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あの時、角を曲がったのがいけなかったのかもしれない。
誰もいなと思ってた、誰も居ないはずだった。
でもそこにいた。兵隊。
灰色の制服。鉄のボタン。銃。顔はもう思い出したくない。手も、声も、何もかも。
「迷子か?」とオランダ語で聞かれた。私は首を振った。
それ以上言葉は出なかった。
体がすくんで動かなかったのは寒さむさのせいなのか、それとも恐怖だったのか。
気づいた時は腕を捕まれ壁に押し付けられていた
終わったあとは彼は満足そうに笑いながら去っていた。
私は石のようにその場に崩れ落ちてた。
地面が冷たくて、でも感覚はなかった
濡れた服、太ももや足に出来た痣、靴が片方脱げていた。
自分が誰なのかが一瞬分からなくなった。
私はそこで、しばらく動けなかった。
体じゃなくて、心が動けなかった。