テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
目的地の旅館までは、あと40分ほどらしい。
長いトンネルを抜けると、山が綺麗に紅葉しているのが見えた。
「しゅん、見て? 紅葉綺麗」
「ほんまやなー。ちょうど綺麗に色付いた頃に来れて良かったわ」
「天気もいいし、空気も澄んでるし、紅葉も綺麗だし、ラーメンは美味しい。北海道って本当に最高だねぇ」
「これから温泉入って、美味しいご飯食べて、お酒飲んで、一緒に寝て。何よりじゅうとずっと一緒にいれるんやから、ほんま最高やわ」
一緒に寝るの?
まあそりゃ、同じ部屋なんだから一緒に寝るか。
けれど、なぜか変に意識している自分がひどく気持ち悪かった。
「あ、あれちゃう?俺らが泊まる旅館!」
「わぁ!すごっ!!立派じゃん!!」
周りは豊かな自然に囲まれていて、趣のある綺麗な旅館だった。
正直、かなりテンションが上がっている。
車を駐車場に停め、荷物を持って旅館の入り口に向かう。
門から入り口までは和風庭園が広がっていて、小川のせせらぎ、木々を揺らす風、小鳥のさえずり……
一気にその空間に引き込まれていく。
「すっご〜」
「やばいなぁ〜」
二人とも、語彙力はどこかへ消え去っていた。
入り口の扉を開けると、心地いい畳の匂いが鼻腔をくすぐる。
ここで靴を脱ぐようだ。
「めっちゃ和の雰囲気やな!!最高やん!」
「ね!!こういう雰囲気、大好き!」
小声ではしゃぎながらロビーを進み、チェックインを済ませる。
ロビーにはのんびり庭を眺められそうなベンチや、風呂上がりにゆっくり寛げそうなスペース、少し奥にはバーや売店、あとは茶室のようなものまである。
この空間にいるだけで、すでに心がじんわりと安らいでいくのが分かった。
エレベーターに乗り、客室へ向かう。
どうやら館内は全て畳敷きのようだ。
非日常な空間に、胸が高鳴る。
「じゅう、お部屋ここっぽいで!開けるで?」
「うん!」
#ちゃのざき
かわそ🍼💙 ☁️💫
3,048
D a i ©
556
鍵を回し、扉を開ける。
「うわぁーめっちゃいいやん!!最高やー!」
あちこち見て回る彼を横目に、
「すっごい……こんなに贅沢していいんですか……?」
なんて呟きながら、想像以上に素敵なその客室の真ん中で、仁王立ちのままキョロキョロしているだけの僕。
奥から、僕を呼ぶ声がする。
声のする方へ進むと、きらきらした目の彼がこちらを見ていた。
「じゅう!見て見て!!客室露天風呂あるんよ!!」
「え、ま?」
二人で窓の外を覗き込む。
「「まじかーーーーー最高やーーーん」」
また、綺麗にハモった。
「じゅう! 後で一緒に入ろうな!!」
「え、うん。そうね」
僕は変に意識してしまって、何とも言えない返事をした。
いや、男同士だし、ここだけじゃなくて大浴場だって普通に一緒に入るだろ。
心の中でそう突っ込んだけれど、彼があまりにも嬉しそうに言うものだから、なんだか調子が狂ってしまうのだ。
「なあ!ここな!貸切風呂も四ヶ所もあるんやって!!すごない?」
「えぇ!?四ヶ所も?どういうこと?大浴場に客室露天風呂に、貸切風呂が四ヶ所??」
「そやで!やから言ったやろ?絶対二泊するべきやって!!!」
めちゃくちゃドヤ顔の彼。
というのも、最初は一泊二日の予定だったのだ。
けれど、しゅんが「いい宿見つけた!」とか何とか言って、ゴリ押しで二泊三日になったという経緯があった。
「いや〜、これはさすがに一泊じゃ物足りないな」
「せやろ〜?俺に感謝してや〜」
なんてニヤニヤしながら、しゅんは僕の左腕を両手で掴み、ぶんぶんと振り回してきた。
あまりに無邪気な行動に、なんだかおかしくなってきて声が漏れる。
「おーい!痛い痛い、ふはっ!!振り回すなー、舜太ーー!」
そうやって子供のようにはしゃいでいた、次の瞬間だった。
急に背中から包み込まれるように抱きしめられて、身動きが取れなくなった。
「ちょっと、しゅん?どうかした?」
「じゅう?俺な、こうやってじゅうのそばにいられるの、すっごく嬉しいし、すっごく幸せなんさ。やから、ありがとう」
さっきまでのテンションとは打って変わって、低く落ち着いたトーンで話すものだから、僕はどんな顔をしていいのか分からなくなる。
「……うん……」
耳元で囁かれる声に心臓がうるさくて、その短い返事をするだけで精一杯だった。
彼に触れている部分から伝わってくる体温はひどく心地いいのに、ドクドクと暴れる鼓動のせいで、ちっとも落ち着かない。
「よしっ!さっそく貸切風呂行ってこようや!」
その声と同時に、僕を拘束していた彼の腕がするりと解かれた。
その瞬間、胸の奥がふっと寂しくなった。
あれ。
寂しい、って、何だ。
いやいや、僕の情緒がおかしくなっているだけだ。
そりゃあそうだ、こんな非日常の贅沢な空間にいるのだから。胸の奥に湧いたよく分からない感情を、僕はそうやって強引に納得させた。
to be continued……..
こんにちは☀︎
まずはここまで お読みいただき
ありがとうございます!
自己満ではじめたお話ですが、
色々な方に お読みいただけて
とても嬉しいです。
これからも1日1話は更新できるよう
頑張ります💪🏻
また、♡やコメントが励みになります。
もし良ければ、
そちらの方もお願いいたします!
それでは
これからもよろしくお願いします🌱
= はる☻ =