汚れた浴槽を流す水音が心地よい。湯気で曇った鏡を手で拭うと、大森はそこに映った藤澤を見つめた。
「汚しちゃったね」
言いながら、申し訳程度にぶら下がっている髪留めを藤澤は外した。
バサバサになった髪が肩に落ちる様をじっと見つめながら、大森は藤澤の顔の残滓汚れをシャワーで洗い流す。そのまま、汚れが飛び散ってしまった髪にもシャワーをかけてシャンプーをする。
大森の指先が藤澤の髪を撫で、頭皮にも程よい刺激を与えたのだろうか。
藤澤は目を閉じて息を吐いた。
「涼ちゃん、俺にもたれて」
言われるままに藤澤は大森の胸に頭を預ける。
「美容院以外で誰かに髪を洗ってもらうのなんて、子供の頃以来だよ」
目を閉じたままで藤澤はそう言って笑う。
「俺は誰かの髪を洗うのなんて涼ちゃんが初めてだよ」
言いながら大森は丁寧に藤澤の髪を洗い、トリートメントでパックをする。
「至れり尽せりだね」
藤澤がそう言うと、大森は笑いながら愛おしそうに藤澤を見やる。そしてトリートメントを洗い流すと、そのまま覆い被さるように藤澤の体を抱き止めた。
首筋に何度も口付けを落とす大森に、藤澤は身を捩りながら笑う。
「擽ったいよ、元貴」
大森の腕を振り解いて藤澤は立ち上がって浴室のドアを開ける。
ひやりとした外気が浴室に流れこみ、藤澤はタオルラックにかけてあったバスタオルに手を伸ばした。
「涼ちゃん」
髪の水分を拭う藤澤の背中を大森はバスタオルごと抱きしめた。そして自分の方を向かせると、名前を呼びながら額をくっつける。
「おいていかないで」
言いながら藤澤の頬に自らの頬を当てる大森。
叱られた子供のように、しおらしい大森の様子に、藤澤は困ったような笑顔を浮かべると、大森の背に手を回す。
「元貴は甘えん坊だね」
大きめのバスタオルで二人分の身体を包むようにして水分を拭き取ると、乾燥機の中に入れたままの、二人分のバスローブを取り出す。
乾燥したてのそれはほんのりと暖かく、そして手触りが心地よい。
「髪、乾かさなきゃね」
ベッドサイドに戻る藤澤に、大森はそう言ってドライヤーを手にしていた。
「乾かしてくれるの」
「勿論」
ベッドの上に胡座をかいて座った藤澤の背後に大森が膝立ちになってドライヤーをオンにする。
姿見に映るのは、一生懸命に藤澤の髪を乾かす大森の姿。
撫で付けられたヘアオイルの柑橘系の香りが心地良いと藤澤は目を閉じた。
「はい、完成」
ドライヤーをオフにした大森が耳元で囁く。その声で藤澤は目を開けた。
「ありがとう」
藤澤がそう言うと、大森はその肩に抱きつき、頸に顔を埋めた。
「涼ちゃん、抱きたい」
掠れたような声で、静かにそう言う大森はゆっくりと右手を藤澤のバスローブの袷に滑り込ませる。肌の感触を確かめるように藤澤の胸を撫で回していた大森の掌だったが、形を成してきた膨らみに気づいて、そこを執拗に弄り始めた。
「っ…はっ…あぁ…」
藤澤の口が小さく開き、吐息が漏れる。
「乳首、コリコリしてきたよ、気持ちいい?」
耳元でそう囁きながら大森は胸を弄る。指先で押すようにくるくると撫でたかと思うと、人差し指と親指で摘んで軽く引っ張り上げた。
「アッ…やだ」
甘い刺激に藤澤の身体は跳ね上がる。その様がいじらしくてたまらなくなった大森は何度も執拗に攻め立てていく。
「涼ちゃん、可愛い」
小さく喘ぎを漏らしながら身体をくねらせる藤澤に、大森はそう囁く。そして空いている左手で藤澤のバスローブの紐を解く。
袷がはだけて白い足が見え隠れしているのが姿見に映る。
大森は舌舐めずりをするように唇を湿らすと、露わになった藤澤の肩甲骨に口付けを落とした。
「元、貴」
肩で息しながら藤澤は大森の名前を呼ぶ。
「涼ちゃん、足、開いて」
言われるままに藤澤がそうすると、大森の手が滑り込むように鼠径部に触れた。
「っっ…」
下腹部を撫で上げる大森の手は藤澤の反応を楽しんでいるようにも見える。藤澤の触れて欲しい箇所には触れない。
鼠径部から下腹部を円を描くように撫で上げられると、ようやく肝心な場所へと手が伸ばされた。
「あぁ…」
藤澤はようやく痒いところに手が届く喜びに安堵したような声を漏らした。
しかし大森の手はなかなかそこには触れない。茂みの生え際を確かめるように撫で、擽るようにもて遊ぶ。
藤澤は焦れてしまっていた。両眼からは涙が溢れて、濡れた唇から赤い舌が見え隠れする。
「意地悪」
「何が? どうしたの?」
わかっているくせに、と声にならない声で訴える藤澤に、大森はくすりと笑いながらようやく藤澤の欲しかった場所に指を伸ばした。
「あっ…」
「ここ、触ってほしかった?」
藤澤の耳元で囁きながら大森は藤澤の敏感な箇所を握り込む。
「はぁ…」
「でも、もっと触ってほしいの、ここじゃないよね」
身体に張り付いているだけの状態になったバスローブを剥ぎ取ると、大森は藤澤の身体をベッドに押し倒す。両脚を開かせて、その間に顔を近づける。
先走りの液をだらし無く漏らしている藤澤自身はまだ形をなしてはいない。大森は藤澤の尻たぶを掴み、力を入れて開くと隠された蕾がヒクヒクと脈打って蠢いていた。
先端から会陰へと伝わる先走りの液が蕾を濡らして嫌らしく光ってる様をまじまじと見つめながら、大森はゆっくりとそこに指を埋めていく。
「あっ…ん」
藤澤は声を上げると胸を上下させた。
「なんか、こう見ると濡れてるみたいに見えるね」
そんなことを言いながら大森は藤澤の中をほぐしてゆく。
「元貴のせい、なんだからね」
藤澤はそう言いながら大森の頭に手を伸ばした。髪を掴みながら、更なる快楽を求めて脚を更に開く。
「ふふ、光栄だなぁ、俺のせいだなんて」
恍惚とした表情を浮かべながら大森は藤澤の快楽の扉をあけてゆく。
藤澤はもう何も考えられなくなっていた。
ただ目の前にある快楽に身を委ね、与えられる刺激に従順になるだけだった。
「俺がいないとダメな身体になってよ涼ちゃん」
そう言う言葉と同時に、大森は自らのバスローブを脱いで藤澤の脚裏に手を当て、自らを押し進めた。
「俺だけの涼ちゃんでいてね」
言いながら自分を組み敷く大森の顔をぼんやりと見つめて、藤澤は頷くことしか出来なかった。
コメント
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初めまして。1番好きなストーリーです。❤️💛大好きなので笑 表現が美しくて毎回ドキドキしています。 制作大変だと思いますが、応援しています。続きをとても楽しみにしています。
今回もキュンキュンしまくりでした🥹♥️ そして、毎回おもうのですが、作者様の文章からは本当にその場面が想像出来ちゃう凄さがあります! 本当にすごいです🙏✨ そして大好きなお話です🤤
うはぁ、好き。すごく好き。