっ、全力で振るえぇぇっ!」
「うぅわあぁぁぁっ!」
はじめて聞いたロズウェルの叫びに、死にたくないわたしも両手に持った斧を渾身のチカラで、振り切った。空を。
昔から鈍臭いなんてからかわれることはしょっちゅうで、大人になった今は弓の使えないダメエルフ。憧れのエルフと空の旅してわたしもなんて思って、さっきまでキラキラしていた世界が終わる。矢の刺さる音がした。
「なに勝手にエンディングを迎えようとしてるのですか? まだ皮剥ぎが残っているのですからやってくださいよ」
嵐の後のような惨状の中で、弓を持った手を下におろして笑顔でわたしを煽るエルフに「ちょっと休憩させて?」と精一杯の笑顔でかわいくお願いしてみた。だめだってさ。