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「髪を上げたんですね。とても似合いますよ」
髪にそっと触れられると、
彼のつけているアンバー系の香りがふわりと漂って、それだけで胸が高鳴るようだった。
「先生も、スーツがとてもお似合いで素敵です」
「そうですか? ありがとうございます」
柔らかな微笑みを向けられ、胸のドキドキが抑まらなくなる。
すると、ふっと手が差し伸べられて、
「こちらへ……」
と、腰に軽く手が添えられた。
「そろそろ、秘密を共有しましょうか」
彼の言葉に、ようやく秘め事が明かされることを感じていると、
広間の端に間仕切りで隠れるように設えた階段へと、手を引かれた。
腰に添えられた手で導かれるように、ゆっくりと上って行くと……、
目の前に、前面と脇の三方をガラス窓に囲まれた空間がひらけた。
中は、壁面だけではなく天井もガラスで覆われていて、フローリングのサンルーム仕様の狭スペースにはローソファーが一つだけ置かれていた。
「……ここは、私の秘密の場所なんですよ」
唇に人差し指をあてて、ふっ…と彼が微笑むのに、ずっと内緒にしていたのはこのことだったんだと、
「先生は、この場所に来たくて別荘へ?」
そう問いかけると、
「私がと言うよりも……」と、肩がスッと抱き寄せられた。
「満天の星をまだ見たことのないあなたを、ここへ連れてきたかったんです」
「……私のために?」
彼が頷いて、「ほら……」と、頭上にある天窓を指差した。
「……うわぁ……凄い……」
見上げるとガラス張りの天井には、一面に降るような星空が広がっていた。
「この辺りは高度がある分、天体もよく見えますから。この特別な場所で、君と共に過ごしたくて……」
「……ありがとうございます。とても綺麗……」
夜空に煌々と輝いて瞬く星の美しさから目が離せなくなっていると、
「私は、冷やしておいたシャンパンを取ってきますから。あなたは、星空を眺めていてください」
彼が言い置いて、階段を下りて行った。