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「それ・・会社のこと知っても、そう言い切れますか?」
「・・・どういうこと?」
「いっくん今会社の為に頑張ってるのは、お父さん倒れたからなのは知ってますよね?」
「もちろん・・・」
「これまだ会社の人も誰も知らない話なんですけど・・・どうやら会社危ないらしいです」
「えっ・・・?」
思ってもいない言葉に耳を疑う。
「詳しいことはよくわかんないんですけど・・・とりあえずうちの父から聞いた話によると、うちの会社が力を貸すことでいっくんの会社を救うことが出来るって。それって、どういう意味かわかりますよね・・・?」
うちの会社そこまで危ないの・・?
今どういう状況になってるの・・?
樹、そんなこと一言も・・・。
「私といっくんが結婚することで父は会社に力を貸してくれます。私がずっといっくんのこと好きなの知ってるし、父は私の願いを叶えてくれて私もいっくんも救ってくれるんです」
「ちょっと待って。急に会社とかそんなこと言われても・・今そんなこと初めて聞いて・・」
「無理もないですよね。いっくん多分透子さんにもそんな大事なこと話してないんですもんね。だけどこのままだといっくん会社救えなくて大変なことになると思います。もちろん透子さんだって会社このまま救えなかったら困るんじゃないですか?」
樹を信じて気持ちを貫く決心してたのに。
会社に影響出てくるなんて・・こんなのもう自分達だけの問題じゃない。
「いっくん結婚断って透子さんと付き合い続けて・・だけど、それで困る人がどれだけ出てくると思いますか?」
目を背けたくなる現実、だけど目を背けられない現実を突きつけられてまた気持ちが揺れ始める。
「いっくんは多分透子さんには言わずに、どうにかしようと思ってるんだと思います。だけど、いっくんがそれをどうにか出来ると思いますか?」
確かにまだ樹の力ではようやく社長業を手伝い始めたばっかりで、いくら部署ではエリートだったとしても、会社を救えるかなんてそこまで大きくなると、きっと話は別だ。
「今のいっくんと会社を救えるのは私です。透子さんじゃないんです・・・」
そうだよね・・。
どう考えても自分の力でそんなこと出来るはずない。
ただの一社員の自分に、樹も、まして会社まで救えるはずなんてない。
私が気持ちを貫いて今の関係を続けたところで、誰も救うことなんて出来ない。
二人だけ気持ちを確かに持っていれば、例えその陰に傷つく人がいたとしても仕方のないことだと思ってた。
それくらいしないと樹とは一緒にいられないと思った。
それだけのことをしても樹への気持ちは貫きたかった。
だけど、そうすることで、もっとたくさんの人が傷つくことになる。
私さえ諦めれば、樹は麻弥ちゃんと結婚して麻弥ちゃんを傷つけずに済むし会社も救うことが出来る。
元々麻弥ちゃんのことは大切にしていた幼馴染だし、嫌いな相手と一緒になるワケじゃないし。
私のことさえ忘れれば、樹にとってもきっと何年か経てばこの選択をして良かったと思う日が来る。
「透子さんはきっと他に幸せにしてくれる方現れると思います。透子さん素敵ですし、きっとすぐ見つかります。だけど・・・私はいっくんじゃないとダメなんです。そして、いっくんも結果私を選ばないと幸せになれないんです」
あぁ・・・なんかどんどんもう自分にはどうすることも出来ないんだと痛感する。
「お願いします。いっくんを私に返してください・・・」
もう・・ダメだ。
あんなにも気持ちを貫こうと決心したはずなのに。
どんなことがあっても樹を信じて好きでいようと決めたのに。
今回ばかりは、私が引かないとどうにもならない。
私と一緒にいることで樹を不幸にさせたくない。
大丈夫。今ならまだ引き返せる。
最初だってあんな軽く簡単に始まっただけだし、今ならきっと忘れられる。
麻弥ちゃんにとっては樹はきっと自分のすべてで、ずっと昔からその想いだけを力にして支えられてきたんだと思う。
樹だと知らずにずっと好きな人の話を聞いてた時も、ホントに小さい頃からずっと想い続けてて、麻弥ちゃんのすべてなんだなとあの時からそう思ってた。
きっと全然知らない人が相手なら、関係なく気持ちを貫いたかもしれない。
だけど、麻弥ちゃんの樹への気持ちもどれだけ強くて大きいのか痛いくらいわかるから・・・。
そりゃ麻弥ちゃんにしたら、ずっと好きだった人が急に現れた誰かに奪われたらツラいよね。
私なら同じように納得いかないもん。
まして結婚出来る関係性にいるのにそれが他の人に邪魔されて・・・。
私さえいなくなれば、すべてが上手く収まる。
自分なんかの関係を続けることを選んでも、何の徳にもならない。
樹自身も、麻弥ちゃんも、会社も、すべて自分のせいで不幸にしたくない。
きっとこれはもう決まった運命。
そして私にはどうすることも出来ない運命。