あれから『はい』という返事を貰って、バスに乗ってから早くも5時間の時間が経とうとしていた。
(あと、10時間ぐらいで着けばいいが…)
そう俺は思っていた。着いたらあの絵画と同じ風景を見つけなければならないからだ。簡単に見つかればいいがそうはいかないだろう。
「アリン…私眠くなってきたかも…」と隣で申し訳なさそうに言うのは恋人の癒姫華だった。
「大丈夫だよ。あと、10時間はかかるらしいから寝た方がいいしね」そう言って自分の肩に寄りかからせる。「おやすみ」と癒姫華に言うとにこっと笑顔になり、安心した様子で眠り始めた。
癒姫華は…誰よりも好きな人。
初めて会った時、俺は決めたんだ。絶対に君を守るって───。
日が落ちかける頃、何だか不吉なものが体を通る気がした。窓の外を見てみると特に何もない草原、たまに自動車や自転車が通る程度。空はオレンジ色の空と花紺青の色が綺麗にグラデーションとなっている。こんなとこで何か起こるのだろうか。それとも予知的なもので不幸がかかろうとしているのだろうか…。どちらにせよ、癒姫華だけは守り抜かなければ。
隣で眠る大好きな彼女を見ながら初めて会った時のことを思い出していた──────。
あれは、3年前の話。いつも通り俺は図書館に向かう道で彼女とは出会った。第一印象は綺麗な女性という印象だった。瞳の色は濃いルビー色の目をしていて、髪は茶色の中でも茅色に近い色をしていた。背は自分の175cmよりは低かったが姿勢の良さと何かを見つめる目にとても“大人”という印象を覚えた。
そうやって考えていると彼女の方から声がかかってきた。
『あの、すみません。この本が解読できないので手伝ってもらえませんか。図書館に行ったのですが、1人では恥ずかしくて…』そう言って手に出したのは“*promise*”というタイトルの本だった。中はロシア語だろうか…それも古いもの。タイトルは英語で中身がこういうものは沢山あるため珍しくはなかった。
『いいですよ。あの、えっと、僕これ読めるので教えましょうか?』と俺は戸惑ってしまい上手く敬語が話せなかった。だけど、彼女は
『いいんですか?!はい!是非!』と満面の笑みでありがとうと言ってきた。その笑顔を見た時、初めて誰かの役に立てた、そんな気がした。
『あ、そういえばまだ、名乗っていませんでしたね。箕川癒姫華と言います。貴方様の御名前を聞いてもよろしいでしょうか?』
『僕の名前はシム・E・アリンといいます。アリンって呼んでくれれば』
『分かりました!アリン!
これからよろしくお願いしますね!』
そして俺達は図書館のそばにある休憩スペースで椅子を並べ、俺の本の解読の説明が始まった。
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