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#心理戦
鬼霧宗作
230
#オカルト
つかであきひろ
539
161
「この電話、本当に履歴が残ってないのか?」
神崎悠真はスマートフォンを何度も見返した。
昨日、自宅へ帰ってからも確認した。
通信会社に問い合わせても、着信記録は存在しないという。
だが、あの声は確かに聞いた。
「見つけてしまいましたね。」
夢ではない。
神崎はそう確信していた。
⸻
午前九時。
警視庁・捜査一課。
「神崎、お前に新しい資料だ。」
岩田が分厚いファイルを机へ置く。
「また自殺ですか?」
「いや……未遂だ。」
神崎はページを開いた。
昨夜、公園で倒れていた二十代の男性。
意識不明だったが、一命を取り留めた。
しかし奇妙なことに、目を覚ました直後から意味不明な言葉を繰り返しているという。
「門は閉じた……。」
「私は選ばれなかった……。」
「次は七日後……。」
神崎は息を呑んだ。
昨日見つけたメモ。
『七日後、門が開く。』
まったく同じ言葉だった。
⸻
病院。
病室の前には警察官が立っていた。
「容体は?」
「安定しています。ただ……。」
看護師は困ったような表情を浮かべる。
「誰とも話そうとしません。」
神崎は病室へ入った。
ベッドに横たわる男性は、窓の外をぼんやり見つめている。
「警察です。」
反応はない。
「あなたに何があったのか教えてください。」
数秒の沈黙。
やがて男は、小さく笑った。
「……刑事さん。」
「はい。」
「もう遅いですよ。」
その目はどこか怯えていた。
「知ってしまったんですね。」
神崎の背筋に冷たいものが走る。
「何を?」
男はゆっくりと神崎へ顔を向けた。
「あなたの後ろ。」
神崎は反射的に振り返る。
誰もいない。
再び男を見ると、その顔から血の気が引いていた。
「来た……。」
「誰が?」
「候補者を迎えに……。」
突然、心電図が激しく鳴り響く。
男は胸を押さえ、苦しみ始めた。
医師たちが駆け込む。
「先生!」
「心停止!」
蘇生処置が始まる。
神崎は病室の外へ押し出された。
数分後。
医師は静かに首を横へ振った。
「残念ですが……。」
助かったはずの命が、突然途絶えた。
⸻
鑑識が男の所持品を調べている。
財布。
社員証。
家の鍵。
そして、小さな紙切れ。
神崎は手袋をはめ、それを開いた。
そこには一つのQRコードだけが印刷されていた。
読み込む。
画面は真っ黒になり、文字が浮かぶ。
『候補者認証中』
「……!」
神崎はすぐにスマホを閉じる。
しかし、数秒後。
通知が届いた。
送り主は不明。
『ようこそ、第十三候補。』
神崎の顔から血の気が引く。
「第十三候補……?」
その時だった。
病院の廊下の端。
黒いフードを被った人物が立っていた。
顔は見えない。
神崎が駆け出す。
「待て!」
フードの人物は振り返りもせず、非常階段へ消えた。
神崎も追いかける。
階段を駆け下り、一階へ飛び出す。
だが、外には誰もいない。
代わりに地面には、一枚の黒いカードが落ちていた。
中央には、翼を広げた人間の紋章。
裏には赤い文字で、こう書かれている。
『七日後、門は開く。あなたは選ばれました。』
神崎はカードを握り締める。
遠くで救急車のサイレンが鳴り響く。
だが、その音よりも大きく、胸の鼓動が耳の奥で鳴っていた。
事件を追っているはずだった。
それなのに、いつの間にか事件は、神崎自身を追い始めていた。
コメント
1件
ああ、第2話もめちゃくちゃ面白かったです……!「門は閉じた」「選ばれなかった」の言葉が第1話のメモと完全にリンクして、一気に世界観が広がりましたね。特に病室で「あなたの後ろ」と言われた瞬間、ゾッとしました。そしてまさか神崎自身が“第十三候補”に選ばれる展開になるとは——追う側が追われる側になる恐怖、すごく伝わってきました。続きが気になりすぎます!