テラーノベル
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同じ頃、不気味な静寂に包まれた魔王軍の拠点の廊下を、2人の男が歩いていた。大河蹴介と、長田零。
2人の瞳は、他の洗脳された仲間たちと同じように、濁った紫色の光を宿している。…ように、完璧に見えていた。
(……マジで危ねえところだったぜ。あの光を見た瞬間、咄嗟に頭の回路を切り替えて『洗脳されたフリ』をしなきゃ、今頃魂ごと乗っ取られてた)
蹴介は、いつもの弾けた笑顔を完全に消し去り、操り人形のように無機質な足取りで歩いていた。彼の底抜けた明るさは、天性のもの。しかし、その裏にある素の顔は、驚くほど冷静で賢い。
(瑠偉と渉、それに晴翔は逃げ切れたみたいだな。あいつらなら必ず戻ってくる。それまで、俺がここで敵の情報を集めて、内部から揺さぶってやる……!)
蹴介は隣を歩く零に、チラリと視線を送った。零の完璧な容姿の顔には、一切の感情がない。その瞳もまた、どす黒い紫色に染まっているように見える。
(零のやつ、完全にイカれちまってるな……。そりゃそうか、あの術はヤバすぎた。まさかあの完璧超人の零まで一発でやられるとはね。……まぁ、だからこそ俺が正気だってことは、幹部の奴にも、この零にも絶対にバレちゃダメだ)
蹴介は心の中で冷や汗をかきながら、さらに「完璧な操り人形」の演技に徹した。
しかし、その隣を歩く長田零の思考は、全く別のベクトルで回転していた。
(……危機一髪だったな。俺の身体能力と精神防壁を限界まで集中させ、ギリギリのところで精神汚染を偽装することに成功した。自分ながら見事な立ち回りだ)
頭脳明晰、運動神経抜群の天才・零もまた、その高い能力をフル回転させ、『洗脳されたフリ』をして潜伏している真っ最中だった。
(瑠偉たち3人は脱出した。なら俺は内応者としてこの城に残り、幹部の弱点を探るのが最善。……そのためには、俺が正気であることは誰にも悟られてはならない)
零もまた、隣を歩く蹴介を、冷徹に観察していた。いつもチームのムードメーカーとして騒いでいた蹴介が、今はロボットのように淡々と歩いている。
(蹴介め、完全に魂を書き換えられたか。普段のあの軽薄な明るさが嘘のようだ。……あの幹部の洗脳術、やはり底が知れない。でもボロを出せば、俺も蹴介のようになってしまうな。徹底的に潜伏しなくては)
お互いに「自分だけが正気だ」と思い込み、相手が完全に洗脳されていると信じて疑わない2人。そのため、お互いの前でも一切の油断を見せず、完璧すぎる『洗脳されたフリ』の演技合戦が繰り広げられていた。
「おい、お前たち」
廊下の先から、あの洗脳幹部が姿を現した。2人は同時に足を止め、無機質な動作で頭を垂れる。
「逃げた3人のネズミどもを追う。お前たちも、かつての仲間を狩る準備をしておけ。ククク……」
「……御意、魔王様のために」
零が感情の消えた声で、完璧に答える。
「……ターゲットの抹殺、了解しました」
蹴介もまた、素の賢さを押し殺し、冷酷な人形になりきって応じた。背中合わせの2つの欺瞞。お互いが味方だと気づかぬまま、しかし目指す目的は同じ「仲間の奪還」。魔王城の暗闇の中で、2人の孤独でハイレベルな騙し合いが始まろうとしていた。
コメント
1件
ああ、もうこの回すごかった……!🤍 蹴介と零、両方とも「自分だけが正気」って思ってて、お互いを洗脳されたと思い込んでるの、すごくもどかしいけど面白かった。 ふたりとも完璧すぎる“フリ”の演技合戦してて、背筋が冷えるような緊張感があった。 「ターゲットの抹殺、了解しました」って言う蹴介の声、頭の中では違うこと考えてるのが切ない。 早くふたりが“実は味方”って気づく瞬間が見たいな……。続き、心臓バクバクしながら待ってます🖤
如縣 遼太
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