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炎の魔法を使えるメイドのカロリーヌがついてくる。二つの三つ編みを下げている黒髪の彼女なら、冒険する際とても頼りになりそうだ。
「王子は私が孤児院で暮らしていた頃、助けてくれた恩人です。私も助けなければいけません。でも助けたら、いつものように報酬がもらえるのでしょうか?」
報酬の話が出てきて、額に汗をかいてしまう。
彼女は天然だからな。仕方ないか。
「報酬って……ま、後であげるさ。とにかく城から出て、あのロボットがどこにいったか散策するぞ。でもなー、知らない人と話すのはちょっとな……聞き込みは頼む」
「かしこまりました。私が聞き込みをして、王子が辺りを散策してロボットの痕跡を探すんですね」
「違う違う!最初に仲間を集めようと思ってね。メイド一人と僕だけだと、倒せるか分からないし」
「仲間……?孤独でいつも佇んでいる王子が……?わかりました、頑張ってください」
「ディスるのはやめろ!」
カロリーヌのひどい言葉にツッコミを入れて、二人はその場から離れることになった。
シプリートは仲間を集めるのだが、どうやって話しかければいいか分からない。特に目の前にいる青髪の弟に話しかけるのは、至難の業だ。
深呼吸をした後、話しかける。
「えーと、その……」
「何?」
白と紫のオッドアイで睨まれてしまい、心臓が掴まれたような恐怖を感じてしまう。口調もかなりキツくて、縮こまる。
「用がないならさっさと目の前から消えてくれ。城が壊されたんだ。修理しなければ」
「そ、そのことなんだけど……」
「何?はっきり言えよ、兄さん」
「僕と結婚したエミリが何者かに連れ去られた!ドミニック、一緒に来てくれないか?」
でかい声でそう言うと、彼は耳を塞いでいた。呆れている様子だ。
「声デカすぎ……。TPO(時・場所・場合)を弁えろよ」
「ごめん……」
「普通に嫌ですよ。なぜ兄さんの嫁さんを助けるために、協力しなければいけないんですか?他の人に当たってください。兄さんのような魔法が使えない無能とは、一緒に行きたくありません」
「えっ!?お前の水能力すごいのに……そっか、わかった」
眉を下げて悲しげな表情でその場から去る。
彼はその様子を見て声をかけようとしていたが、シプリートは無視をする。
弟のドミニックは一度考えを決めたら、それを突き通す性格だ。しかもドミニックとは昔から仲が良くなく、たとえ剣術が上手くなっても誉めることが一度もなかった。つまり少しナルシストな一面があるのだ。
何を言っても無駄なので、諦めて三男と末っ子、長女や次女にも頼みに行こう。流石に両親は国の安泰を支えるのに忙しいので、仲間になってくれないだろうが。
大柄の三男は大広間に居て、テーブルの上には美味しそうな食べ物がたくさん乗っていた。それを手で掴むという下品な食べ方をしていて、皿まで食べそうな勢いだ。服は油まみれになっている。
どうやら城が揺れたことに気が付かなかったらしい。
「なんだー、おいらになんかようかいな?」
「その……えっと……僕の嫁のエミリがロボットに攫われたんだ!助けて欲しい」
「んんー、それは大変だな。よし、助けてやるぞ。いっぱい飯を食えば、力も湧いてくるしな!」
明るい顔で、グッドマークを示してくる。三男ザールは次男と違って助けてくれるようだ。
彼はかなりの食いしん坊でなんでも食べてしまうため、彼を仲間にするなら食べ物がたくさん必要になる。大変ではあるが、父上からもらった資金を活用すればたくさん買えるはずだ。
ザールは全て食べ終え、シプリートはその横で食事を摂る。
少食なのでそんなに食べられないが、野菜の入った香ばしいミルクスープに切られた固いフランスパン。こんがり焼けた骨付きのチキンを食べる。
特に肉がジューシーで、ほっぺたが落ちそうなほど美味しい。たくさん食べてしまう。
それを見た彼はとても上機嫌な表情を浮かべた。
「おお、今日はたーくさん食べたな!たくさん食べるやつは好きだぜ!」
「実は仲間を探そうと思って。もしかしたら相手が強いかもしれない」
「そうかそうか。おいらが一緒に説得してやるぜ!」
そう言われて、安心してしまう。
シプリートは弟のドミニックのように馬鹿にされるかもしれないという気持ちが強く話すことに抵抗があるので、話し上手なザールが仲間についてほっと息をつく。
彼は椅子から腰を上げて、ゆっくり歩く。太りすぎたせいで、明らかに歩くのが遅い。これでは冒険をするどころか、足手纏いになってしまう。
ザールはハアハアと息を吐き、苦しそうにしていた。無理に歩かせるわけにもいかず、結局一人で仲間を探すことにする。
とても残念そうに眉を顰め、その場で膝をつき両手を床につける。
「すまんなー。食べ物が美味しすぎるのがいけないんだ。頼りにならないから、やっぱり運動するか……」
「散歩も運動することなるよ!」
「ナイスアイディア。よっしゃ!いっちょ鍛えてくるぜ!」
そう言ってゆっくり立ち上がり、自分のペースでどこかへ向かっていく。恐らく体力をつけに行ったのだろう。
「一人になっちゃったけど、お姉様と妹に話しかけるか」と、呟いて恐怖のあまり顔が青ざめる。