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紫陽花
『可愛い……もっと、見せてくれ……』
幻聴のように聞こえる記憶の中のイグニスの声に促されるまま、私は膝を立てて腰を浮かせた。
より深く、より刺激的に。
指の腹で一番敏感な芽を、彼がするように軽く押しつぶした瞬間───
「あ゛っ♡ イく、イっ……く…!ぁああっ♡♡」
頭の中が真っ白に染まるほどの衝撃が走り、二度目の絶頂は、最初よりも長く、深く、激しく続いた。
びくん、びくんと波打つ体を止める術もなく
私はシーツに顔を埋めて、ただただ獣のように喘ぐしかなかった。
ようやく力が抜け、ぐったりと四肢を投げ出したときには、パジャマは汗で肌に張り付いていた。
乱れた呼吸だけが、静まり返った深夜の寝室に虚しく響く。
「……なんだか、寂しい…」
月の光に照らされた、濡れた指先を見てぽつりと呟く。
強烈な快楽の濁流が去った後にも、胸の奥にある彼への恋しさは、一向に消えてはくれなかった。
彼に抱かれたい。
強く、壊れるほどに。
口が溶けるようなキスをしてほしい。
彼の手でイかされて
彼に正常位で突かれて
あの広い腕の中に収まって、何も考えずに眠りたい。
それなのに今は、分厚い壁の向こうにいる彼の気配を遠く想像することしかできない。
「あと、五日もあるのに…私、なんてことを……」
一週間という期間が、永遠の長さに思えた。
自分から言い出したことなのに、禁断症状に耐えかねて一人で果てるなんて。
(本当の本当に…私、変態になってしまったんだわ……)
自分の行動が信じられなくて、枕に顔を押し付けて呻いた。
恥ずかしさと、彼に会いたいという切なさが混ざり合い、その夜は結局一睡もできそうになかった。
◆◇◆◇
それから、数日後
接近禁止期間もいよいよ終盤に差し掛かったころ。
気分転換を兼ねて、少しの買い物で外出した私は、運悪く激しい夕立に見舞われてしまった。
冷たい雨に打たれ、王城に帰り着いたときには、芯まで体が冷え切っていた。
その晩、無理がたたったのか、私は生まれて初めて経験するような高熱に倒れた。
意識が遠のき、視界がぐにゃりと歪む。
「……っ、イグニスを……呼んで、くれる……?」
朦朧とする意識の中、私は看病に当たっていたメイドの袖を、縋るように掴んで告げた。
冷徹な令嬢として、弱みを見せることを何よりも嫌ってきた私が
今はプライドも何もかも投げ打って、なりふり構わず彼を求めていた。
その報告を受けたイグニスは、嵐のような勢いで寝室へと飛び込んできた。
「アデレード!大丈夫か……!」