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次の日、主が色々と忙しいが故に、いつも忙しい俺にナチスの飯を運ぶのも言いつけてきた。
仕方が無い。これも主からの命令だ。ドールは自身の主からの命令には逆らえない。
炎露にも、津炎にも昼飯は届けた。
後は、ナチスだけだ。
部屋の前で止まって、コンコンと音を立ててノックする。
「ナチス、入るぞ」
その一言だけ言って、鍵を開けて部屋に入る。
ナチスはベッドの上で、主が持ってきたらしい毛布に包まって俺を睨みつけていた。
その瞳には、怒りや不安、心配。そんな感情が見え隠れしている。
「昼飯だ」
そう言って机に湯気の消えかかっているスープを置く。
「津炎は……」
その時、ナチスが何か話し始めた。
「津炎は無事なのか?」
相変わらず俺を睨みつけたまま、何処と無く圧のかかった声で俺に問うてきた。
ナチスは子供のくせに、変に大人びていて、強がっている。
こいつらは、自身の心配よりも相手の事をどうしても心配してしまう性質らしい。
津炎にも同じ事を何度も聞かれた。
この二人は意外にも似たりよったりなんだろうな。
「だいぶ体調が回復してきたらしい。朝食は全部食ってた」
黒の手袋を綺麗に付け直しながら、話す。
ナチスは俺の事があまり信用できないのだろう。俺の言葉に疑念を抱きつつも、それ以上は何も言わなかった。
ドールが嘘をついて何か得をする。なんて事がないと判断したのだろうか。まぁ、正直俺にはあまり関係無い。
「飯、食っとけよ」
俺は一言残して、部屋を出て鍵を閉め、自身の昼飯を食いに行く。
最近俺の事を師匠と慕ってくれるやつに昼飯を抜いてると話すと、説教をくらったから、最近はしっかり食べてる。
そう言えば、そろそろ俺の弟子(仮)がここに来る予定の日が近付いている。
「正直、勝手に師匠って呼ばれてるだけだしなぁ」
簡単にスクランブルエッグを作りながらそんな事をボヤく。
本当に、ちょっとだけ助けてやっただけなのに、尊敬されるとか、想像もしていなかった。