テラーノベル
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生徒会室に差し込む夕日が、漆黒のテーブルを朱に染めていた。
「ねえ、夢子。あなた、本当に生徒会に入って正解だったと思ってる?」
そう問いかけたのは、生徒会長・桃喰綺羅莉。椅子に浅く腰かけたまま、手元の細工細工をいじっている。
その視線の先にいるのは、彼女と対照的に背筋を伸ばして座るひとりの少女。
蛇喰夢子。
この学園に転校してきた当初は“外来の狂気”として噂されていた彼女も、いまや正式な生徒会役員――それも“書記”として、生徒会記録や対戦記録の監査を任されている。だがそれは表向きの顔だ。
実際には彼女の指一本で、ギャンブルの勝敗すらねじ曲がることもある。
「うふふっ……正解かどうかなんて、どうでもいいことです」
夢子は、机の上に指を這わせながら、瞳を細めた。
「ただ……こうして、あなたの隣で“見ていられる”ことが、楽しくて仕方がないんですのよ」
綺羅莉は顔をしかめるでもなく、淡々と訊いた。
「“見ていられる”? なにを?」
「あなたが、どう壊れるか。……あるいは、どう壊してくるか」
夢子はそう言いながら、淡く笑った。その笑顔はまるで、すべてを受け入れる聖母にも見え…
狂気の底から獲物を引きずり込む魔女のようでもあった。