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「なぁ、ここ浴衣も自由に選べるらしいで!風呂の前に見に行こや!」
「そうなんだ。行きたいかも」
浴衣か。
彼はスタイルがいいし、きっと何を着ても似合うんだろうな、と思う。
そんなことを考えながら、彼の隣を少し肩をすり合わせるようにして並んで歩いた。
「あ!ここちゃう?いっぱいあるで!」
「え、すごっ」
色んな色や柄、サイズのものが何種類も並んでいて、見ているだけでも楽しい。
けれど、こんなに種類があったら自分では選べそうにない。
「なぁ!俺に似合いそうなの選んでや!俺もじゅうに似合いそうなの選ぶからさ!」
「天才。一旦それでいこう」
自分に似合うものは分からないし、決められない。
でも、彼に似合うものなら選ぶのも楽しそうだな、と思った。
端から端まで棚を順に見つめながら、「これも似合うかなぁ、あ、でもこれもいいかも!」なんて心の中で呟きながら見てまわる。
彼の姿を想像して選ぶ時間は、思った以上に胸が甘く浮き立った。
ひと通り見たけれど、やっぱりこれだ。
実は、最初にこの場所に来た時から、彼に似合いそうだと目をつけていたものがあった。
紺色にピンストライプが入った、シンプルな浴衣。
帯は淡い水色。
爽やかで格好いい彼には、こういう潔いシンプルなものが、一番その男らしさを引き立てるはずだ。
「じゅうー、こっちきてー」
呼ばれるままに彼のもとへ行く。
しゅんは両手に二着の浴衣を持って、交互に僕の服の上から当ててきた。
「うん!やっぱりこっちやな!」
手渡されたのは、白地に細い紺色のストライプが入った浴衣だった。
帯は濃いめの紺色。
シンプルだけれど、真っ白というのは少し目立ちそうで気恥ずかしい。
「白ってちょっと目立ちそうで、恥ずかしくないかな?」
「まあ、イケメン過ぎて目立っちゃうけど、似合うんやからええやん!」
「イケメンはしゅんでしょ。でも、しゅんが選んでくれたしこれにする。ありがと」
確かに、鏡に映る自分の姿は悪くなかった。
自分で言うのも何だけれど、いつもより少しだけ大人っぽく見える気がした。
#み!
㎎
5,724
8,380
ゆゆ

43
「んで、俺はこの紺の浴衣?」
「あ、うん……どう?気に入った?」
「うんっ!気に入ったわ!どう??似合う?」
そう言って浴衣を自分の体に合わせ、満面の笑みで見せてくる。
薄暗い廊下の照明に、彼の端正な顔立ちが映えて、心臓が静かに跳ねた。
ほら、やっぱり。
「……かっこいい」
僕の口から、遮る間もなく本音がぽつりと零れ落ちた。
「へへっ……」
僕の呟きを聞いた彼の顔が、みるみるうちに赤くなっていく。
かわいい、と思った。
なぜだか、彼の熱を帯びた瞳から目が離せなくなってしまう。
「……え……?」
彼の戸惑ったような声に、ハッと我に返った。
気がつくと、僕の右手は彼の頬にそっと触れていた。
指先から、彼の皮膚の熱さが伝わってくる。
「え、あっ、ごめ……っ」
急いでその手を離し、居たたまれなくなって下を向いた。
完全に無意識だった。
何をやっているんだ、自分は。
本当にあほだ。
「……いや、全然……温泉、行こか」
そう言うと、彼は二人分の浴衣を左手に抱え、空いた右手で僕の手を驚くほど力強く掴んで前を歩き出した。
無言のまま、彼はどんどんと進んでいく。
気まずい。
どうしよう。
そんなことばかりが頭の中をぐるぐると駆け巡る。
だけど、繋がれた手のひらから伝わる彼の鼓動が、自分のものと同じくらい速くて。
ふと見つめた彼の耳が真っ赤になっていることに気づき、余計に胸が苦しくなった。
その時、目の前にいた彼の後ろ姿が、「あーもう!!」と声をあげてこちらを振り返った。
「じゅう……あのな?」
しゅんは何かを言いかけて、唇を噛むようにしてぐっと言葉を飲み込んだ。
「いや、やっぱなんでもない!!……よしっ!行くで!!もうめっちゃ楽しむでー!!」
「う、うん……」
一体、何を言おうとしたのだろう。
その言葉の続きが、正直もの凄く気になるけれど、彼のことだ、言わない理由がちゃんとあるのだろう。
せっかくの旅行なのだ。
色々考えるのは後回しでいい。
今は舜太との時間を、一秒でも多く楽しんでおかないともったいない。
to be continued…….
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