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86
あおにゃん
97
#異世界転移
花月夜れん
3,010
こあたん
6,343
冬の冷たい空気で吐く息が白い。沙羅は明るい日の光に目を細め、空を仰いだ。
澄んだ青の中に羽を広げた鳥が自由に飛んでいる。
「何から話せばいの……」
昨晩の事を思い出し、少し切ない気持ちなりながら、お台場にあるホテルに着いた。
慶太に指定された2803号室の部屋番号を確認して、呼び鈴を押す。
カチャリとドアが開いたと思った瞬間に、部屋の中に引き込まれ、慶太の腕に抱きしめられていた。
「沙羅、会いたかった」
心地の良いバリトンボイスに耳にかかる。
慶太から香る爽やかな柑橘系の香水に包まれ、広い胸に顔を寄せた。
「私も………」
温かな腕に抱きしめられていると、沙羅の不安だった心が軽くなっていく。
それでも、昨日のパーティーで一緒に居た女性との噂の真相を慶太に聞きたかった。
それを訊ねようと沙羅は顔をあげる。けれど、慶太の切れ長の瞳が切なげに揺れていた。
「沙羅……キスいい?」
求められて拒否など出来ない。沙羅は、自分から顔を近づけ、そっと唇を重ねた。
目を瞑り、柔らかな感触を感じる。
節のある指に顎先を捉えられ、口づけが深くなっていく。
愛情を示されると胸が震えてたまらなくなる。心が求めて止まないのだ。
どうしようもないぐらいに、慶太が好きなんだと思い知らされる。
自分の存在が、TAKARAグループを背負う慶太の足枷となるのなら、別れを選ぶのが正解なのだろう。
でも、別れを選ぶことなど出来やしない。
それが、間違いだとわかっていても……。
「慶太……好きよ」
シャンプーの甘い香りがする沙羅の髪に慶太は指を梳き入れ、後頭部を押さえた。
輪郭を確かめるようにそっと舌先でなぞり、柔らかな唇の感触を食むように味わう。
チュッと音を立てて、唇が離れると慶太の眼の前は沙羅だけになる。
「沙羅、好きだよ」
もっと、深く繋がりたいと再び唇を重ねた。少し開いた唇の合間から、舌を差し入れ、沙羅を内側から撫で上げる。体温を直に感じて、理性が崩れていく。
沙羅を求める気持ちが強すぎて、逸る気持ちが抑えられない。
「ふぅ……ぁ」
鼻に掛かった甘い吐息が沙羅から漏れ、欲情が加速していく。
昨日のパーティーでの事を沙羅に話さなくてはいけないと、沙羅の顔を見るまでは考えていたはずなのに、肝心なところは置き去りにして、貪るように唇を重ね続けている。
誰よりも、好きになってしまった。こんなにも沙羅が欲しくてたまらない。
「け……いた……」
とろりと蕩けた瞳で、沙羅から名前を呼ばれ、背中にまわった細い腕が、縋るようにうごめく。
シャツの上から体温が伝わって、気持ちが抑えきれない。
柔らかな頬に手を這わせ、細い首筋に慶太は唇を寄せた。
そして、キスを繰り返しながら囁く。
「沙羅……、したい……いい?」
沙羅が小さくうなずくと、それを合図にコートを肩から剥ぎ取り、足元へ落とした。
余裕のない手つきで、慶太は沙羅のセーターをたくし上げ、ブラの肩ひもをずらした。すると、まろみのある胸が晒される。
慶太らしくない強引さに沙羅は戸惑い、動きを制するように広い胸に手のひらを押し当てた。
「慶太?」
「ごめん、沙羅が欲しくて抑えられない」
慶太は眉を寄せ、切なげにつぶやく。
自分の知らない慶太の表情に、沙羅の心は乱れて落ち着かない。ドクドクと心臓が早く動き、体中に熱を運ぶ。
「……ん、いいよ。慶太に求められて嬉しい」
「そんな瞳で見られたら、優しく出来ないかも……」
慶太が自分を欲している。そう思うだけで、沙羅は腰の奥にズクンと熱が集まるのがわかった。
「優しくしなくてもいい……抱いて」
沙羅は腕を慶太の首にかけ、キスをねだるように、欲情に濡れた慶太の瞳を覗き込む。
普段、真面目な沙羅の小悪魔的な振る舞いに、慶太の衝動は搔き立てられる。
「沙羅……」
吐息が掛かる距離で囁き、唇が重なる。
縺れるようにベッドに倒れると、沙羅は慶太の髪に手を掻き入れ、胸元へ抱き寄せた。
まろみのある胸のふくらみを大きな手が包み、揉みしだかれる。
「ふっ、あっ……ぁん」
先端を甘噛みされ、その刺激に、たまらなく痺れる。電気が走ったように体が跳ねた。
甘える声が鼻に抜けて、沙羅はイヤイヤをするように首を横に振る。
本能に従うようにお互いを求めあう。
薄っすらと汗をかいた肌が、カーテンの隙間から差し込む光に照られて、艶めかしく誘う。
沙羅は濡れた瞳で、膝裏に手を当て自分の足に唇を寄せる慶太を見つめた。
「もう……だ……め」
そんな抵抗とも言えない沙羅の片足を掴み上げ、慶太は唇を滑らせる。
太ももの内側をチュッと強めに吸われて、沙羅の背筋にゾクゾクと官能が走り、足先に力がこもる。
背中がしなり、シーツが波打つ。
「んっ……ん、ぁぁ」
「沙羅……いい?」
敏感な部分に息のかかる距離で、慶太に問われて、沙羅は壊れた人形のようにコクコクと首を縦にふった。
慶太の吐息さえも、肌に触れれば、欲情を掻き立て官能に変わる。
頭の中には紗がかかり、与えられる快感にどっぷりと浸かっていた。
「はや……く……」
やっと、絞り出した声で、沙羅は慶太をねだる。
早く慶太と繋がりたかった。
お互いを投げ出して求め合い、心と体の一番深いところで、ひとつになれたなら、この先どんな事でもふたりで乗り越えられるような気がした。
「んっ……」
慶太の熱が自分の中に入って来るのを感じ、その質量に吐き出す息が震え、生理的な涙がぽろぽろとこぼれる。
「……ぁ」
「沙羅……ごめん」
指先でそっと涙を拭われ、沙羅は瞼を開いた。
切れ長の優しい瞳の中に自分が映っている。
「けい……た。……好き。もっと……奥に……きて」
「沙羅、愛してるよ。ずっと、一緒にいたい」
「ん、わたし……も」
慶太が腰を進めると、沙羅は浅い息をくり返した。やがて、最奥に熱を感じる。
「あっ……ぁぁ」
慶太と繋がった喜びに、既に達してしまいそうな快感が押し寄せた。
「沙羅……」
慶太は、沙羅へ唇を重ね、ゆっくりと動き始める。
それが、だんだんと激しくなってきた。
「ん、……んっ」
揺さぶられるたびに、熱くて息が出来ない。
慶太の肩を掴み、喘いでのけぞる。
このまま、溶けてひとつになれたらいいのに……。
そんな事を思いながら、沙羅は絶頂へと導かれた。
「沙羅……沙羅、起きて」
慶太の声に反応して、沙羅はモゾリと動いた。
「ん……おはよぅ」
けだるい体を反転させ、ゆっくりと瞼を開くと、沙羅の横で肩肘を付いた慶太の顔が近づき、チュッとキスを落とされる。
「おはようと、言っても夕方なんだけど、沙羅は時間大丈夫?」
「えっ、いま何時?」
「もうすぐ18時になるところ」
「私、急いで帰らないと美幸の塾のお迎えに間に合わない!」
これから身支度をして、ギリギリの時間だ。
沙羅は、慌ててベッドから立ち上がったが、ゴージャスな部屋の惨状に唖然とする。
床には脱ぎ散らかした服が散らばり、体には何も着ていない。
その体のありとあらゆるところにキスマーク。もちろん慶太が付けたものだ。
「きゃあ」
驚いた沙羅は、体育座りのようにしゃがみ小さくなる。
相変わらず様子に慶太は安心したようにクスリと笑い、沙羅をガウンで包み込む。
「ごめん、無茶させた」
「ううん、大丈夫。私……不安だったの。だから、慶太にたくさん愛してもらえて嬉しかった。あっ、変なこと言ってごめんね」
沙羅の言葉を聞いた慶太は眉尻を下げ、困ったような顔をする。そして、細い息を吐き出した。
「不安にさせて、すまない。……昨日のパーティーは、父に言われて、顔つなぎのつもりで出席したんだ。それなのに、断ったはずのお見合い相手が居て、仕事がらみで仕方なくエスコートするしかなった」
やっぱり……。
萌咲から聞いて、覚悟してしていたとはいえ、慶太から聞くのはきつい。
立華商事のご令嬢とのビジネス絡みの大きな縁談は、慶太の父親が乗り気だと言う話しだ。
それにパーティーで、うまく立ち回っていた彼女と、その場に馴染むの必死だった自分では、TAKARAグループの総領の妻の座という面を考えれば、天秤にかけるまでもない。
親ならば、バツイチ子持ちの女より、然るべきところのご令嬢を息子の嫁にしようと思うのは、至極当然だと思う。
沙羅は、泣かないようにギュッと目を瞑り、気持ちを立て直す。
ゆっくりと瞼を開き、慶太へ顔を向けた。
「わかった……。大人の事情が絡むと仕方ない事があるよね」
そう言って、沙羅は微笑む。
その笑顔に慶太の胸はしめつけられる。沙羅が自分を気づかい無理に笑っているわかったからだ。
沙羅を悲しませるすべての事から守りたいと思っていた。それなのに、いま沙羅を悲しませているのは、他ならぬ自分自身だと奥歯を噛みしめる。
「昨日は、父が具合悪くなってしまって出来なかったが、この縁談は断るつもりだ。それに、父が無理やり話しを進めるようなら、俺はTAKARAを辞める」
慶太の真っ直ぐな瞳に嘘偽りは無いのだろう。
そこまで慶太から強く思われているのを沙羅は嬉しく思った。
でも……。
東京駅でデートをした時、慶太はTAKARAの仕事が好きだと笑っていた。自分のために責任のある役職を手放す選択は、慶太にとって良いのだろうか……。
「私は大丈夫だから、あまり感情的にならないで……。慶太を信じている」
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