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六年生の春
さくやくんと距離が空いたまま、時は流れた。
春の暖かな風が感じられる頃、また今年も私はクラス替えの表をみつめている。
(やった!!さくやくんと同じクラスだ!!)
今年こそはさくやくんが私のことをみてくれるような陽キャになろう。
そう思いながら私は拳をキツく握り締めた。
六年生になってしばらく経った頃。
私は帰り道、陽キャの茜ちゃんと親友の桃ちゃんに問い詰められている。
茜「ねえ、さくやのことが好きなんでしょ?」
言えない。絶対に彼女だけには言えない。彼女はさくやくんと親しい。そんな彼女にだけは言えない。バス停で私は彼女に身動きが取れないよう押さえつけられる。なぜこんなことになっかというと、桃ちゃんにさくやくんのことを好きだと告白したのを茜ちゃんに聞かれてしまったようだ。
ともか「す、好きじゃないよ!」
震える声で言うが彼女には届かない。
茜「えーw言ってよーw」
桃「ともちゃんって昔そうたくんが好きだったんだよ」
と桃ちゃんが言う。
私は絶望した。
アスファルトの白線だけを見ていた。
顔を上げたら、涙が溢れてしまうから。
親友だと思っていたのに。
茜「ならさ、明日さくやとそうたくんといっしょに帰らせようよw」
桃「いいね!」
茜ちゃんは男子とすごく仲がいい陽キャだ。本当に実現できるだろう。
ともか「ごめん、帰りたい。」
茜「帰らせないよー?w」
ともか「用事あるから、帰りたい。」
“届かない。”
そこを蒼太くんなどの男子の集団が通りすがる。
茜「ねえ、ほら好きだった人に挨拶しなよwww」
ともか「こ、こんにちは…」
蒼太「こんにちは…?」
ああ、不審がられた。もうおしまいだ。
目の前には道路が広がる。今飛び込めば楽になれるだろうか。
ともか「もう飛び込もうかな。もういいや。」
その言葉に彼女達が焦る。
茜「端からみたら虐めみたいじゃんw」
虐めだろ。
茜「今日のところはもう帰るわ」
茜「じゃあねw」
ともか「…じゃあね。」
桃ちゃんとも挨拶を交わして別れる。
彼女は屈託の無い笑顔で別れを告げる。
桃「ばいばい!」
彼女のその笑顔が私にとっては何よりも鋭いナイフだった。
ともか「…ばいばい。(笑)」
私は無理やり貼り付けた笑顔で答えた。
桃ちゃんに悪気は無いのだろう。
天然な彼女のことだ。
きっと悪意なんてないのだろう。
別れた瞬間、涙が溢れてくる。
辛い。 さくやくんに迷惑がかかる。死ななきゃ。死のう。もう死にたい。
私は家に帰って、台所に立つ。
その日の台所はやけに静かで重苦しい空気が漂っていた。
包丁を喉元に当てる。
冷たくてひんやりとしていた。
手が震える。
私は台所の流し台に手をついた。
金属の冷たさだけがやけに正直だった。
それでも私は動けなかった。
昨夜、私の世界は終わりかけていたのに。
学校の廊下は昨日と変わらず騒がしくて、誰も私の喉元に残る震えに気づかない。
茜ちゃんがこちらに向かってくる。
怖い。彼女が怖い。本当に怖い。彼女を前にするとどうしても声が震えてしまう。
嫌だ。怖い。怖い。怖い。
恐怖が私を支配する。
茜「昨日のことなんだけどさ、可哀想だからいっしょに帰らせないであげるよww」
と彼女が笑いながら言う。
その言葉に酷く安堵したのと同時に怒りではなく安堵してしまった自分に嫌気が差した。
その日から私は彼女とは極力関わることを避けて過ごしていった。
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