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ただ、暗闇を歩いていた
ずっと続く暗闇
終わらなくて、怖くて
いつ終わるんだろう
終わることなんて、ないだろうって
ずぅっと
ずぅっと、
最近、夜に眠れないことがある
自分が何を思って眠れないのかも
自分がなぜ眠らないのかも
自分がどうしたいのかも
わからない
寝るとき、
私は天井を見ない
暗いし、怖い
果てしなく暗闇が広がっている気がして
お気に入りのサメの抱き枕を抱えて
眠りにつこうと必死に目を瞑る
…
やっぱり、だめかぁ
心のざわざわがずっと鳴り止まない
泣けもしないくせに、
なんでずっとこんな気持ちなんだろう
漠然とした不安?
身体的な疲労?
何かへの高揚感?
自分へのやるせなさ?
他人への怒り?
全てがごちゃまぜで
自分がわからない
「だれか、どこかへ連れてって」
「ここじゃない、どこかへ」
「お願い………」
じゃあ、連れてってあげる
ここじゃないどこかへ!!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
.。o○ ○o。.. 。o○
ザプン!!!コポコポコポ…
海の奥深く
海の底
深海
「ん……ッんんん?!」
「大丈夫、息できるよ」
「コポ…あ、ほんとだ」
「ここは夜しか開かない海の中さ」
「夜しか開かない…か
というか君、サメ…?」
「君を食べたりしないから大丈夫だよ
しっかり捕まってて」
「…うん」
細かいことを気にする気力はなかった
でも、願ったり叶ったりだよね
これが夢だとしても
現世ではないとしても
なにも気にする必要ない
ただただ、深海の
私たちを包んでいる少し冷たい水が
心地よかった
宇宙を浮遊しているような
雲の上に乗っているような……
冷たいけど、あったかかった
「起きて、起きて」
「…ん……ふぁあぁ…」
「もうすぐ終着点でーす」
「私…寝てたのか」
久しぶりにしっかり寝た
どのくらいこの海を漂っていたんだろう
でもそんな長旅も…終わりなのか
「あそこだよ」
「…人がいっぱい」
人が何人か輪になっていて、そばにはエイやジンベエザメやウミガメ、それぞれのパートナーがいた
みんな、寄り添って
心地よい深海を
感じている
「みんな揃ったので、始めますね」
真下から厚みのある声が耳を伝う
「始める…??なにを…」
「まぁ、いいから見てみようよ」
ぱぁ……
そう、効果音をつけたくなるくらいの
優しい光が
顔に照る
「大きいチョウチンアンコウ」
「本当…」
「綺麗だね」
口々に感想を漏らす人たち
しばらく、ずっと光を見つめていた
ブルーライトでもなくて
お日様でもなくて
無理やり主役にさせる照明でもなくて
ただ、このくらいがちょうどいい
心を少し温めてくれるくらいの
このくらいの光が
ただ、心地よかった
𓆟𓆡𓆟𓆡𓆟𓆡𓆟𓆡𓆟𓆡𓆟𓆡𓆟𓆡𓆟𓆡
「優しくありなさい」
それを守ってきただけだった
でも、いつしか
「優しくなければならない」
になってきて
自分がわからなくなったんだ
ホントは怒りたいし
ホントは泣きたい
泣きたいのはこっちなの
本当に言いたいのは、私の方なの!!!!
𓆟𓆡𓆟𓆡𓆟𓆡𓆟𓆡𓆟𓆡𓆟𓆡𓆟𓆡𓆟𓆡
ようやく出てきた私の涙も
深海に溶けていく
それでいいんだ、それで
深海は証明してくれて、隠してくれる
私の涙を
「僕はずっと、覚えているよ、見ているよ
君は、頑張ってる
頑張るしかなかったとしても
ここまで続けてきた努力の証
ずっと僕は知っている、」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
チュンチュン…
カーテンの隙間からの朝日に目が覚める
「私…寝てたのか」
深海は夢…ってことかぁ
あれ、でもこれ…よく見たら
「あのサメ…私の抱き枕とそっくり」
暗闇で、光を見つけた
暗闇は終わってないけど
行くべきところを見つけた気がした、
【夜しか開かない深海】
あたたかくひかるチョウチンアンコウさん
がいるらしい