テラーノベル
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キィ‥と静かにドアが悲鳴をあげる。
沙織も入れるように、手の位置をドアの上付近に持ち替え大きく開く。
部屋の奥に小さな光が点々と見える。
どこかの家の灯りだ。と瞬時に気づく。
左手は壁をぺたぺたと触ってみるが何もない。
沙織がスマホをいじり、ライトに切替え壁沿いを照らす。
悠真が触っていたあたりはなにもなかった。
「、、スイッチ、ないね」
ぐるりと一周したが、あるのは鍵かけラックのみ。
「廊下側にもないか?」
ん、まって。
と小さく口の中で呟く声が聞こえ、ごそごそとなにか始めた。
かつん、と音がして見下ろすと、パンプスを脱いだ沙織が家の中に入っていくのが見えた。
「これかな?」
ぱちん。ぱちん。ぱちん。
3つ目で玄関電気が点いた。
1つ目と2つ目は風呂とトイレだったらしい。
「おー」
玄関電気の明るさを頼りにリビングの電気を点けた沙織から感心するような声がもれる。
悠真も沙織の後を追い、中に入り、とりあえず淡い緑色のカーテンを閉めた。
「店長の家の後だとなお、きれいに見えるな。
めっちゃ片付いてる」
「大月さん几帳面だもんねー」
「この間もボトルの向きや、タオルのたたみ直しとかしてたぞ」
2人でさっとリビングを見回し『らしいな』と心の声を揃えていた。
ふと、サイドテーブルの上を見て急いで駆け寄った。
「スマホある」
テレビとエアコンのリモコンの隣に
裏返しに置かれたスマホを持ち上げた。
沙織も傍らに寄り添い、画面を覗く。
「やっぱりロックかかってるよね」
「ん?ああ、、。」
パターンロックの上を親指で撫でる。
ロックは解除され、いつだったか、ヴェンガムのみんなで行った夏祭りの時の打ち上げ花火の写真が表示された。
「なんで開けれんの」
眉根を寄せ睨んでくる。
「この間一緒に出掛けた時に、ロック解除見てたから、、」
「、、今は褒める。よくやった」
真顔で褒めてきた。
真顔で見返してやった。
2人で画面に視線を戻し、通話履歴を見る。
最新には『ゆうまくん』とある。
次に『みさきさん』
沙織の名前と双子の名前もスクロールして見送り、7日の履歴で止める。
昨日の日付。
『O』の不在着信が3回、そして、『公衆電話』と会話をしたであろう記録。
「、、『O』って、誰?」
「『O』の電話に出なくて公衆電話からかけてきたんだろうか。
同一人物、、だよな?」
「わかんないけど、、可能性は高いよね」
一度目を閉じ、目蓋の裏に映る詩苑に謝る。
親指はメッセージアプリを開く。
未読の通知がたくさん。
しかし、相手は全員ヴェンガムのスタッフだった。
中は開かず、『どうする?』という目を沙織へ移す。
沙織は眉間に皺を寄せ、視線をさ迷わせる。
「、、メモ、持ってる?」
視線が帰ってきた。
1つ頷き、肩掛けポシェットから1枚の紙を取り出した。
綺麗に切られた白い用紙に中央に書かれた《もうすぐだ。》の赤い文字。
「メモ、これだけな訳ないよな」
「そうだよね、メモ、探してみるから
西山くんはアレ、探ってみて」
沙織の指差す方を目で追うと、ノートパソコンがあった。
悠真はノートパソコンに近付き、隣に詩苑のスマホを置く。
電源スイッチに触れパソコンを立ち上げた。
沙織は近くの棚や引き出しを開けている。
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コメント
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第5話、読ませてもらいました。沙織と悠真の呼吸の合った連携がいいですね。スマホのロックを解除する場面では「よくやった」の後に続く真顔のやりとりに、2人の信頼関係がにじんでいて好きです。そして赤い文字の「もうすぐだ。」――あのメモ、切り口がきれいすぎて逆に不気味さが際立ちますね。公衆電話の履歴や『O』の存在も気になるし、パソコンの中身がどうなっているのか、続きが早く読みたいです。