美智の国から援軍が到着した。信国軍と武蔵帝都軍は、その到着を待っていた。
先頭に立つのは、美智国(みちこく)軍司令官の白雪凛華(しらゆき りんか)
その美しい姿からは想像もつかないほど、彼女は強力な女性司令官であった。
凛華は一度戦場に立つと、その美貌とは裏腹に冷酷で容赦のない戦いぶりを見せる。
敵を欺く巧妙な戦術や、瞬時に敵の弱点を見抜く洞察力は、彼女を神話的な存在にしている。
信国軍の司令官が迎えに出ると、凛華はすぐに状況を尋ねた。「状況は?」
信国の司令官は重々しく答えた。「状況は深刻だ。小規模な村落はほぼ壊滅状態だ。」
凛華は一瞬考え込み、冷静に言葉を発した。「迅速に動かねばならないな。遅れは許されない。」
彼女の眼差しが凌に向けられる。「武蔵帝都まで出動とは、よほど手強いようだな。」
凌は頷きながら答えた。「現在調査中ですが、信国には強力な呪いを持つ魔獣が存在する模様です。
その影響で魔獣が暴れ始めています。」
凛華は周囲を見渡しながら尋ねた。「國光はいないのか?」
凌は少し戸惑いながら答えた。「はい。國光様は今は..」
凛華は鼻で笑った。「ふん。まあいい。國光がいなくても私が討伐してみせる。」
その光景を見ていたタケルは、興奮気味に呟いた。「あれが美智の国司令官、あ~あの太ももにはさまれたい…」
凛華はギロっとタケルの方を睨みつけ、「ふん、さすが國光部隊だな。軽薄な男ばかりだ。
せいぜい足を引っ張らないようにな」と冷たく言い放ち、その場を去って行った。
タケルは凛華の冷たい視線に一瞬ひるんだが、彼女の圧倒的な存在感に圧され
ますます彼女の強さに惹かれていくのを感じた。
タケル(あの冷たい感じっぞくぞくするぜ)
軍隊の士気は彼女の到着によって一気に高まることとなった。戦いの行方はまだ不透明だが、
白雪凛華の存在が新たな希望をもたらしたことは間違いないだろう。
その日の夜、隊の食堂はいつも以上に賑わっていた。翔太は食事を取りながら、
ふと口を開いた。「昨日、拠点の付近で魔獣が見つかったのなら、この近辺にも魔獣が潜んでいる可能性があるな」
「そうだな、隊長が魔獣に気づいて倒してくれたから助かったけどさ。」とタケルが続ける。
メイは黙って頷いた。「メイは隊長と一緒だったんだろ?」タケルが尋ねると、
メイは少し戸惑いながら「う、うん」と答えた。
「深夜に何やってたんだよ?」タケルの問いに、メイは心臓が高鳴るのを感じた。
昨夜、蓮とキスした瞬間が頭をよぎり、思わず真っ赤になった。
その様子を見た翔太が「何かあったのか?」と問いかけると、
メイは慌てて「なんでもない」とごまかした。心の中では、恥ずかしさとドキドキが交錯していた。
そんな中、周囲がざわつき始めた。白雪凛華が入ってきたのだ。彼女は一瞬の静寂をもたらし、
隊員たちの視線が彼女に集中する。凛華は優雅に椅子に座り、食事が出されるのを待った。
タケルが興奮気味に「白雪司令官、たまんねーぜ」と呟くと、
周りの隊員たちもその美しい姿に見とれていた。しかし、凛華はスプーンを置き、
冷たい声で「無能な奴らめ」とつぶやくと、立ち上がった。
タケルはその言葉に反応し、「無能だと?!俺たちは帝都軍だぞ、
エリート中のエリートなんだからな」とつっかかっていった。周りの空気が張り詰め、緊張が走る。
「おい、やめろよ」と翔太が制止する。しかし、その瞬間、凛華の視線がタケルに向けられた。
食堂の中は緊迫した雰囲気に包まれていた。
凛華は冷静な目でタケルを見据え、
「エリートだと?名乗るだけなら簡単だが、その実力を証明してほしいものだな」と言い放った。
タケルは一瞬の沈黙を破り、「そんなに美智軍が強いっていうなら、勝負しようか」と挑発的に返した。
その言葉を聞いた美智軍が立ち上がり、興奮が広がる。
「なんだと!!」「やってやろうじゃないか!!」と、周りは一気に盛り上がった。
タケルはにやりと笑い、「司令官、勝負に勝ったらご褒美もらえますよね」と言った。
凛華はその言葉に眉をひそめ、「褒美だと?」と尋ねる。
タケルは自信満々に続けた。「ここまでコケにされたんだ、証明できたら、「そうですか」じゃすまされませんよ。」
凛華の表情が険しくなり、「いいだろ、何が望みだ」と問うた。
その瞬間、タケルは大声で言った。「キスに決まってるでしょ!!」
食堂は一気に盛り上がり、大歓声が響き渡った。周りの隊員たちは興奮し、
顔を見合わせては笑い、ざわめきが広がる。引くに引けない凛華は、
冷静さを保ちながらも心の内に波が立っているのを感じていた。
「バカな奴らだ」と隣家は呟き、口元に微かな笑みを浮かべる。
「今から勝負を行う。帝都軍でも美智軍でも、勝った者には私がキスを贈ることにしよう」
その言葉に、食堂はさらに盛り上がり、隊員たちの歓声が天井を突き抜ける勢いだった。
タケルは勝利を確信し、目を輝かせて仲間たちを鼓舞する。凛華もまた、
心の奥で高まる期待を感じながら、勝負の行方を見守ることにした。
「で、勝負は何にする?喧嘩か?」興奮気味に尋ねるタケルの声が食堂に響いた。
周囲の隊員たちも期待に満ちた目で彼を見つめている。
凛華は冷静に立ち上がり、「これより勝負を開始する。同じ軍の中で勝負し、
勝ち上がった代表が、私の前で決着をつける」と宣言した。その瞬間、周囲の空気が変わり、
一同は緊張感を漂わせた。「その勝負は、」と隣家が続けると、タケルは身を乗り出して尋ねた。「なんだ?」
「手押し相撲だ。」凛華の言葉に、喧嘩を期待していた一同は拍子抜けしたように顔を見合わせた。
「手押し相撲?」タケルは驚きを隠せずに反応した。
「そうだ。バカ同士が喧嘩して暴れたところで、何の意味もない。
ここは戦略と心理戦の手押し相撲で決める。」凛華は毅然とした態度で言い放った。
その言葉に、帝都軍と美智軍の隊員たちは戸惑いを隠せなかったが、同時に新たな興奮が生まれた。
手押し相撲という一見シンプルな勝負の中に、彼らの実力が試されることになるのだ。
周囲の隊員たちは、手押し相撲に向けてそれぞれの思惑を抱きながら、
勝負の行方を見守ることになった。食堂の中には、戦略と心理戦が交錯する新たな雰囲気が漂い始めていた。