コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「それで?恩返しは失敗したんやろ?」
「ヴッ…」
あれから少しして帰った俺を出迎えたきょーさん達に恩返しの進捗を説明すると、なんともストレートな言葉が返ってきた。
恩返しを拒否されるなんて聞いたこともないだろう…俺だって聞いたことない。
「そんだったら素直に諦めとけ」
「エェー!」
つれないきょーさんの言葉にイヤイヤと首を振ると、みんなして「何でわからないんだ」とでも言いたげに溜息を吐いた。
「?」
「受け取ってくれないってことはそもそも覚えてないし、お礼を貰いたくないって思ってるって考え方もできるんじゃないかな」
「……ソンナコト、ナイモン」
ムッと口を尖らせて反論した声はびっくりするぐらい不機嫌そうで、優しく一つの可能性を教えてくれたレウさんも少し腹が立ったらしい。
「ま、まぁ…あくまで可能性の一つだから」
「ソンナコトナイ!!」
背の低い円卓に両手を叩きつけると、荒々しい音と共にコップが倒れて中身が畳にぶち撒けられる。
あ、マズイ。なんて思った頃には手遅れで、レウさんの顔から笑顔がスンッと消える。
「…みどりくん、ごめんなさいは?」
「…ァ、ウ」
絶対謝らないなんて命知らずな上に礼儀知らずな事は考えてなかった。
でも、昔から凄まれたり大きな声で叱られたりすると、決まって声が出なくなる。
「みどりくんが悪いよね?これ、誰が片付けると思ってるの?」
「ソ、ァ…」
いつまでも煮え切らない俺の態度にとうとう愛想をつかしたのか、布巾を手に掃除を始めてしまった。
きょーさんもコンちゃんも「やれやれ」といった風で傍観している。
仕方ないのだ。
みんなは俺がこんなやっかいなものを持ち合わせているだなんて知らないのだから。
「…ッ」
「あっ、みっどぉ…!!」
それでも何だか悲しいやら悔しいやらでめちゃくちゃに荒れてる心のまま、家の外に飛び出した。
いつもなら雪に埋もれて眠っているところを見つかって、一緒に家まで帰るけど今日は違う。
目の前の扉をドンドンと叩いて家主を呼び出すと、眠そうな足音が近づいてきた。
「はいはぁい…誰ですかぁ?」
扉を開いて数秒。
俺と目が合ったらっだぁは俺の顔を見て「しょうがないなぁ」と笑った。
「お客様いるけど、いーい?」
「…ン」
「ぺいんとっていう人間なんだ。悪い奴じゃないけど、怖かったら俺の後ろいなよ」
そう言ってらだおくんは俺の手を引いた。
この前も入った部屋には布団が二枚敷かれているけれど、部屋の明かりは消えていないしあちこちに広げられたボードゲームはまさに今やっている最中といった感じだ。
「あ!らっだぁやっと帰ってきた!」
「お待たせ…てか、やっとっていうほど長く席空けてなかったけどね?」
「あれ、後ろの子ってこの前言ってた子?」
金色の澄んだ瞳に思わずビクリと肩をすくませてらだおくんの陰に隠れる。
お客様は嫌な顔ひとつせずに「俺はぺいんと!よろしくね!」と明るく笑った。
「まだ子供だけど…こんな時間にどうしてらっだぁのところに?」
「あ、確かに。なんかあったの?」
純粋な疑問に満ちた瞳にモゴモゴと口を動かして、俺は素直に家であったことの説明を始めた。
何となく、レウさんが言っていた事をらだおくん自身に否定してほしい気持ちだった。
ー ー ー ー
next?→100♡