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さんこいち良いよねぇ! 太宰さんが唯一素でいられた瞬間だったのかなぁ、って思うと切ない... 久しぶりの投稿最高でした!
わっかるっっっ!さんこいち尊いよねっ!私も滅茶苦茶この3人好き。太宰さんがね、自然体でいれる数少ない人達だし......黒の時代の太宰さん、マジで少年って感じで可愛くて、本当に好きなんだよぉ!!最高のお話ありがとう!
画用紙程の厚い緑の便箋を片手に持って、幾度も文字を見乍ら太宰は冷えた夜の街を歩いていた。
行き先が判らないから文字を見ている訳では無い。太宰が向かっている場所は、彼が何度も訪れた──片時も忘れる事のない場所だった。
「…………」
かつん、と靴音を響かせる。硬い地面に当たった為、そして冷たい空気故に、普段より靴音が高い音で響いたのだ。
太宰は足を止める。 小さく息を吐くと、呼吸が何処か白かった。
顔を上げる。
路地裏には月の光が入らない。然し【Lupin】の看板は、迷い犬を引き寄せるように光を灯していた。
そして今日────『二人の迷い犬』が、此処を訪れた。
***
ドアベルが鳴った。
店内に足を踏み入れ、私は薄暗い階段を降りる。
目線の先には、意外な人物が居た。
「──安吾…」
私は口先から声を溢す。
視線の先に居た背広を着た青年は、目を見開きながら此方を向いた。
丸眼鏡を掛けていて、前髪を丁寧に後ろに撫で下ろしている。
「……太宰君?」
安吾は目を瞠り乍ら、私の名を呼んだ。
そして一筋の汗を頬から顎に伝わせると、安吾は眉を少し顰めて、私から視線を逸らした。
気不味そうに固く唇を閉ざしている。
私は外套のポケットに突っ込んでいた手を固く握り締めた。
「…………」
見た感じ仕事終わりって所かな……。
一応銃は所持しているように見えるけど、安吾が“此処”に部下や同僚を連れて来る訳ないから、警戒はしなくて大丈夫か……。
私は息を吐く。
外套のポケットから手を取り出して、安吾の隣に座った。
本当なら一つ分位空けたかったが、織田作が座っていた席に座る訳にはいかない。──私がスツールに腰掛けるのと同時に、バーテンダーは琥珀色の液体が入った洋盃を私の目の前に置いた。
洋盃を私は掴んで、カウンターの上を滑らすように自分の近くに移動させる。
「…………安吾」
静かな声色で安吾の名を呼んで、私は顔を向けた。
「何ですか?」
視線のみを私に移して安吾が云う。
先程持っていた緑の厚い便箋を、私は安吾に見せた。
「幾ら私と話がしたからって此の呼び出し方は止め給え、差出人が誰か判らない」
少し瞼を下ろし、呆れた視線を彼に向ける。
安吾は私が持つ便箋を見て、目を見開いた。そして、ふっと小さく笑みを溢す。
「其れは僕ではありませんよ。そう云う貴方こそ、此の呼び出し方は止めてください」
そう云った安吾の手には、私と同じ緑の厚い便箋があった。
予想外に、今度は私が目を丸くする。
唐突な手紙に申し訳なく思う。
けれど、如何しても頼みたい事があるのだ。
お前なら判るであろう“あの地下の酒場”に、来てくれないだろうか。
狭い空間に、カウンターとスツールが詰め込まれ、クリムゾンレッドのカマーベストを着た、バーテンのいる店だ。
また、呑み交わしてほしいんだ──あの日の夜のように。
「………………」
安吾が持っていた手紙は、私が持っている手紙の内容と同じだった。
そして文末には【友人より】と書かれている。
「仕事が入れば行かない予定でした。ですが、明日は丁度休みで、今日も疾く上がれたので来たんです」
静かにそう云うと、安吾は着ていたスーツの内ポケットに、便箋が折れないように丁寧にしまう。
私は安吾を暫く見つめた後、視線をカウンターに落とした。バーテンダーが用意してくれた蒸留酒に自分の顔が映り込む。
何処か愁えた表情をする青年が映っていた。
「それに、指定された場所が“此処”だったので……」
安吾の言葉には哀愁が漂っている。
私は人呼吸置いて云った。
「私もだよ」
紫煙が漂う空間に、私の声が響き渡る。
瞼を閉じ、数時間前の記憶を掘り起こし乍ら私は云った。
「此処を知っている人間はそう多くない。そして文末に書いてある言葉からしてら君かなと思っていた」
少しの沈黙の後、安吾が云う。
「でしたら何故、此処に来たんですか?」
「…………」
沈黙が積み重なっていく。
其の間に、様々な言葉と思いが煌めき乍ら脳裏を横に過ぎ去っていった。
私は小さく息を吐いて、安吾と顔を合わせる。昔のように、自然と笑顔になれた気がした。
「指定された場所が“此処”だったからだよ」
安吾は私の言葉に目を丸くする。そして口元を緩ませた。
「そうですか……」
他人事のように、けれども嬉しそうに安吾は云う。
此の時感じた感覚は、四年前の──あの日の夜の感覚と同じだった。
「それにしても、一体誰が送ってきたのだろうねぇ?此の手紙……」
「予告状や脅迫状より、イタズラの方がマシでしょう…」
目元に隈を浮かばせ乍ら、心労めいた顔で安吾は云う。
「安吾の処は忙しそうだねぇ、何徹目?」
苦笑し乍ら私は訊いた。
「貴方なら訊かなくても判りますよね?」
「うーん、五徹目くらい…?大丈夫?ぶっ倒れない?」
「此れでぶっ倒れていたら、此の仕事は務まりませんよ」
「そりゃ凄い」
話していく内に、四年前の輝かしい記憶が蘇る。
右隣に、誰かが居るような錯覚に陥ってしまうのだ。
私は横に視線を移す。然し──
────矢張り其処には、誰も居なかった。
「…………ねぇ、安吾」
「はい?」
私は緑の厚紙──差出不明の手紙を見ながら呟くように云う。
「文末に書いてある言葉に当て嵌まる人物は、私の中で二人いる。其の内の一人は君だ」
文末に書かれている文字に視線を移した。
「だが君では無いのなら誰だ?答えは簡単、もう一人の方だ」
カウンターの上に便箋を置き、私は安吾と目を合わせる。
「ねぇ安吾。そうじゃないって判ってるのに、彼の名前しか思い浮かばないんだよ…」
安吾の瞳に映る青年は、哀愁を帯びた表情をしていた。
それでも口元には笑みを浮かばせている。日頃の作り笑いが、癖に出てしまっているのだ。
「此の手紙の差出人って──」
「太宰君」
安吾が、私の言葉を遮った。
云おうとした名前を、自分に聞こえなくさせるかのように。
「………………其れは有り得ません……」
絞り出したような声で安吾は云う。
私は目を見開いた。そして──愁えた表情に無理やり笑顔を作る。
「君に其れを云われるとはなぁ…」
きっと私は何処かで、
安吾がそう云うのを──現実を教えてくれるのを、待っていたのだろう。
酒が入った洋盃を手に取り、上に掲げる。まるで両脇に誰かが居るかのような位置に。
「…………」
安吾は目を丸くし、暫くの沈黙の後、小さく微笑んで自分の傍にあった洋盃を手に取った。
そして、私が持っている洋盃に近付ける。
一呼吸置いた後、私と安吾は声を揃えて云った。
『「「ストレイドッグに」」』
もう一人、知った声が聞こえたような気がしたが、それは記憶の欠片だろう。
────カランッ……
洋盃がぶつかり合う、綺麗な音が響き渡った。
優しき友人からの「手紙」────END.
────あとがき────
皆さん今日は、スイ星です!
初めての短編集ですね、張り切ってバンバン投稿していきます!
今回はさんこいちのお噺。
cp要素は特に無いよ!今回はね!!笑
私、結構さんこいちが好きでさ、
黒の時代の仲良くしてるのが本当に好きなんだよ。
ちょっと子供っぽくなってる太宰にさ、天然の織田作、ツッコミの安吾。
マジでthe友達の三人が好き!
あのねぇ、何だっけ、わんだったかな?
太宰さんがさ、「ねっ、いいよね?あ〜んご」って云ってる声のトーンとかその他諸々が可愛い過ぎてさぁッッ!
織田作の天然発言にノる太宰さんに其れを全力でツッコミ&止めようと頑張る安吾も好き笑笑
ほんとに尊いんだけどさぁ、今がねぇ、ほら、ねぇ……。
仲直りしてほしいよ、、
でもマジで時々思う事があるんだけどさ、
太宰さんの織田作への愛が重過ぎて
此れ大丈夫なの、公式さん? って思うんだよねー笑
ほら探偵社の太宰さんの格好だって織田作よりにしてるじゃん?(解釈は人それぞれ)
気付いた時、申し訳ないけど怖って思っちゃったよね……いやちょっとだけだからね!?
でも、うん…ねぇ?
取り敢えず、さんこいちは尊い(〆が雑)
それでは読んでくださった皆様!ありがとうございました!
また何処かでお会いしましょう。
バイバーイ!