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🫧第2話
館内は静かだった。
ふたりは、言葉にならなかった過去を探しながら歩いた。
「わたしが話せなかった気持ち」
「あなたに届かなかった声」
泡になった記憶が、光の粒になって漂っていた。
律は、とある棚で足を止めた。
「この泡……たぶん、ぼくが君の名前を呼びたくなった瞬間の記憶」
聖名(みな)はその泡をそっとすくった。
すると、夢の中で律が彼女を見ていた場面が再生された。
泡のピアノ。名前を持たないふたり。
スプーンで掬った言葉が空に浮かんでいた。
聖名(みな)はその映像の中で、小さくつぶやいた。
「律……あなた、本当にずっとそこにいたんだね」
律は答えず、ただ泡の記憶を両手で包み込んだ。
図書館の空気が、静かに震えた。
ねむるが寝言で呟く。
「記憶は、泡にならなくても、消えるわけじゃないのです……
ただ、すくわれないと、誰にも読まれないだけ……」