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「彫刻の鳥」
滑らかな輪郭を誇るように白い光沢の乗っているカップは温かい紅茶で満たされている。
新聞を読んでいた史島に一通の手紙が届いていた。手に持っていたものを年季の入った円形のテーブルに置いた。
傍らの窓から日が差し、その光がその薄暗さを浮き彫りにしているのは、ちょうど、幹が逞しい大木に纏って見え隠れしている葉緑が、廊下に吸い込まれそうになりながら、色褪せた自分の黒い陰をさも楽しそうに踊らせているせいかもしれない。
玄関の外に取り付けられた古びた郵便箱から手紙を取り出し、その差し出し人がさっき見た名前だとすぐに気がついた史島は、それを玄関の靴箱に置いてしまったまま、足早にいましがたいたテーブルに戻って行った。
「どうしたものか。」
思わずこぼれたその一言にはいつもの倦怠感とすぐに打ち消されてしまうだろう少しの高揚が混じっていた。
ようやくカップに手を伸ばした。ぬるくなってしまった紅茶は史島の眉間に寄っていた皺を少しずつ伸ばして行った。