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Secret Lovers

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Secret Lovers

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2023年04月03日

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Side青


店のドアをくぐると、男性店員が近づいてきた。

「あ、中で友人が待ってるんで…」

店内を見回すと、奥のほうのカウンターに座って早々にラーメンを食べている慎太郎の背中を見つけた。気を遣わせない彼なりの気遣いだ。

「お前、早ーな」

笑いながら付けていたマスクと薄い青色のサングラスを外す。でも笑い方が少しぎこちないかもしれない。

「いやいや、樹が遅いんだよ」

確か約束の時間は過ぎていないはず…と腕時計を見ると、隣に座るように慎太郎が促した。

「…やっぱり緊張してる?」

彼がうかがうように訊いてくる。隠すのも悪いと思い、小さくうなずいた。

「ごめん、俺があんなこと言うから……」

俺に似た金色のピアスが揺れる。

「違う。むしろ俺が期待に添えなかったから申し訳ないと思ってる。どうしてもお前は…今までの慎太郎と同じなんだ」

そっか、とつぶやいて音を立てて麺をすする。

やってきた店員に注文した。

「このこと、みんなに言ったほうがいいかな?」

意外にもか細い声なものだから、面食らう。

「まあ…秘密でいいんじゃない」

「でもSixTONESでは隠し事しちゃダメって決まってるよ?」

うーん、と少し考える。

「これはSixTONESの中の俺らの問題じゃなくて、2人の男としての問題。だからあえてみんなは関係ない」

慎太郎は神妙な顔でうなずく。

「何事もなかったってことでいいじゃん」

運ばれてきたラーメンを並んで食べていると、やっぱりいつも通りだなと思う。

でも気のせいか、少しだけその横顔が寂しそうだ。

俺は今しがた飲んだばかりのレンゲでスープをすくい、

「慎太郎の、醤油だろ? 塩も美味いよ。食べてみな」

顔を向けた彼の口に近づける。素直に飲んでくれた。

「うん、美味い」と言ってからその真意に気づいたようで、途端に耳が赤くなった。

「え、ちょ、樹…」

「今日だけ特別サービスな」

えー、と残念がる。

「…でも、樹と一緒のラーメンはいつもの6倍美味い」

「なんでわざわざ6倍なんだよ」と笑う。

喜んでくれているようで良かった。

「なあ、俺って失恋したってことなのかな」

突然そんなことを言い出すから、危うく麺を口から出してしまうところだった。少し咳き込みながら訊き返す。

「え?」

「でもその相手となぜか今飯食ってる」

「…これだけじゃ物足りない?」

そんなことないよ、と首を振った。

「むしろ失恋したのに楽しくてラッキー」

持ち前の明るさを見せていて、安堵する。

確かに、振ったという自覚はあまりない。変わらず友達のままだから。

「じゃあせめてものお詫びとして奢らせて。やっぱ何か申し訳ない」

食べ終えて伝票を取り上げたこの手を、慎太郎に掴まれる。

「いいって。樹からの詫びなんていらない」

まるでドラマみたいなカッコいい台詞をもらい、彼と半分ずつ出して店を出る。

「んじゃ、俺あっちでタクシー拾うわ。またな」と慎太郎は踵を返す。

その背中に、「また寂しくなったらいつでも飯誘えよ」なんて言ってみた。

慎太郎は片手を上げて応えただけだった。


終わり

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