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「お待たせしました! 悠真サンタの登場っス!」
戻って来た悠真はサンタクロースのコスプレをして、大きな袋を抱えている。
「ママ、どうぞ!」
そして、真彩の傍まで歩いて来た悠真は抱えていた袋を床に下ろすと、中から包装された箱を取り出して真彩に手渡した。
「これは?」
「ママに!」
「悠真サンタからのプレゼントっス!」
「せっかくだから、開けてみたらどうだ?」
「そ、そうですね……それじゃあ、開けるね?」
「うん!」
理仁に促されて真彩がプレゼントの包みを開けてみると、そこには薄ピンク色で無地の大判ストールが入っていた。
一見シンプルだけど、実はこのストールはカシミヤ100%ならではの肌触りと極上の暖かさが売りだという有名ブランドの品。
「これって……」
そんな高級品を悠真一人で買える筈もない事は明白で、貰えた事は嬉しいけれど金銭面での戸惑いが出てきて素直に喜べずにいると、
「これは悠真が一生懸命貯めたお小遣いと、俺と兄貴がカンパした分で買った物っス! 悠真、この日の為に一生懸命俺や兄貴の手伝いしてくれたんスよ」
真彩の戸惑いの原因を感じ取った朔太郎がフォローを入れた。
「ママ、うれしくない?」
あまり嬉しそうに見えない真彩を見た悠真は不安そうな表情で問い掛ける。
「ううん、そんな事無いよ? こんな素敵な物を貰えるなんて思って無かったからびっくりしたの! 嬉しいよ、ありがとう悠真!」
「うん!」
嬉しさを伝えた真彩がギュッと抱き締めると、満面の笑みを浮かべた悠真が抱き締め返した。
その後、悠真が描いた絵や工作したもの、組員一同からのプレゼントなどを貰った真彩。
「何か、すみません……私ばかり貰ってしまって……」
「気にしないでください、真彩さんには普段からお世話になってますから」
「そうですよ」
申し訳無さそうに謝る真彩に『気にしないで』と笑顔を浮かべる組員たち。
「ありがとうございます」
こうして真彩が主役となったパーティーは開始から二時間半程でお開きとなった。
「片付け、後は私がやるから朔太郎くんと翔太郎くんも休んで」
お風呂と悠真の寝かしつけを終えた真彩が最後まで後片付けをしていた朔太郎と翔太郎の元へやって来て声を掛ける。
「いや、姉さんこそ今日くらい早めに休んでください」
「そうですよ、ここは俺と朔太郎で間に合いますから」
「でも……」
家事全般が仕事でもあるのに自分の為のパーティーを開いてもらったばかりか、全ての後片付けまで任せる事に気が引けてしまう真彩。
「真彩、もう部屋に戻るところか?」
そこへ、偶然通りがかった理仁が真彩に声を掛けた。
「あ、理仁さん……その、朔太郎くんたちには休んでもらって残りの片付けをやろうと思っていまして……」
「いやいや、本当に俺らの事は気にしなくていいですから。姉さんが休んでください!」
「真彩、今日くらい朔たちに任せておけ。それと、この後少し良いか? 話がある」
「……分かりました。それじゃあ朔太郎くん、翔太郎くん、ありがとう。よろしくお願いします」
「二人共、後は頼むぞ」
「はいっス!」
「お休みなさい」
結局理仁から話があると言われた真彩は片付けを朔太郎たちに任せる事になり、そのまま理仁に付いて部屋へ行く事になった。
「適当に座ってくれ」
「はい」
理仁の部屋は10畳程の和室で、元から広さはあるものの、物が少ないせいか更に広く感じられる。そんな中、一際存在感があるのは二人掛けのローソファーと、沢山の書籍が入っている本棚だろうか。
読書が趣味の理仁はローソファーで寛ぎながら本を読むのが一番の楽しみだったりする。
真彩がソファーの左側に腰を下ろすと、本棚横にあるPC机の引き出しから何かを取り出した理仁は彼女の右側に腰を下ろした。
「理仁さん、今日は本当にありがとうございました」
「俺は礼を言われる様な事をした覚えはねぇが?」
「でも、パーティーの事とか……」
「パーティーの顔出しは仕事の一環みてぇなものだから気にする事はねぇし、家でのパーティーは悠真がサンタに頼んで実現した事だ。感謝する相手はサンタクロースなんじゃねぇのか?」
「…………そう、ですね」
あくまでも理仁は自分が礼を言われる様な事はしていないと言いたい様で、それに気付いた真彩はそれ以上礼を口にする事を止めた。