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─夢十夜─
注意喚起
・御本人様とは一切関係ありません
・腐向けではありません
・zmさんメインで、rdさんが出てきます
・軍事パロディです
閲覧はあくまで自己責任でお願い致します。
◇
運営国の夜は早い。
他国なんかよりずっと人外の戸籍が多く、昔に迫害を受けたりした者が亡命してくるなんてザラにある。
なにせ国の運営が人外なのだから。
人間の姿に擬態できる化け物はどれもランクが高い。そうして各地で崇められてきたのが、運営のメンバーたち。
陽も落ちて夕飯の時間になる頃に、スマホが着信音を立てて震えた。
風呂上がりにタオルを首にかけ、スマホを起動すると、そこには、先日外交という名の一線を交えたばかりの彼の名があった。
ああ。楽しかったな、あれは。
俺の「人間の力」に着いてくるだけじゃなく、上を行くなんて。W国も兵器を抱えたものだ。
だが、あれは兵器であると同時に、時限爆弾でもある。
意気揚々とボタンをスライドし、電話に応答した。
『・・・ぁ、らっだぁ、さん』
「どしたん、ゾムさん」
電話の主はゾムさんだった。
W国の、味方最大の脅威と謳われた、ゾム。
普段は飄々とした動きで敵を欺き、回る頭で裏を掻き、洗礼された一撃で仕留める。
抜けなんてないような強さを誇る彼。
しかし、媒体越しに聞こえる声は震えていて、おや、と思いつつ返事をした。
すびっと鼻を擦る音、鼻声。
また、だろうか。これもすっかり恒例行事となってしまった。
「・・・・・・また見たの?」
悪夢。
それは彼を定期的に苦しめるもの。
◇
ごぼごぼ、海の中にいるみたいに、何もかもが不明瞭。
つま先から頭まで冷たくて、周りを見渡しながら、暗闇に一歩踏み出した。
「ゾムさん」
あれ、この声は。
そう思うより先に、体が操られているかのように、後ろを振り向く。
この空間に空気や重力なんて概念はない。ふわりと体が浮く。
果たして、その声の主は、同じ軍人であるらっだぁさんだった。
「ゾムさん、またこんなとこに迷い込んできたの?」
らっでぃ。
そう名前を呼ぼうとして、喉が震えないことに気づく。声さえこの空間では封鎖されているのか。
金魚みたいに口をぱくぱくさせることしかできなくて、何故かわからないけど、まあそういうモノなんだろうと勝手に解釈した。
「ほら、こっちおいで。」
暖かいような平坦な声に、体は勝手に引き寄せられる。それが俺の意思なのからっだぁの意思なのかはわからない。
暗闇の中で、彼の赤と青だけが灯火のように存在感を放っている。
ぽす、とらっだぁの腕の中に抱き留められ、目的が分からず首を傾げると、彼はふふ、と笑った。
「んふ、可愛いね。ねぇ、一緒にここで寝ません?」
可愛いと言われるのはいささか不服だが、今は反論しようにも口が開けず物理的にできないので悔しい。
寝るってどうやって?と問いたいと思っていると、らっだぁさんはその真っ黒な地面に体を沈めた。
不思議だ。歩けるのに、海のように体を包んでいく。
とぷん、とらっだぁさんの動きに合わせ地面が揺れる。
らっだぁさんに抱き枕のようにされながら一緒に横になると、ずぶずぶと体が重くなり、一緒に瞼も重くなる。
「おやすみ、ゾムさん。いい夢見ようね。」
最後の言葉は、耳には届かなかった。
◇
「大先生、最近めっちゃ顔色いいな?」
そんな日の朝、普段のように食堂に集って、みんなで朝食を食べていた時のこと。
パンにバターを塗る手が止まらず、口に十枚目のトーストを放り込む俺を見て、トントンが「相変わらずの通常運転」なんて呟いている。
「たしかに?隈薄なったよな」
シャオロンのそんな言葉にロボロも同意した。
当の本人はじろじろと顔を見られて少し恥ずかしそうにしている。
「なんか最近夢見よくってな。目覚めもいいし」
「今の顔つきの方がモテるんちゃう?」
「えガチ?よーしいっぱい寝るぞー」
そんな仲間たちのやりとりに笑いが巻き起こる。
シッマが何か余計なことを言ったらしく今度は詰められている。
楽しそうやな。もっとサラダ食いたいけどトマト要らん。よしトントンにあげよう。
ぼんやりとそんなことを思いつつ眺めていると、同じく無言で食事していた隣のショッピがくぁ、と欠伸した。
「ショッピ君は寝れてへんの?」
「・・・・・・あー、いや、俺は逆に夢見悪くて。
内容は薄らも覚えてへんけど、変な夢なのは確かなんすよねー」
あの寝るのが大好きなショッピにとって、寝たくても寝れないのは辛いだろう。
心なしか、彼の無感情さを助長している半目が、普段より重い気がする。
「大先生にうつされたんちゃうん?笑」
「ほんまに。なんかイライラしてきた飯奢ってもらおかな」
理不尽すぎるショッピの返事に笑いつつ、席を立つ。
それ以上は何も言わない。
言えない。
─────言ったところで、どうなる。
毎晩、息が詰まるような夢を見ること。
目が覚めても、現実との境目がわからなくなること。
喉の奥に、誰かの恐怖が残っている感覚がして、いつも気持ち悪いこと。
そんなもの、共有したところで意味はない。
「・・・・・・ふぅ」
ごちそうさま、とひとらんの国の言葉で呟いてから食器を厨房へ持って行った。
「ゾム食べ終わったなら模擬戦せえへんー?」
そんな俺の様子を見て、ほぼ同時に食べ終わったのであろうチーノの声が食卓から飛んでくる。
「あーごめん。俺この後から任務」
「まじか。今フラグ立ったで」
「俺がへし折ってくるわ」
チーノはシッマへとターゲットを変えたのか、懲りずに話しかけていた。
あんな姿勢で訓練に取り組めるなんて、いずれ俺を超えてしまうんやろか。どちらにせよ媚びるのがうまいやつだ、と思った。
そうしてなんなく任務を終える。
簡単な殲滅任務だったのもあるが、無事グラフはへし折れたようで安心だ。
眠い。とにかく眠い。
大して疲れてはいないはずだけど、瞼が重く、先ほどから欠伸が止まらなかった。
風呂を浴びるのさえ煩わしくて、簡易的にシャワーだけをさっさとすませてから布団に潜り込んだ。
寝たらきっと。そうはわかっていても、眠くて仕方がなかった。
今日は、あの後輩がいい夢が見れるように。代わりに俺が。
俺には、悪夢を引き寄せる力がある。
仲間の夢、本来見るはずのなかった自分の夢、ホテルの隣室の赤の他人の夢。
とにかくなんでも受け持って、嫌なことに、俺がその夢を見せられる。
聞こえは簡単かもしれないが、これがまあしんどいのだ。
重く濁った他人の、ましてや仲間の汚い部分を見せられる。これがどれほど苦行か、経験しないとわからないだろう。
そして、一周回って、力を生まれ持った俺の試練なのだと勝手に思っていたりもする。
他人を救って、仲間の夢見をよくして、代わりに俺が引き受ける。
どこか自己犠牲に近いその行為は、辛くとも自尊心を満たしていくのだ。
「らっでぃ?」
『────、ぁー・・・───んん、ゾム、呼んだ?』
呼び慣れたその名前を口にした瞬間、ぐにゃり、と空間に隙間が生まれる。
時空の歪み、そう呼ぶのにふさわしいそこから、声が聞こえた。
「あ、らっだぁさん。今日”見る“気がすんねんな」
『あーっと、そのことについてなんだけど。
実はこっちでおっきな問題が発生してて、そっちに力使わなきゃいけないんだよね・・・』
俺らが所属するW国の隣に面した、運営国の総領、らっだぁ。
人外で名高い国のトップなだけあって、扱える力も能力も計り知れず、誰も彼の「本来の姿」は見たことがないとか。
そんならっだぁさんと俺は、契約という形で結ばれている。
「なら全然大丈夫っすよ。最近は頼りっぱなしだったんで」
『本当に申し訳ない!今度飯奢るから!』
「あ、それはお受けします〜」
俺側の利益は、悪夢を見ないために外部からの防壁になってもらうこと。
らっだぁさんは夢を見ないタイプの人外なのか、一緒に寝るだけでもジャミングのような役割を満たしてくれる。
といっても、大抵は俺の夢の中で入り込んできて、ただただ歓談しているだけだけど。
らっだぁさん側の利益は、俺を通して、色々な夢の話を聞けること。
生まれてこの方「夢を見る」という行為自体経験したことがない彼にとって、俺の話は面白いそうだ。
この能力は軍に入隊してから得たものなので、いまだに誰にも話せていない。
俺はらっだぁさんがいないと、真面目に精神が狂ってしまうだろう。
一方、らっだぁさん側は暇つぶしのような感覚で俺に付き合ってくれているので、普段は喧嘩腰でいつつ、内心では心の底から感謝していた。
『落ち着くまで一週間はかかりそうかも。ごめんね!』
「いやいや、はよ戻って下さい」
そんなあらゆる範疇を超えて物事を可能にしてしまう彼は、自分の国でも引っ張りだこのようだ。
そうしてあっさりと終わった通信にため息を吐きながら、改めて寝ようと布団に潜り込んだ。
「・・・・・・・・・おやすみ」
誰にいうまでもなく呟いた。
それは、夢への片道切符。
いい夢みろよ。
頭の中で誰かが嗤っていた気がした。
◇
どうも豆腐です!
こちら、るかさんから不仲のお話をリクエストで頂いた結果、妄想が膨らんでしまいました😵💫💖
続くかどうかはわかりません。モチベによります…
といってもrdさん、最初と最後にしか出てこないかもなんですごめんなさい😭🙏🏻
その分オチをしっかりさせようと考えてます。
今日はエイプリルフールだけどそんなことより建国記念日ですね。
もう3人しかいないけど。
悲しいね、この日にお祝いの言葉を彼らに言うことは無くなったんだ…
ちなみに連載のタイトルと各話のタイトルは、夏目漱石の『夢十夜』からモロパクリです😘➰
最初の方読んだけど短編集みたいで面白かったのでおすすめ✨