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彼がウワサのみどりくん。
らっだぁとの会話で度々登場した男の子はポツポツと話しながら、たまにチラチラと俺の様子を伺っていた。
「…ソレデ、家出テキチャッタノ」
「そっかぁ…えーっ、と……」
らっだぁが困ったように笑って頬を掻いている理由を俺は知っている。
俺自身としては別にいいんじゃないかなーって思うけど、やっぱり年齢の壁というのは人を踏みとどまらせるらしい。
「…ヤッパリ、帰ル」
「あーっ!まって、違う違う。嫌とかじゃなくてさ?そのぉ…犯罪になる…みたいな?」
「犯罪級ニ無理ッテコト…?」
「ちがう!ちーがーう!」
涙をめいっぱい浮かべて、今にも泣き出してしまいそうなみどりくんと、それに慌てるだけで何もできなくて困っているらっだぁ。
親友としては手助けをするのが吉だろう。
「みどりくん、らっだぁはらっだぁ自身の、すっごい個人的な理由でそれを受け取れないんだ」
「…?」
「つまり、それ以外の恩返しだったら受け取ってくれるって事なんじゃないかな?」
「ナルホド……!!」
さっきまで悲しそうに沈んでいた瞳が、途端にピカピカキラキラと輝いた。
俺の助言によって俺の事を信用したのか、みどりくんにもう怯えた様子はなく「ペンサン、アソボ」とすっかりはしゃいでいる。
その様子を見て複雑そうな顔のらっだぁにフッと笑みをこぼしながら、小さな手で盤上の駒を動かすみどりくんとゲームを楽しんだ。
「みどりくんっ!!それダメだって!!」
「ンヒャヒャヒャ!」
「緑色の悪魔笑いキタ」
「おぉい!ルール破綻してるって!!」
らっだぁの膝の上を定位置にゲームをする事数時間。
もともと遅い時間だったのもあって、もうすっかり生き物がみんな眠りにつくような時間になってしまった。
「マダ、アソブ……アソ、ブ…」
カクンカクンと頭を揺らして睡魔に逆らう様子は年相応に見える。
目を擦りながらモゾモゾとらっだぁの羽織の内側に入ったみどりくんは、少しすると体積がみるみる小さくなって、竜へと姿を変えた。
「わ、魔竜って本当だったんだ…」
「シーッ…起こすなよ。やっと寝たよ…」
「カッケェ……!!」
額から伸びるまろい角に指先で触れながら、簡単の声をあげる。
それくらい人とは違う神聖な何かを感じさせる姿だった。
「てか、この子はらっだぁの事を人間だと思ってる感じ?」
「俺の事をっていうか、たぶんぺんちゃんの事も人間だと思ってるよ」
「……マジか」
思わずそう呟くと、らっだぁは神妙な顔で頷いた。
みどりくんの家族がすこし過保護になる理由が少しわかった気がする。
「俺は混じってるから人間寄りだけど…」
「いやいや、よく言うよ。俺達サイドから言わせればぺんちゃんだってある種立派な人外だからね?だって、天使と悪魔と人間よ?」
ありえない、おかしい。そう首を降るらっだぁにフッと俺の意識が沈んで、別の意識が浮かんだ。
「俺だって分類は天使だ」
「あはは、そうだったね」
「適当なヤツだな…」
すぐに自分の意識が戻ってくる。
ダーぺはどうしても間違いを訂正したかったらしい。天使と悪魔を間違えられるのは、プライド的にアウトなんだとか。
本当は闇より生まれしウンタラカンタラってヤツなんだけど、回りくどいし難しかったから天使って枠組みに俺が決めた。
「てか、そう。だからさ、ちゃんとらっだぁが人間じゃないって事も言ったほうがいいんじゃない?」
「……んー」
「みどりくんなら大丈夫だって!たとえらっだぁが人間を喰う百人斬りのスーパーキリングマシンだって知っても、きっと怖がらないでくれるよ!」
「…もうちょっと待って欲しい、かな。まだ、みどりには話したくない……怖い」
魔竜のピカピカした綺麗な鱗を撫でながら、らっだぁは俯いてしまった。
いつか、たくさんの仲間に囲まれて笑っている姿を見ることができたら…
そしたら、俺は今後いつ死んだとしても悔いなく死ぬことが出来そうだ。
ー ー ー ー ー
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