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「仮入部、ここに決定!」
ミクが小さくガッツポーズをすると、
ツバサも笑顔で頷いた。
その瞬間、部長のカズキが壇上から戻ってきた。彼女は二人を見て少し驚いた様子だったが、
すぐに表情を和らげた。
「あれ? まだいたんだ。何か質問かな?」
ミクが元気よく手を挙げた。
「あのっ、私たち、この手話ボランティア部に仮入部したいです!」
カズキは目を丸くして二人を見比べた。
「本当? ありがとう! 嬉しいな」
彼女の顔がぱっと明るくなる。
「じゃあ、まずはこの仮入部届に名前を書いてくれる? えーっと、部室の棚にあるはず……」
カズキ部長が手話ボランティア部の部室、こだま多目的室に向かって歩き出す。
ミク、ツバサもそれについて行った。
ガサゴソと棚の中を探すカズキの背中を見つめながら、ツバサがミクの耳元でささやいた。
「部長さん、マイペースだね。でも、話しやすそう」
「うん、いい感じ!」
二人は新しい出会いに期待を膨らませ、
手話ボランティア部での第一歩を踏み出した。
仮入部届に記入を終え、ミクとツバサはカズキ部長から部活の概要について説明を受けていた。
「活動は主に週に2回、木曜・金曜なんだ。
最初の数回は基本的な手話の挨拶とか、
指文字を覚える練習をするよ」
カズキはそう言いながら、黒板に流れるような字で「あ」「い」「う」「え」「お」の指文字の図を描いていく。
「それに、烏目川の清掃ボランティアは年に3回、ランダムで朝8時から。ちょっと早いけど、川辺は気持ちいいよ」
ミクは描かれた指文字を見つめながら、
興味津々といった様子で尋ねた。
「部長はいつから手話をやってるんですか?」
カズキは少し考えるそぶりを見せた。
「んー、中1くらいからかな。将来助産師さんになりたくてちょっとでも役に立てばなって覚えたんだ」
「そっか……」
ミクとツバサは、その純粋な動機に感銘を受けた。
「じゃあ、来週の木曜日から本格的に参加してね。
時間は放課後すぐ、このこだま多目的室に集合だ」
「はい!」
二人は元気よく返事をした。
帰り道、夕日に照らされた校舎を背に歩きながら、ツバサがミクに尋ねた。
「指文字、難しそうだね。覚えられるかな?」
ミクは空を見上げて笑顔で答えた。
「大丈夫だよ! あの部長と一緒に、楽しくやろうよ。それに、私たちのクラス、まだ友達少ないし、ここで新しい居場所ができるといいな」
新しい出会いへの期待と、少しの不安を胸に、二人は中学校の門をくぐり抜けた。明日からの学校生活が、少しだけ楽しみになった。