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お股ポテト
29
はるにし
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僕は二日で退院できた。
シュメリはもう少し入院する予定だったけど、僕が帰るなら帰るって、屋敷に戻ってきた。
背中は痛いみたいで、毎日、治療室に通っている。
退院した次の日、僕はクロノアに会いに行った。
「蛇の使い魔で一緒に来てくれて、ありがとうございました」
僕は、クロノアにぺこりと頭を下げた。
「少しは役に立ったようだね。良かったよ」
クロノアが僕の前に立った。
顔を上げたら、デコピンされた。
「いたっ!」
「無茶した罰だ」
「ごめんなさい」
そういわれると、何も言えない。
「反転術を使ったね」
「見ていたの?」
「いいや」
クロノアが、いつもの通りミルクコーヒーを淹れてくれた。
僕はクロノアの隣に座った。
「私の使い魔は切り裂かれてしまったからね。しかし、シュメリが負傷した状況で屍狼を倒すなら、リンネが使える手段はそれしかない」
見事な名推理だ。
僕は只々感心した。
「まだ教えていなかった筈だが、使い方はどうやって知った?」
「何となく、やってみたらできたよ」
クロノアがパチクリ、と目を瞬かせた。
次の瞬間、笑い出した。
「クック、そうだった。リンネは感覚で術を使う魔術師だったね」
「ダメだった?」
「いいや、英断だ。あの状況でリンネが反転術を使わなければ、シュメリは確実に死んでいたよ」
それは、寒気がする話だ。
クロノアが僕の胸に手をあてた。
「魔花も開いたね。十分咲きだ」
クロノアが僕を覗き込んだ。
「自分の気持ちも、見付けたね」
「うん……大事なこと、ちゃんと、わかった」
シュメリを愛してるってこと。
一緒に生きていく人は、シュメリが良いってこと。
絶対に失いたくないってこと。
それに。
(バルトがお屋敷を出ても、もう会えないわけじゃないんだってことも)
ずっと三人で同じ場所に住んでいなくても。
ずっと三人でいることはできるんだって。
同じ形じゃなくても、変わるわけじゃないんだって。
何となく、わかった気がする。
「大人になったじゃないか、リンネ」
クロノアが僕の髪を撫でる。
大人という割に、扱いが子供だ。
けど、それでもいい。
「僕、大人だよ。ちょっと子供っぽいだけだもん」
「子供っぽいのは、認めるのかい」
「うん、それが僕だから」
そういう僕でも、シュメリは愛してくれる。
そういう僕を、バルトは可愛がってくれる。
だから、それでいい。
「やっぱり、大人になったね」
クロノアがお菓子を出してくれた。
「魔力増幅の効果を付与したお菓子だ。沢山お食べ」
「わぁい、ありがと」
ホロホロのクッキーと、フワフワの焼き菓子だ。
どっちも大好きなお菓子だ。
僕はクッキーを頬張った。
「リンネ、一つだけ、注意しておくよ」
「何?」
「反転術は命を奪う危険な術だ。使う時は慎重にね。どんな生物も、不当に命を奪ってはいけない。魔術の基本だ」
僕はお菓子を食べる手を止めた。
「屍狼はアンデットだ。既に命を失くした魔獣は理に反する。だから討伐対象になる」
「それ以外の魔獣は?」
「時と場合によるが、人の都合で命を奪うものじゃない。見極めるのは、常に自分だ。覚えておくんだよ」
「うん、わかった」
クロノアの話は、難しい。
だけどきっと、大事なことだ。
今の言葉を胸に刻んでおこうと思った。
「ところで、シュメリはどうしている?」
「今日は治療室で治療して、その後お仕事に行っているよ」
「あれだけの負傷をしてもう仕事とは、馬鹿なのかな」
「屍狼討伐の報告書を上げないといけないんだって」
屍狼討伐隊の指揮官だったシュメリは、討伐後も事務処理が多いらしい。
屋敷でも書斎に籠って大変そうにしている。
「そんなものは副団長に丸投げすればいいのに。真面目というか、融通が利かないというか。人を信用しない質は、リンネがいても変わらないか」
クロノアが、袋詰めしたクッキーと焼き菓子を取り出した。
「シュメリに食べさせてやると良い。回復が早くなる」
「わかった。絶対に食べさせる」
帰ったらすぐに食べてもらおう。
僕はもらったお菓子を大事に鞄に仕舞った。
コメント
1件
リンネが自分の気持ちをちゃんと見つけられたのが、本当に良かったなあって思いました。「シュメリを愛してる」「一緒に生きていく人はシュメリが良い」って、ああだからあの場で反転術を使ったんだなと納得しました。クロノアとの会話も安心感があって、大人になったねと言われて「子供っぽいけどそれが僕だから」って言えるリンネ、すごくいい。クッキー美味しそう!シュメリにも届くといいな。