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若井+元貴×涼ちゃん
ツアー終盤。
涼ちゃんの様子がおかしいことに、
最初に気付いたのは僕だった。
「……涼ちゃん?」
リハ中、指が少し遅れる。
鍵盤を押す手が、ほんの少し震えてる。
「大丈夫?」
涼ちゃんはいつものふわっとした笑顔。
「うん、大丈夫だよ」
でも声が弱い。
若井も気付いてる。
何も言わないけど、視線がずっと
涼ちゃんを追ってる。
本番はやり切った。
でも楽屋に戻った瞬間。
涼ちゃんの身体がふらっと揺れた。
「涼ちゃん!」
僕が抱き止める。
体、熱い。
若井がすぐ額に触れる。
「熱ある」
声が低い。
怖い時の声。
ホテルに戻るまで、若井はずっと
涼ちゃんを支えてた。
部屋に入った瞬間、涼ちゃんはベッドに倒れ込む。
「ごめん……迷惑かけた」
その一言で、胸がぎゅっとなる。
「…迷惑って何」
僕は少し強く言ってしまう。
「そんな言い方しないでよ」
僕の言葉に、涼ちゃんはびくっとする。
あ、違う。
怒りたいんじゃない。
怖かったんだ。
若井が静かに言う。
「涼ちゃんまた無理したでしょ」
涼ちゃんは目を逸らす。
「、二人に心配かけたくなくて」
その言葉で、僕の中の何かが崩れる。
いつも迷惑じゃない、って言うのに。
僕にはいつも頼れっていうのに。
なんで一人で抱えるの。
若井がベッドに腰掛けて、涼ちゃんの髪を撫でる。
「頼って。」
短い言葉。
でも優しい。
涼ちゃんの目が潤む。
「……頼っていいの?」
その声が、いつもより幼い。
僕の心臓が跳ねる。
「当たり前」
僕は涼ちゃんの手を握る。
熱い。
「僕たち恋人なんだから」
涼ちゃんがぎゅっと握り返す。
「今日だけ、甘えてもいい?」
珍しい。
涼ちゃんからそんな言葉。
若井と僕、同時に固まる。
「……どう甘えるの」
僕が聞くと、涼ちゃんは少し恥ずかしそうに。
「そばにいてほしい」
その一言で、全部溶ける。
若井がベッドに入り込む。
「じゃあ涼ちゃん挟んじゃお」
僕も反対側に潜る。
涼ちゃんが真ん中。
熱のせいか、顔が赤い。
でも、いつもより素直。
涼ちゃんが僕の胸に額を押しつける。
「元貴、あったかいね」
心臓止まりそう。
若井の腕が後ろから涼ちゃんを包む。
「俺もいるんだけど」
涼ちゃんが小さく笑う。
「二人ともほしいなぁ、若井もあったかい」
その甘さに、僕が先に壊れそう。
若井が静かに言う。
「普段は甘えてくれないくせに、」
涼ちゃんは小さく呟く。
「だって……二人が甘えさせてくれない」
「は?」
僕と若井、同時。
涼ちゃんがもぞもぞ動く。
「いつも守られてるから、僕、強いフリしちゃう」
その言葉に、胸が締め付けられる。
そんなふうに思ってたの。
若井が額にキスを落とす。
「強くなくていいの」
僕も髪を撫でる。
「涼ちゃんは甘えていい人」
涼ちゃんの目から涙が一粒こぼれる。
「……好き」
小さな声。
若井がぎゅっと抱きしめる。
僕も抱きしめる。
「俺も」
「僕も」
涼ちゃんが力を抜く。
体重を全部預けてくる。
珍しい。
でも、嬉しい。
――弱い日の特権。
守るだけじゃない。
甘えさせる。
頼られる。
それも愛なんだって、やっと分かった。
しばらくして 涼ちゃんが眠りに落ちる。
呼吸が静かになる。
若井が小声で言う。
「焦った」
「僕も」
怖かった。
失うかもしれないって、一瞬でも思った。
若井が僕を見る。
「絶対に守る」
僕は頷く。
「三人でね」
ベッドの真ん中で眠る涼ちゃんを見ながら
この人が笑っていられるなら なんでもする。
そう思った夜だった。
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