コメント
4件
更新ありがとうございます!! 楽しみです♪
先輩がナイスすぎますね( ¨̮ ) 涼ちゃんはもっくんがこれからどうなるかも気になります(˶' ᵕ ' ˶) 更新楽しみに待ってます!
ニヤニヤですわねほんとに☺️心臓が浮いてるみたいなん感じでソワソワしますw😳💕
「問題は他のメンバーをどうするかだな」
講義中にPCでデモを聴いていた若井が、悩ましげに口を開く。大講義室とはいえ、今日の出席率ならあまり話していると目立つだろう。俺は声を潜めながら
「明後日にちょうど確定新歓があるだろ。その時に同期たちと顔を合わせられるし、皆そこから気の合いそうなやつととりあえず組んでお披露目ライブに間に合わせようとするはずだ……だからそこでこの話を持ち出す。ドラムとベース、できたらキーボも欲しい。学祭に出るって言ったら大体のやつは引くだろうけど、逆にやる気のあるやつを引っ張れるからちょうどいい」
若井は感心したように頷く。
「まさかそこまで考えて……?」
「だからこのタイミングしかないって言ったろ。今日明日で若井にOKもらえなかったら詰んでた」
そういってにやりと笑って見せると、若井も「なるほどな」と笑う。
「元貴は昔からそういうところ用意周到だよな」
しかし、俺の目論見はまんまと外れることになる。
金曜の夜、事前にグループラインで知らされていた店に出向いていくと、新入生らしき学生らが皆少し緊張した面持ちでたむろっている。まだ知り合いも少ないだろうし、ファーストインプレッションが大事というから出方をうかがってもいるのだろう。まだ若井は来ていないようだった。俺はとりあえず一番近くにいた新入生らしき黒髪の男に声をかける。
「軽音サークルの確定新歓であってます?」
話しかけられたという安堵からか、男の表情はすぐに柔らかいものになる。
「そうです、1年生ですか」
「はい。君も?」
男はこくりと頷く。
「えー、学部どこ?」
「あっ、俺は文学部。君は?」
さらりとくだけた口調にシフトすると、男もぎこちなさをにじませながら合わせてくれる。
「俺は経済。あ、名乗ってなかったね、大森元貴って言います。元貴でももっくんでも好きに呼んで」
よろしくね、といって右手を差し出すと、男も笑いながら応えてくれた。男は楽器未経験でボーカル志望だという。まぁまだ一人目だし、と内心肩を落としながら「今度カラオケでも行こう」と話す。
そのうち、人が集まったらしく、俺たちは先輩らによって店内に誘導された。店に入るときにそれぞれ渡された紙がくじになっていて、書かれた番号の席に座るという仕組みらしい。先ほどの男とは席が離れてしまい残念がられたが、一人でも多くの新入生に打診したい俺としては都合がいい。少し遠い席になった若井と目配せをして頷き合う。それぞれのテーブルは6人席で上級生は新歓係しか参加していないため、比率は新入生4人の、先輩2人くらいにどこもなっているようだ。
俺のテーブルの新入生は俺を含めて男3人に女1人。もともと男女比は圧倒的に男のほうが多いらしいからまぁ妥当だろう。自己紹介の時にそれぞれ希望パートも言っていく形なのだが
「高校でアコギ弾き語りやってたんでギターとかボーカル希望です」
「自分も高校でギターやってました!」
4分の3ギター。ギターが人気というか、まぁパートによって偏りがあるのは当然なのだが、これは引きが悪い。
「自分は高校でドラムを」
肩身が狭そうに手を挙げたのは俺の向かいに座っていた茶髪の小柄な男。ドラム希望は結構レアなのだ。しかも経験者!俺はすかさず
「えー高校の時はどんな音楽やってたの」
と聞いてみる。とりあえず広く伝わりそうなバンドの曲をあげてくれているようだが、そのチョイスも自分の趣味と大きくかけ離れておらず、悪くない。そのまま飲み会が進んでいき、ある程度打ち解け合ったところで、俺は向かいの男に少し顔を寄せて
「ね、俺と組まない?」
と声をかけてみる。少しアルコールも入り、気が大きくなっているであろう男は
「いいね、俺も今んとこ誰かと組む予定なかったし」
と頷く。
「実はさ、俺今度の学祭出たくて。曲もできてんだよね。良かったら聴いてみてくれない?」
途端に男の表情が変わる。
「今度の学祭って、7月の?」
「うん、だからちょーっと練習大変かもしんないけど、新入生バンドで出た例がないから話題にもなるかなって」
「いや無理無理無理」
男は勢いよく首を振る。
「俺、上京組だからバイトも忙しいし、もともと大学ではゆるーくやるつもりなんだよ……悪いけど学祭はパス。合同ライブとか出るなら誘って、大森君とは音楽の趣味合いそうだし」
と、とりつくしまもない。ダメか、と肩を落としていると、横に座っていた男の先輩が
「何、学祭ライブでたいん」
と聞いてくる。それほど強くないが関西特有のイントネーションがある。
「そうなんです、でもメンバー集めなきゃで」
その男は、1年のうちからすげぇなぁ、と感心したように頷いた後
「どのパートが足りてないん」
「えっと、ドラムとベースと、あとできたらキーボードも欲しくて」
「なんや、ほとんど足りとらんやん」
ぽかん、と呆れたように口を開けた後、何か思いついたというように手を打ってみせる。
「いいキーボ知ってるで、紹介したろか」
えっ、と思わず目を輝かせる。キーボードはやってる人自体が少ないから正直諦めていたのに、これはツイている。
「僕がもともと組んでたバンドの子ぉなんやけどな、努力家でいい奴やよ。学祭希望なら別に同期でなくてもいいんやろ?」
俺は首がもげんばかりに勢いよく頷く。必死やなぁ、と男は苦笑する。
「ちょっと待ってな、今日も来とるし……あ、おい、藤澤ぁ」
俺はぎょっとしてその先輩を見る。この先輩の元メンバーって藤澤さんのことか!となるとあのバンドの誰か……いや今はそんなことはどうでもいい。藤澤さんだけはまずいのだ。俺は慌ててその先輩の腕をひっぱって、やっぱいいです、と言おうとしたが時すでに遅し。
「なにー」
と二個ほど向こうの卓から返事をした彼を男は手招きで呼び寄せてしまう。
「あれっ、大森君、この席だったんだ~」
藤澤さんは少し酔っているらしく、ほんのりと頬を赤く染めたまま、にこにこと僕に笑いかける。それを見た先輩が、おや、と不思議そうな顔をする。
「なんや、もう知り合いやったんか。そんならさっさとこいつに頼めばよかったんに」
「何の話?」
小首を傾げる藤澤さんに、男は制止する間もなく話してしまう。
「学祭でライブ出たいんやけどメンバー足りんのやって。おもろいよなぁ、順番が逆やで。せやからキーボードを藤澤どうかって紹介したろ思ってん」
藤澤さんは驚いたように目を見開いた。
※※※
しばらく短編を更新していたので久々の更新に……!