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振り仰げば、天窓を覆うように天の河が大きく横たわり、周りには散りばめられた宝石のように星々が光っていた──。
「……美しいでしょう?」
言葉もなく見つめていたら、彼が戻って来て、フローリングの床に直にグラスとボトルを置いた。
「バゲットに合うカッテージチーズやオリーブなどをストックしておいたので、シャンパンといっしょにどうぞ」
ボトルの横に置かれた銀製のトレイの上にはチーズやオリーブの他にも、スライストマトや生ハムなどがふんだんに盛られていた。
「私は、一人でこの別荘を訪れては、よくここで星を見ていました」
ソファーに隣り合って座り、言う彼に、
「一人で……?」
と、尋ね返す。
「ええ…」
彼が頷いて、シャンパンの栓を抜くと、
「ここが唯一、自分でいられる空間だったので……」
二つのグラスにボトルを傾けて、炭酸の泡が弾けるシャンパンを注ぎ入れた。
グラスが、チン…と軽く合わされる。
「……ここで、星空を眺めていると、何もかもを忘れられる気がして……」
彼は、独りきりでどれ程のしがらみに耐え忍んできたんだろうと……その心情を思いやると、切なさに胸が詰まるようだった。
「けれどこれからは、あなたがいるので……」
シャンパンの一口を流し込んだ彼が、
「なのでこの秘密の場所は、もう解放をするために……解放して、あなたと共有をするために……」
穏やかな笑みをふっと浮かべると、
「これからは一人ではなく、あなたとこの星空を見ていたくて……」
飲んだシャンパンの薫る唇で、私に口づけた。