コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
今日は久しぶりに6人で集まる日だった。
YouTubeの撮影のため、事務所へ出向く。
何やらバタバタと廊下を走っている北斗。到着すると、そこには大我だけしかいなかった。
北斗「…あ、京本」
大我「おお、おはよう」
北斗「おはよ」
大我「どうした? なんかバタバタしてなかった?」
北斗「いや、朝出るとき時間なくてさ。遅れると思って急いで来たけど、間に合った」
大我「そっか」
荷物を置き、準備を始める。
と、北斗はある異変に気が付いた。「なんか京本の声遠いな…」
そんな呟きに重なるように、大我が声を発する。「あれ北斗、補聴器は?」
「え」
言われて初めて、耳を触る。右耳にいつもあるはずの補聴器が、今日はなかった。
「え⁉ あれ、ない」
慌てて鞄の中を見てみるが、どこを探してもない。
大我「もしかして、置いてきちゃった…?」
大我が恐る恐る訊く。
北斗「……そうかもしれない」
大我「いつもどこに置いてる?」
北斗「寝てる間は付けないから、出るときに持ってく。ベッドサイドに置いてるんだけど…。あっ、今日急いでたから忘れたのかも。うわ~、やっちまった」
あちゃ~、と大我も残念そうな顔をする。
大我「出来るかな、今日。俺の声は聞こえてる?」
北斗「…ギリ」
大我「ああそうか。結構、俺北斗と話すときは大きめに声出してるんだけど」
北斗「そうなの?」
うん、と当たり前のように頷く大我。
「やっぱり補聴器ないと苦しいかな…」
北斗「んまあ、今日はしょうがないから頑張るよ」
大我「無理すんなよ」
率直な言葉に、北斗の頬にほんのり赤みがさした。
するとドアが開き、誰かが入ってくる。
楽しげな笑い声とともに、ジェシーと樹、高地、慎太郎が来た。
ジェシー「DAHAHA!」
樹「うるせえよお前w」
慎太郎「いつもだけどね笑」
大我「なに朝から大声で」
ジェシー「あ、おはよう大我、北斗」
樹「おはよ」
慎太郎「おはよ!」
高地「おはよー」
北斗「おはよう」
話に参加できないと思った北斗は仕方なく、椅子に座ってスマホに徹することにした。
樹「なあ北斗ちょっと聞いて。あのさ、昨日バラエティー撮ったんだけどさ…」
いつものごとく愚痴をこぼそうと、樹は、ソファーに座る北斗の右側に座る。
補聴器があるほうで喋る、という樹の配慮だったが、今日に限ってあだとなった。
北斗「…ん? ごめん、聞こえない」
樹「ん?」
北斗のほうを振り向いた樹が、気付いた。「え、北斗お前…補聴器どうしたんだよ」
北斗「…忘れた。家に」
樹「うぇ⁉ 珍しいな、大丈夫?」
大我以外の4人も驚く。
ジェシー「嘘!」
高地「ええ!」
慎太郎「大丈夫なの?」
北斗「…頑張る」
樹は北斗の左側に回り、
「頑張るってお前…。無理すんなよ? 頭痛くなったらきちんと言えよ」
北斗は大きく頷く。
樹「スタッフさんにも言っとけよ」
北斗「あ、俺が…?」
樹「自分のことは自分で言うこと。至近距離だったら話せるだろ。みんな優しいから、理解してくれる。だから撮影中になんかあっても大丈夫」
北斗「はい」
真面目に返事する北斗。それに、5人は思わず噴き出した。
大我「ふふ笑」
北斗「何だよー」
北斗が大我を振り返って笑う。
ジェシー「まあ何とかなるよ。忘れちゃう日もあるさ!」
高地「そうそう」
慎太郎「北斗ならできるよ!」
それぞれ楽天的に励ましてくれる5人に、安心した北斗だった。
いつものように撮影が始まる。
進行をする樹の右側に立った北斗は、なるべく不自然さがないように振る舞っていた。
数十分が経ち、ようやく一本が終わった。
樹「大丈夫か?」
いつものごとく気配りが利く樹に、ふふっと笑みがこぼれた。
北斗「だーいじょうぶだって。過度な心配いらないから」
ジェシー「だーいじょーぶだー」
慎太郎「ててんててん」
大我「志村けんさんね」
樹「珍しくきょもがツッコミしてる!」
大我「珍しくはない」
ジェシー「いや結構珍しい気が…」
大我「じゃあ俺、これからもうちょっとツッコミ係やるわ」
樹「できんのか~?」
大我「できるもん!」
北斗「自信だけは満々w」
慎太郎「まあでも良かったよ、何事もなくて。これでもめっちゃ心配してたんだからな?」
北斗「それはありがと」
その日は2本撮りだった。
無事に最初の撮影を終えた北斗だが、次は不調が襲ってくるかもしれない、と不安を覚えた。
北斗「ねぇジェス…」
小声で隣にいるジェシーに声を掛ける。
ジェシー「ん? どした?」
ジェシーも、北斗の声色にただならぬ雰囲気を感じたようで、トーンを落として耳元で尋ねた。「どっか辛い?」
ううん、と首を振る。
「今は大丈夫。撮影中になんかあったら…って。次はヤバくなるかもって思ったら…」
「大丈夫、大丈夫」
小さな子供をあやすように、背中を優しくトントン、とたたく。
「じゃあ、もし途中で辛くなったら、俺の肩を2回叩いて。それが合図ね。もし2回叩かれたら、俺が代わりに止めてあげるから」
ジェシーは北斗の本意をきちんと理解していた。
北斗は人見知りな人だ。YouTubeのスタッフは仲も良いとはいえ、病気のこととなると他の人に言いづらくなるから、北斗も症状のことを口ごもってしまうのだろう。
「ジェスは優しいね」
「そりゃそうよ!」
ニコッと笑った。
今度は、樹ではなく慎太郎がMCを任されていた。
できているのか怪しげな進行とともに、ゲームも進んでいく。
だが、不意に北斗の眉が歪んだ。
北斗(ん…。めまいが…)
目をぎゅっとつむる。目を開けても、めまいは襲い続けていた。
北斗はそっと、ジェシーの肩を2回叩く。
ジェシー「あっ」
すぐに気づいたジェシーは、声を張り上げた。「すいません! ちょっとカメラ止めてください!」
それを聞いたスタッフは、慌てて動き出した。
慎太郎「どうした?」
樹「…北斗?」
高地「え、何があった?」
北斗「ちょっと、めまいがして。フラフラする」
大我「一回下がろう」
カメラの裏の椅子まで、メンバーが支える。
北斗「ヤバい、なんかマシュマロの上歩いてるみたい」
樹「例えはかわいいけど…。とりあえず、水」
樹がペットボトルを差し出すと、大人しくそれを飲んだ。
ジェシー「大丈夫?」
北斗「ん…」
高地「でも、なんでジェシーが?」
ジェシー「いやぁね、やる前に北斗がちょっと弱気な感じで、不安って言ってて。で、体調悪くなったときの合図を決めといた。俺の肩を2回叩いたら、代わりに止めるっていう」
慎太郎「ああ、それでさっき合図送ったわけだ」
北斗「うん…」
大我「ちょっと休んだらできそう?」
北斗「わからん…」
高地「無理は禁物だからな」
北斗は頷いた。
樹「目閉じとき。楽だから」
そう言われると、目を閉じて椅子の背にもたれかかった。
樹がそっと北斗の黒髪を撫でると、北斗の口角がやや上がった。
樹「何だよ。寝るなら寝とけ」
ジェシー「AHA!」
慎太郎「冷たいなぁ樹~」
北斗「ねえもうちょっと撫でてよ」
樹「……もうやんねぇ」
北斗「ええー」
大我「かわいそう笑」
高地「アハハ不憫w」
眠っていた北斗が目を覚ますと、周りには誰もいなかった。
辺りを見回すと5人が奥のほうでスタッフさんと話しているのが見える。
話し合いなら参加しないと…と立ち上がった。先ほどのようなめまいは感じなかった。
と、高地が歩いてくる北斗に気付く。「お、北斗! もう大丈夫?」
北斗「うん。なんか話し合い?」
慎太郎「そ。後で北斗にも伝えとこうと思ったんだけど」
樹「次の企画のこと。外ロケなんだって」
北斗「そうなの? やった!」
ジェシー「外、意外と好きだもんね~」
大我「でも大丈夫かな」
樹「そうだよ、やったーじゃなくて、俺らが話し合ってたのは、ちゃんと6人で行けるとこ」
北斗「え?」
樹「あんまり騒がしいところならダメだろうし、静かなとこで企画出来そうな場所っていったら難しそうだから色々考えてた」
北斗「え、そうなの…。なんかごめん、呑気に寝てて」
高地「いや寝てていいんだよ、北斗は」
樹「で、枠組みとしては、自然がいっぱいのところに行こうかってなったの。俺らも忙しいから、自然でリラックスしたらどうですかって提案してくれたから」
北斗「おお、いいじゃん! 嬉しい」
大我「ね。みんな賛成してたから決まりそう」
ジェシー「楽しみだなー、どこ行けるんだろう」
慎太郎「釣りとかしたいな!」
樹「お前はDASHでやってるだろ笑」
高地「確かにw」
北斗は改めて、メンバーとスタッフの愛を感じた。
やっぱりteam SixTONESは最強だな。
最強という言葉以外、当てはまるものが見つからない。
伝えるには恥ずかしくて、北斗は心の中にそっと仕舞った。
続く