「わかった・・・」
気付くと自分の口から自然とそう呟いていた。
「え・・?」
ここまで来たら自分の運命が望んだモノじゃなかったのだと認めて、もうこの現実を受け入れるしかない。
「麻弥ちゃんの樹への気持ちもわかってる。そして、樹は麻弥ちゃんと幸せになって、この会社を守らなきゃいけない義務がある」
「透子さん・・・」
「だから。樹の隣りに私はこれ以上いられない」
こんな直接面と向かって年上の知っている相手にこんな風にお願いするのも、麻弥ちゃん勇気いっただろうな。
「だけど・・・少し時間ちょうだい。樹とちゃんと話し合うから」
「わかりました。透子さん、ありがとうございます。すいません、我儘言って・・・」
「仕方ないよ。麻弥ちゃんの気持ちもわかるから。誰のせいでもないよ」
麻弥ちゃんもいい子だから自分の感情だけでとても責めることは出来ない。
逆に私の方が邪魔に入ったみたいなもんだし。
「じゃあ、ちょっと私そろそろ仕事戻らなきゃいけないや。ごめんね」
「いえ!すいません!お忙しい所ありがとうございました!」
「じゃあね」
麻弥ちゃんと別れて、会社へまた戻る。
麻弥ちゃんに言ってしまった。
これでホントに樹と別れなきゃいけない。
あ~あ。樹になんて言おう。
樹信じろって言ってたのに絶対怒るよね。
あれだけ自分だけ信じろってうるさいくらい言ってたもんな。
ホントは別れるつもりなかったんだけどな・・・。
だけど、もう何が正解なのかわからない。
何を選んだって誰かが傷つく。
それなら・・自分だけが傷つく方がいい。
樹は、きっと大丈夫。
私がいなくても、たくさん樹を必要としてくれる人がいる。
私が身を引けば、樹が幸せに出来る人はたくさんいる。
樹はそれが適えられる人だ。
私の為にそれを無駄にしてほしくない。
もし、樹が自分と同じただこの会社の社員としての1人だったら、この仲は続けていけたのかもしれない。
だけど、樹はこの会社を背負う立場にいて、将来が決められた逃れられない立場の人間。
そんな相手に自分を選んでほしいだなんて、とてもじゃないけど言えない。
どうせこの年齢までずっと一人でいたくらいだし、私はまた一人に戻っても平気。
また前みたいな生活に戻ればいいだけ。
樹を知らない自分に戻ればいいだけ。
・・・でも、いざ別れを選ぶのは気が重い。
やっぱり好きなだけでどうにもならないことって世の中にあるんだな・・。
前の恋で充分その苦さ味わったはずなのに。
・・・また想いが届かない恋愛。
結局別れを選ぶことになるのなら、出会わなかった方が楽だったのかな・・・。
なのに。
一緒にやっぱりいれない運命なのだと思うほど、樹が恋しくてたまらなくなる。
離れれば離れるほど、樹と一緒にいたくなる。
今度こそ絶対樹と離れないって決めたのに。
どうしてこんなにうまくいかないんだろう。
どうしてこんなに一緒にいられないんだろう。
やっとずっと一緒にいたい人見つけたのに。
やっと本気で好きだと思える人に出会えたのに。
どうしてお互いこんなに好きなのに・・・。
こんな風に樹と出会えたこと、運命なのかもってホントに思った。
ホントに樹は運命の人なのだと思ってた。
樹が私を見つけてくれて、好きになってくれて。
こんなに自分を想ってくれて、自分のことを誰よりも理解してくれて。
どんな時でもずっと信じ続けてくれて支えてくれた。
だけど。
実際は、やっぱり一緒にいられない運命だったのかな。
離れなきゃいけない運命だったのかな。
樹の運命の相手は、私じゃなかったってことなのかな・・・。
あぁ・・
考えれば考えるほど、樹じゃなきゃダメなんだと結局は痛感する。
こんなにも心が樹が好きだと訴えてるのに・・・。
私だけに見せてくれたあの笑顔も優しさも、好きだと言ってくれた言葉も、樹のくれたすべてを忘れたくない。
ホントは誰にも渡したくない。
ただ一緒にいられなくても、樹のこと好きでいられればそれでよかったのに。
樹と想い合っていられるのなら、それだけでよかったのに。
もう樹は私のすべてなのに・・・。
だけど、ホントに今度こそ。
この気持ちを諦めなきゃいけない時が来たのだと思った・・・。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!