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【回想】
これはまだ小さい時の話。いつ頃かはもう曖昧だけど…多分3歳ぐらいだったと思う。
『アリンちゃ〜ん、今日はおばあちゃんが1番好きなお話を聞かせてあげましょう』そうにこやかな笑顔と共に始まったある話。
『これはね、こことはまた違う世界のお話なの。魔法や力、地位や名誉が大きければ大きいほどその世界では崇められていたわ』普通の子供ならきっとここでもう話が理解できなかったと思うが、その時の俺には理解できたからそれからの話に興味津々だったんだ。
『そんな中、魔法や力はある女性と地位と名誉はある男性が恋に堕ちるの。魔法や力は崇められながらも恐れられることの方が多かったから彼女は隠していた。それでも男性は彼女に堕ちた。その2人はある森の茂みの中で何度も時を過ごしていた2人は誰よりも幸せな恋人同士だと私は思ったわ』でも、大体そういうのに付き物なのはバッドエンド。この後、その2人には不幸が訪れるんだろうと俺は思った。
『だけど、ある時男性はその茂みに来なくなった。女性は泣き出したわ。音を立てずに静かにずっと泣いていた。そう、女性はそこでひたすらに男性を待ったのよ。いつか来てくれるだろうと信じて…』そこからおばあちゃんの目は俺の方を見なくなった。
『でも、来なかった。半年の月をただ1人そこで魔法を駆使して生きてた。そして諦めてそこから出ようとした時紙が空から降ってきた。そこに書かれていたのは間違いもしない、あの男性の字だった。
“Please wait.
I’ll definitely pick you up someday.”
(どうか待っていて。
いつか必ず君を迎えに行くから。)と書かれていたらしいわ』
…その後も話が続き、最後に俺はずっと気になっていたことを聞いた。
『その男性と女性には名前はないの?おばあちゃん』
『…あるわ。女性の方は覚えてないけど男性の方の名前はシウルっていうの。私が1番好きな人ね』この時、俺はその1番好きを深く考えずに受け取った。
「その話は…そのアリンの傷と関係あるの?」
…そう、思うよな。俺は無言で頷いた。
「もし俺の予想があってるとしたらだけど、」と曖昧な解答をし、癒姫華の表情が少し曇るのがわかった。それから直ぐにバスがやってきた。シス行きのバスだ。「アリン…私、」そう後ろめたい感じに言いかける癒姫華を真っ直ぐ見据えて俺は、覚悟を決めて言った。
「癒姫華。俺と一緒に来てくれますか」
…今不安にさせてるのは分かる。でも、もう俺のことで絶対に癒姫華を泣かせない。