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そんな出来事があってから、俺はラファエルに大体の行動範囲を伝えている。そうすると、ラファエルはすっかり安心しきった顔になるのだ。
「じゃあ今度からは散歩することを伝えるか? 」
「…はい。」
「ラファエルが寝てても? 」
「……はい。」
「分かったよ。ただし、どれだけ眠くても怒るなよ。」
イアンは朗らかに笑い、ラファエルと部屋に戻ることにした。
部屋に戻っている途中、ガラスにイアンの姿が反射した。あまり気にしたことは無いが、イアンの容姿も中々かっこいいのでは無いかと思う。 ラファエルとは母親違いであるが、やはり父親が同じなだけあって雰囲気や系統は似ている。
俺の目と髪はこの世界では珍しい黒色だ。これは正妻の血を引き継いだと言っても良いだろう。ラファエルは綺麗と言ってくるけれど、周りと違う黒色が、成長していくうちに1人だけ疎外されている気分になってしまい、大嫌いになってしまった。日本では当たり前だった髪色が、今やこんなにも嫌だと思うなんて。
目は悪役だからか、少しつり上がっている。性格は心がけてきたからか、ゲームよりはキツイ見た目をしていない。
隣のラファエルをチラ見する。ラファエルもこちらを見ていたのか、目がバッチリあってしまった。
(かっこいいって言うより、美しいんだよな。神秘的って言うか。 )
ゲームよりも何倍現実の方が迫力がある。横にいる自分が欠けて見えて、たまに距離をとろうとするが、ラファエルは許してくれないから離れられない。
(毎日ジャンプとかしてきたのに、ラファエルの身長には勝てないし。)
前世よりも何十センチは高く育ったのに、ラファエルはそれを悠々と超えてきた。
「兄さん?」
「あっ 」
ラファエルについ見入ってしまったようだ。見つめられたことに少し照れたのか頭をかいている。
「ごめんごめん、かっこよくなったなって思って。」
「…本当ですか?」
ラファエルはパアッと顔を輝かせた。やっぱり、兄に褒められるってどんな国でも嬉しいんだな。
「ああ、本当だよ。」
「兄さんが容姿のことを褒めるなんて珍しいですね。」
これは―――、喜んでいるようだ。
「兄さんもかっこいいですよ。本当に。」
(ラファエルに言われても、お世辞にしか聞こえないんだが…。)
「好きなところは沢山あるけど、特にって言ったら、やっぱりその瞳ですかね。」
「この真っ黒な目のことか?」
コンプレックスになってしまったから、目のことにはあまり触れてほしくない。しかし、ラファエルはズバズバと言ってくる。
「そうですよ。兄さんは肌が白いから、色が対照的で綺麗に見えるんです。」
「…そっか、ありがと。 」
こんな感じで隙があれば褒めてくるから、照れが止まらない。直ぐに顔が赤くなってしまうからやめて欲しいものだ。
「兄さん、照れてますか?可愛いなぁ。 」
(これは…、口説き文句を俺で練習しているのか?)
「あーはいはい、分かったよ。可愛くないから。」
ラファエルに呆れつつ、部屋についた。ラファエルの部屋はせっかく日当たりが良くて綺麗なのに、ほぼ俺の部屋に来ているからほんの少しホコリが溜まっている。
「そろそろ朝食にするぞ。着替えてくるからここで待っとけよ。」
とか言っているものの、毎回結局後ろを着いてくるから意味は無い。
「俺も兄さんの部屋で着替ます。」
「あーもう、勝手にやってくれ。」
ラファエルには本当に呆れてしまう。どれだけブラコンになってしまったんだ。
「兄さん、手伝ってもいいですか。」
前世の服と比べ、貴族であるから服の着る工程が多い。体のあちこちに紐があるから誰かに手伝ってもらわないと中々手間である。
「ああ、お願いしていいか?」
背中や肩にある紐を全て結んでもらう。イアンには専属メイドなどが付いていないため、あとを付けてくるラファエルに任せるようになってしまった。
「あれ?」
着せてもらってる間、全身鏡を見た。そうしたら、首の辺りが赤く染っているのが見えた。イアンはそっと首を撫でて言った。
「最近暑くなってきたからか、虫が増えたな。」
ラファエルの手が一瞬止まった。
「あ…、はい、そうですね。」
明らかに何かを知っていそうな反応だ。ラファエルの首をみるとなんの跡もない綺麗な橙色である。
(何か特別な薬でも使っているのか?)
どうやら知られたくないことがあるみたいだ。