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「……」


静かな昼下がり。

辺りを一通り見回してから、涼は唾を飲み込んだ。


ぎこちない足取りでマンションのエントランスを抜ける。そして鞄から取り出した封筒を、木間塚と表記された郵便受けに投函しようとした───そのとき。

「何してんだ?」

「あわあぁぁぁっ!?」

背後から掛けられた声に驚き、その場で飛び上がった。真っ昼間とはいえ近所迷惑に変わりはない。声は住宅の合間を縫って響き渡った。

「うるさっ……!! やめろよ、俺が変質者みたいに思われるだろーが」

「ゴホッ! いや、そんなつもりじゃ……ウェッ、ゴフッ」

どうも気管に入ったらしく、涼はその場で壁に手をつき呼吸を整えた。


「え。准さん、どうしてここにいらっしゃるんですか? 今日は出勤日……ですよね」

「あぁ。だからこそお前が来そうな気がして、ここで待ってた」


嫌味なぐらいにっこり笑うと、涼は狼狽しながら視線を逸らした。

「俺なんかの為にお仕事休んでどうするんです」

「お互いさまだろ。自分だって一ヶ月も休みとったくせに」

「そ、そうですね。おかげさまで今年はもう有休使えません」

その後、彼は何か喋ろうとした。しかしまた口を閉ざし、最終的に持っていた封筒を准に指し出した。

「今日はこれをお渡ししたかったんです。最後の生活費と、……色々ご迷惑をおかけしてしまった分のお金を」

「迷惑?」

封筒を差し出されても、准はすぐ手を付けようとはしなかった。しかし、目で見てもそれなりに厚いことが分かる。それでなのか、自然と笑ってしまった。この封筒の重みが謝罪の重みとは。

「何か手切れ金みたいだな」

「えっ!? いや、そんなんじゃ……! ただ、本当に迷惑をおかけした分……っ」

涼は慌てふためいていたが、声は勢いを失い、どんどん弱々しくなった。


「……と、嫌な思いをさせてしまった分……です」

「で、これ置いて逃げるつもりだったのか?」


辺りの静寂を壊さないよう尋ねると、彼は怯えた顔を浮かべた。封筒を持つ手も、若干震えている。

……いや、本当は会った時から。気付いていたが、気付かないふりをした。


「ちが……その……本当はちゃんと謝りたかったけど、もう俺の顔を見るのも嫌なんじゃないかって……思って」


熱でもあるんじゃないかと心配になってしまうほど顔が赤い。見てるこっちまで赤くなりそうだ。


「そんなこと思ってないよ。でも、金はいらない。渡されても困るだけだ」

ファナティック・フレンド

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