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#探偵
橘靖竜
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ロボットの王
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神崎は、黒いカードを証拠袋に入れた。
鑑識に指紋を調べさせたが、結果は予想外だった。
「指紋は一つも検出されません。」
「素手で触れた形跡もないのか?」
「はい。まるで最初から誰にも触れられていない紙です。」
神崎はカードを見つめた。
中央に描かれた翼の紋章。
そして、赤い文字。
『七日後、門は開く。あなたは選ばれました。』
偶然とは思えなかった。
⸻
その夜。
神崎は資料室にこもり、過去の事件を洗い直していた。
死亡した二十六人。
未遂が三人。
年齢も職業もばらばら。
だが、一つだけ新しい共通点を見つける。
「……全員、一度だけ同じ場所へ行っている。」
被害者たちのスマートフォンの位置情報。
監視カメラ。
交通系ICカード。
それらを照合すると、全員が事件の一週間以内に、とある雑居ビルを訪れていた。
住所は東京都内。
三階。
入居テナント名。
『人生相談室 明日への扉』
表向きは無料カウンセリング施設だった。
⸻
翌日。
神崎は私服に着替え、一人でそのビルを訪れた。
古びたエレベーターを降りる。
廊下の奥に、小さな木製の扉。
そこには控えめなプレート。
人生相談室 明日への扉
神崎がノックすると、中から女性が現れた。
「ご相談ですか?」
二十代後半ほど。
穏やかな笑顔。
白い服。
どこか宗教団体を思わせる雰囲気だった。
「最近、生きるのが苦しくて。」
神崎は潜入捜査のため、そう答える。
女性は優しく微笑む。
「それなら、あなたはここへ来る運命だったのかもしれません。」
案内された部屋には十人ほどの男女が座っていた。
年齢は様々。
学生。
会社員。
高齢者。
全員が静かに前を見つめている。
やがて奥の扉が開いた。
一人の男が姿を現す。
白いスーツ。
四十代ほど。
穏やかな笑み。
「ようこそ。」
男は両手を広げる。
「私は、この集いの案内人です。」
部屋は静まり返る。
男はゆっくり語り始めた。
「皆さんは、生きることに疲れています。」
「この世界は苦しみに満ちています。」
「ですが、恐れる必要はありません。」
男は壁に映像を映した。
そこには、世界各国の「転生体験談」が並んでいる。
もちろん、真偽は分からない。
「死とは終わりではありません。」
「次の人生への入り口です。」
神崎は周囲を見回した。
参加者の何人かは涙を流していた。
まるで救われたような表情。
(危険だ……。)
神崎は直感した。
これは相談会ではない。
信じ込ませるための場だ。
洗脳。
その言葉が頭をよぎる。
すると突然。
案内人が神崎を見た。
「……そこのあなた。」
全員の視線が集まる。
「あなたは、何を求めてここへ?」
神崎は少しだけ間を置き、答えた。
「……本当に、生まれ変われるなら。」
男は笑った。
「素晴らしい。」
「では最後に、一つだけ質問を。」
男は神崎へ歩み寄る。
耳元で、小さく囁いた。
「神崎刑事。」
神崎の鼓動が止まりそうになる。
(なぜ……。)
正体は伏せていた。
警察手帳も持っていない。
名前を名乗ってもいない。
それなのに。
男は静かに微笑む。
「あなたが来ることは、最初から分かっていました。」
部屋中の参加者が、一斉に神崎を見つめる。
その目には、感情がなかった。
まるで、同じ命令を待つ人形のように。
男は笑顔のまま言った。
「皆さん。」
「今日、新しい候補者が来ました。」
部屋にいた全員が、ゆっくりと立ち上がる。
そして、寸分違わぬタイミングで口を開いた。
「ようこそ、第十三候補。」
神崎は思わず後ずさる。
扉へ目を向ける。
しかし、いつの間にか鍵が閉められていた。
部屋の時計は、午後三時三十三分。
秒針だけが、不気味な音を立てて進んでいた。
コメント
1件
第3話、一気に緊迫感が増しましたね…! 神崎刑事が潜入先で「あなたが来ることは最初から分かっていました」と言われるラスト、背筋が冷えました。鍵が閉まる描写や、秒針だけが進む不気味な空気がゾッとします。第十三候補という言葉も気になる…どういう意味なんでしょう。続きが待ち遠しいです!