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君に腐った世界を委ねよう

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君に腐った世界を委ねよう

3 - 今日は始まりの日

♥

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2024年09月20日

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あの約束をして半年。

けたたましい空襲警報、季節外れの悪寒。

目に見えていたが、嫌な予感が当たってしまった。敵国との情勢が傾いてきたらしい。

郊外のこの屋敷にまで聞こえてくる王都の警報は相当精微な作りなそうで、まあ機械にめっぽう弱い俺にはよくわからないが、ここまで聞こえるとなると少し迷惑でもあった。


日帰りの任務なんてまだ楽な方で、泊りがけで戦場に赴くことが多くなってきた。

戦へ出る男なんて大体大柄なものだからテントが窮屈でむさ苦しかった。

組織から支給された乾パンと具なしのスープを頬張りながら、手記を開く。

5年前、俺がこの組織に来た日のこと。今より綺麗な字でひとこと、「なかよくしたい」と書いてあった。緊張して噛み噛みの自己紹介したっけ。

2年半前、おどろくちゃんの教育係になった日のこと。あの子は今、どうしてるかなぁ。きっと新しい教育係がついて、俺のことなんてとっくに忘れてるんだろうな。

そんな事を考えているうちに眠くなってきた。

明日も早朝から任務、今日はもう寝よう。

そうして目を閉じた。



伝令には、「きっとこれが最後の任務だろう」。

俺はボスの字が好きだった。


壁に隠れながら3発。

全弾的中、我ながらこのエイム、褒めてほしい。


「北北東に5匹…1人で行けるか。」


壁から出て敵を翻弄する。


空中から銃声をも切り裂いて水素爆弾の音が聞こえる。終戦が近いらしい。


「こっち側は片付いたらしーな」


血まみれで夕方の荒れ地を歩く。ここは街だったらしい。

この街は特に戦争の影響が強く、人ひとりいないし建物もほぼほぼ跡形がない。

ただ、壊れずにぽつんとあった金時計はとても印象に残った。


「疲れたなぁ…」


何故かわからないが、いつか見た遠い夢を思い出した。

あの子が大きくなって、ボスになる夢。

彼女はきっと、良くも悪くもこの世界を変えてくれる。そしたら俺はボスの補佐だろうか?はは、俺に務まるかなぁ。

ちょっとだけ怖い想像をしてしまったんだ。

俺たちは今日も戦わなくちゃならない。

マメと傷だらけの手を見て、もう一度玉をピストルに充填する。

これが俺なりの平和の作り方。こんな方法しか知らない。あの子はどんな平和を作るんだろうか。


俺としたことが気が付かなかった。

さっきの戦いの最中、腕を切られていたらしい。

初歩的なミス。すぐに止血しなきゃならないのに。


次に目が覚めた時は戦場の医務室の簡易ベットの上だった。


「凸もりさん!よかった目が覚めた…」


「…」


「お目覚めしてまだ意識が混濁しているかと思いますが、報告です。今、降伏宣言が王から出されました。 」

「…は?」

目が覚めていきなり伝えられた敗戦。

薄々傾いていたことは知っていたが、まさかこんなに早く終わるとは。

俺は3日ほど眠り続けていたらしく、死の淵を彷徨ったこともあったという。

敵国はまだ優良で、王国の人間とスパイになり得る1000人弱のみ処刑となったらしい。

そして、我儘を言って牢屋のボスと会うことになった。

「ボス。終わりましたね。」

「…ああ。結果としてはあれだが。」

「これからどうなるんでしょうか。」

「王国側の人間は丸々処刑、まあまだいいほうだな。」


「………」


「私もそのうちの一人だろうね。この組織もそうだ。」

「凸もり。君はあの日した話を覚えているか?あの子のことだ。」


「はい。約束しました。」


「もう手配は済んでいる。この組織の人間は安定している遠くの北の国へ飛ばす。君もそうすると良い。ま、ここに残るも自由だがな。」


「ボスは逃げないのですか。」


「勿論。私にもプライドはあるんだよ。」

「あの子には1年前から新しく教育係をつけているからその人とも仲良くすると良い。屋敷に帰ったらあの子には土産話をいっぱいしてやってほしい。」


「…本当に彼女たちに継がせるんですか?」


「この上ないチャンスだ。莫大な資金もある。一生にない体験になるだろう。」


面会終了のベルがなってしまった。

あまりにも短い。


「ではまた、どこかで会おうじゃないか。戦友よ!」


「ボス、ありがとうございました。あなたの野望、彼女に託してみせます。」


それからボスは処刑された。

斬首刑だった。

あの子には、おどろくちゃんにはどう伝えようか。

重い足で屋敷へ向かう。


数年前、毎日通っていた扉。

少し色褪せて、だけど今も美しいそんな色だった。


「ただいま、おどろくちゃん。」


「凸さん…?」


ああ、まだ変わってない。

最後にこの部屋に来たのはいつだろうか、そんなことは思い出せないがきっと変わっていないのだろう。


「はじめまして、しぇいどです。貴方が凸もりさんですね。」


美しい金髪の青目をした少女はしぇいどというらしい。彼女がおどろくちゃんについていてくれたのなら、少しだけ安堵した。


「おどろくちゃん。ずっと昔、約束したこと。…覚えてる?」


「しぇんぱい…お母さんのこと…」


「君には今から全てを話そう。」


この物語は俺から君へ話せる全てである。






──────────

今回はここまで。

回を追うごとに長くなっているのはまた別の話。

不定期にはなりますがこれからも更新していきます。

ぜひ見に来てくださいね。


それでは、また!

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