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今日はいつもより気持ち早めに仕事に出ていった奏斗は、夕方に差し掛かる前に帰ってきた。出迎えた時点で機嫌良さそうに鼻歌まで歌っている。
不思議に思ってじっと見つめると、視線に気付いて目が合ったあとにっこにこ笑顔を向けられた。
🍷「とりあえず風呂入ってくる〜」
おそらく私が何だと聞きたいのはわかっていて、敢えて流したように思う。
なんともいえない気持ちになったけど、別に不機嫌な訳ではないので気にする必要もないだろう。
夕飯の準備を始めるにもまだ少し早く、微妙に持て余した時間を潰そうとスマホを弄っていた。
🍷「ふぃ〜。ねぇ今日ごはん何作ってくれるの?」
風呂上がりの奏斗が、私の座っているソファの後ろから覗き込んできた。
シャンプーのいいにおいがする、心臓に悪い。
🌸「グラタンにしようと思ってるけど」
🍷「あぁ〜いいね、楽しみ。作業してるから出来たら呼んでもらっていい?」
🌸「はーい」
楽しみですって。
ちょっとやる気出てきた、インスタントにしようと思っていたスープもちゃんと作ろう。
自室に引っ込んだ奏斗を見送ってからキッチンへ移動する。
今日は心なしかいつもよりさくさく料理が進んだ。
普段より少し早いけれど、冷めてしまっては勿体無いので奏斗を呼びにいくことにしよう。
🌸「ちょっと早くなっちゃったけど」
🍷「腹減ってるしそんくらいいいよ。いただきまーす」
🌸「いただきまーす」
🍷「あっつ…!」
🌸「ぇ気をつけて、まじで舌火傷するよ」
🍷「でもうまーい」
🌸「それはよかった」
お気に召していただけたようでなにより。
食後の片付けを終えてリビングに向かうと、ソファを背もたれに座っていた奏斗にちょいちょいと呼ばれた。
🌸「?」
隣に座ろうとしたら、更にここ、と脚の間を差される。
何だかよくわからないけど、まぁ拒否る理由も無いし素直に差されたそこに収まった。
🍷「……ふ、」
🌸「は?なに??」
🍷「い〜や何でもないよ?かわいいなぁって思っただけ」
🌸「!」
こう唐突にかわいいとか言われるの、いまだに慣れない。
明らかにそういう空気感の中で言われた時はまだなんとか返せるんだけど。
いたたまれなくてぎゅっと身体を丸めていると、また頭上から笑ったような声が漏れ聞こえた。
🍷「はいこれな〜んだ〜」
ガサガサと何かを振っているらしい音がする。
釣られて顔を上げると、奏斗が手にしていたのは私の好きなブランドのチョコレートだった。
🍷「今日のデザートにいかがですk…」
🌸「食べる!」
🍷「返事はっやwww」
🌸「60%の…」
🍷「まてまてまて」
なんだよ早くくれよ、そのチョコほんとに好きなんだよ。
まてをくらいチョコを袋ごと離された。
一緒に座ったままではリーチ差で届かない。
🍷「ちゃんとあげるから待って。え〜、60…これか?」
🌸「それ〜」
🍷「はいはい…、はい、あーん」
🌸「???」
選んだチョコを手に取ると、キャンディ包みされたそれを開けて私の口元に近づける。
一瞬訳がわからなくてぼーっとしてしまった。
🍷「ん?食べないの?」
🌸「…いや、自分で」
🍷「え、だめ。これで食べないならあげない」
奏斗を見上げると楽しそうににやにやしている。
チョコをそのまま渡さなかったのはこの為か。
ちょっとの羞恥心とお気に入りのチョコ、天秤にかけたら当然チョコに軍配が上がった。
どうするのとばかりにゆらゆら動いている奏斗の手を掴んで、摘まれているチョコをぱくり。
🌸「んま〜〜〜」
🍷「良かったねぇ。ねぇ俺にもちょうだい」
🌸「どれがいい?」
🍷「🌸が食べないのでいいよ」
食べさせろとばかりに口を指差している。
今日はこれをしないといけないらしい。
チョコを食べる為には仕方ないので、あまり得意ではないホワイトチョコを選んで奏斗に食べさせる。
🍷「あま」
🌸「チョコだからね」
🍷「もいっこ食べる?何がいい?」
🌸「シーソルトがいい。ある?」
🍷「あるんじゃない?一通り買ってきたし」
袋から味を確認しながら一つづつ取り出す。
奏斗ってきれいな手してるよなぁ。
あ、期間限定のやつもある。
🍷「青いやつだった…と思うんだけど」
🌸「それはソルテッドキャラメル」
🍷「…よくわかるね」
🌸「好きなの覚えてるだけ」
これだよとシーソルトを指差すと、先ほどと同じように包みを開いて私の口元へ。
どうせこうしないとくれないし、今度はすぐにチョコを口で受け取った。
アクセントの塩が効いていてとても美味しい。
ひと粒が意外と大きめだからゆっくりもぐもぐしていたら、俺にもとまたねだられたので、今度は抹茶味を食べさせた。
日中にあったことを話ながら、たまにチョコを食べさせられて。
その間もずっと抱っこ状態でどうしようかなと思ったけど、ふと見上げた時の奏斗の表情がとても穏やかで優しかったせいで逃げられない。
奏斗が満足するまでこのままでいいかと、絡めていた指に込める力をほんの少しだけ強くした。
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チョコ食べさせて欲しかっただけ🍫