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1 ユキのお話
その子犬、ユキはラブラドール・レトリーバーのメス。母親はクリームのラブラドール・レトリーバー、チェイリ。父親もクリームのラブラドール・レトリーバーで、名前はコウダ。ユキは二匹の5匹中三番目の子として産まれた。他の子はユキと一匹以外みんなオス。ユーダ、ユロン、ヨハンがオスで、ユキとヨノがメスだ。ユキは京都に住む野村さん宅に預けられ、一年間大人になるまで生活することになりました。これはパピーウォーカーと言って、盲導犬となる子犬が人間と暮らすノウハウを学ぶためにあるボランティアです。野村健一さんと野村紗耶華さん、息子の野村誠一さん一家です。「いらっしゃい、ユキ」野村さん一家は温かくユキを出迎えてくれた。「ユキ。シット」健一さんがユキに餌を見せながら指示をする。子犬のユキは知らん顔。早くご飯ちょうだいよう、とでもいうように催促をする。困った野村さん一家は飼育書や日本ライトハウスへ相談したりして頑張ってしつけました。「今ではシット、スティ、ハンズ、ダウンなどを完璧に覚えました。もう可愛っくて仕方ありません」と、しつけ担当の野村誠一さんが愛おしそうにユキを撫でる。
もうすぐでユキの誕生月が来るという日のこと、家族は悲しそうになりました。ユキを見るたびに悲しそうに微笑みます。いつものように撫でてはくれますがその手がやけにゆっくりなのです。「ユキ、ユキ」家族が呼ぶ。ユキは家族の方へすっとんでいった。「ユキ、あなたは盲導犬候補犬なの。だからね、来週には盲導犬協会に返さないといけないの。だからさみしくて」紗耶華さんがユキを抱きしめる。ユキはパタパタと尻尾を振っていた。
ユキを返す当日、野村さん一家はユキと一緒に車に乗った。そして約一時間ほど。盲導犬協会に到着しました。そこには先に来ていたユキの兄妹犬たちが集まっていました。ユキたちの両親、チェイリとコウダも来ていました。「ああ、ユキ。もうお別れなんだね」誠一さんがユキを撫でながらポツリと言った。そして盲導犬協会から修了証書を渡された。その瞬間、ユキはもう『野村ユキ』ではなくなった。
そして職員の人が首輪を手に持ってやってきた。そしてユキに首輪をはめ、野村さんとの思い出のある首輪をそっと外し、野村さんに手渡した。ユキにリードをつけた。「あ、あの」誠一さんが言った。「なあに?」「ユキをよろしくお願いします」誠一さんは頭を下げた。「もちろんよ。この子を立派な盲導犬にするからね。もし、キャリアチェンジ犬(不合格犬)になっても幸せにするからね」そう言ってにっこりと笑った。ユキはそんなのを知らず、嬉しそうに尻尾を振っていた。「行こっか」職員の人がユキのリードを軽く引っ張る。ユキはすっと立ち上がってついていった。その際、一度も振り返ることはなかった。「う、うう」誠一さんは泣きだした。家族もみんな泣いていた。
でもユキには光があった。きっとあの子なら立派な盲導犬になってユーザーさんを守れるだろう。みんなそう確信した。