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私
見を述べるのは控えよう。
しかし、彼のような男は、この世にもういないだろう。
彼は自分の才能を信じていたし、 それが他人にも伝わると信じていた。
だから、誰にも理解されない苦悩を抱えて生きていた。
そんな彼を救える人間などいないだろうと思っていたよ。
結局、彼を救うことができたのは彼自身だけだったのだ。
私には想像することもできないほどの絶望的な孤独の中を 生き抜いてきた男だけが知る真実が、そこにはあったんだろうね。
私はあの男のことが好きだよ。
だからこそ、あいつのことをもっと知りたいと思う。
だが、きっとそれは叶わないことだとも思う。
奴の心にはいつも深い闇がある。
その深淵に潜む何かに触れれば、こちらまで引き込まれてしまいそうだ。
触れてはならないものに、触れるべきではないのさ。
それでもなお、奴のことを知りたいと願うならば、覚悟を決めろ。
決して目をそらさず、最後まで見届ける。
冷静沈着さ、誠実さ、信念を貫く意志の強さ。
理知的な判断力、決断力、行動力、分析力、洞察力。
失敗してもくじけない強い精神力を持ち続ける。
「あのね……お兄ちゃん……」
『うん?』
「お兄ちゃんが何を考えてるかわからないけど……
きっとあたしのことじゃないよね?」
『えっと』
「だから気にしないで!」
『あぁ、わかったよ』
「それと……ありがとね!お兄ちゃん」
「おーい!朝だよぉ~♪起きてぇ~!!」
「うわ!?」
布団を思いっきり剥ぎ取られた俺は、驚きのあまり飛び起きた。
目の前には、妹が立っていた。
「おはようございます」
俺の妹―――咲夜は満面の笑みを浮かべながら言った。
その顔からは、天使のような可愛らしさを感じる。
しかし、騙されてはいけない。こいつは、悪魔の生まれ変わりなのだから。
「ねぇねぇ、早く支度しないと遅刻しちゃいますよぉ?」
時計を見ると、針は既に8時半を指していた。
学校まで歩いて10分くらいなので、今すぐ準備すれば間に合うはずだ。
「ほらほら、急いでください。私、もう先に行っているんで!」
そういうと、妹の咲夜は部屋を出ていった。
俺は慌てて着替えると、朝食を食べることなく家を出た。
今日は、久しぶりに実家に帰ろうと思う。
両親にも会いたいし、弟とも話をしたい。
それに……あの娘の様子を見ておきたかった。
「あら~! 久しぶりじゃない!」
玄関を開けるなり、母さんが出迎えた。相変わらず元気そうだ。
「お帰りなさいませ、旦那様」
続いて出てきたのは父さんだ。いつも通りの仏頂面である。
「ただいま」
「随分と大きくなったわねぇ。見違えたわよ」
「うん、もう高校生だからね」
「そういえば、今日はどうして帰ってきたの?」
「ちょっと話があってさ」
「お父さん、何か知ってる?」
父さんは何も言わずに首を横に振った。
こういう時は大抵知らないふりをするのだ。昔から変わらない。
「まあいいわ。とりあえず上がりなさ――」
その時、家の奥の方からドタドタと足音が聞こえてくる。
この慌ただしい歩き方は間違いなく弟のものだ。
案の定、現れたのは弟の姿。
彼は姉さんのことを見下していたんだろう。
それはもう、昔からね。
そんな彼が今更、何をしに来たのか。
僕たちはこれから先も、きっと分かり合えないよ。
彼は僕たちとは違う生き物だから。
彼も気づいているはずだろ? 僕らがわかりあえるはずがないってことくらい。
それでもなお、彼は歩み寄ろうとしている。
けれど残念ながら、それは無駄なことだよ。
なぜなら僕は彼とは反対の存在だからさ! 彼のような存在になりたいとは思うけどね。
でも僕には僕の生き方があるんだ。
だって僕は、この世界の創造主なんだぜ!? それにしても、君は実に面白い奴だよ。
退屈しなくて済むよ、ほんとに。
だけどそろそろ潮時かなぁ~。
残念ながら、君じゃあ役者不足だ。
舞台に立つ資格はないんだよ。
君の役目はもう終わったんだ。
ご苦労さん。
お疲れ様。
よく頑張ったわね。
えらいわ。
すごいじゃない。
天才。
秀才。
才能豊か。
あなたならきっと、素晴らしい人物になるでしょう。……本当にそうなれるのかしら? ねぇ、もしも私があなたの人生を全て奪ってしまった