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「いらっしゃい」
そして樹といろいろ話していると、いつの間にか美咲のお店に到着。
「あれ?樹と透子ちゃん二人一緒?」
「ってことは、ようやく?」
「はい。ご心配おかけしました」
店に入ると、美咲と修ちゃんが樹と二人でいることにすぐ気付いて話しかけて来てくれて、返答する。
二人で席に座って適当に注文。
「やっとか」
「ようやく迎えに行けました」
修ちゃんの言葉に樹も返答。
「これでうちらも安心出来る感じ?樹くんもう大丈夫ね?」
「はい。もう大丈夫です」
「樹くん、ちゃんと透子迎えに行ってくれてよかった。結局この子未練タラタラだったからさ。もう見てるこっちももどかしくて」
「ちょっ美咲!」
「もう今更隠す必要もないでしょ。しっかりあんたが未練タラタラだったのはあの日に樹くんにはバレてるから」
「えっ、あの日って?」
「うーんと、あれ麻弥ちゃんだっけ?彼女のパーティーの帰り」
「あ~。まぁあの日、帰りにここは寄ったけど。でも、その日樹と会ってないよね?」
「まぁ~透子に直接会ってないから、透子は気付いてなかったけどね」
隣の樹を見ると、なんか言葉を濁しながら伝えてくる。
「もしかして・・・私が夢だと思ってたあの樹・・・。ホントにここにいたってこと・・?」
「そういうこと」
私が恐る恐る確認した言葉を、あっけなく笑顔で認める樹。
「はっ?えっ?あれホントに樹に私言ってたってこと!?」
「だからそうだって言ってんじゃん」
「えっ!あっ、そうなんだ!」
過去のこととはいえ、今普通に思い出して、かなり戸惑ってしまう自分。
だって、あれはお酒の勢いで、夢だと思って。
だから樹に素直に伝えられただけで。
まさか、ホントに樹に伝えてるとは思ってなかった・・・。
「嬉しかったよ。あの時。素直に好きって伝えてくれて」
「いや!あれは夢だと思って!ホントにいるとは思ってなくて!」
「なんで?いいじゃん。夢じゃなく、ちゃんとオレがその言葉聞けたんだから」
「まぁ、そうなんだけど・・」
「あの時ちゃんと気持ち聞けたから、オレは安心して透子迎えに行けた」
「でも・・ちゃんと伝えたワケじゃないし・・」
「だからオレも好きだってちゃんと伝えたでしょ?」
そういえば・・・。
確かに、あの時、夢の中で樹も好きだと伝えてくれてた。
「あれ・・ホントに樹が伝えてくれてたの・・?」
「そうだよ。あの時、透子迎えに行くって言ったのも覚えてない?」
「おぼ・・えてる・・」
「よかった」
「でも夢の中だと思ってたから、ホントにそうだって思ってなくて。自分が都合いい樹の空想作り出したのかなって」
「そんなワケないじゃん(笑)勝手にオレ空想のヤツにしないでよ」
「だって・・あの日。麻弥ちゃんのパーティーで見かけたけど、樹なんか遠くに行っちゃった感じがして寂しくなって・・。パーティーでも一度も会いにも来てくれなかったし、結局そういうことなんだなって。やっぱりもうやり直すことは出来ないんだなって思って、それで最後にお酒飲んで忘れようとして・・・」
「ちょっと待って。相変わらず勝手だよね透子は」
「えっ・・・?」
「なんでそうやって勝手に忘れようとすんの?オレの気持ちは変わってないし、オレ自身も遠くに行ってもいなければ何も変わってない」
「だって・・・」
「でもまぁ、そんなことだろうとは思ってたけどね」
「え?」
「あの日、美咲さんから連絡もらってさ。透子がオレ恋しくなってどうしようもなくなってるから、どうにかしろって」
「えっ?そうなの?」
「だって透子見てられなかったしさ。そろそろ樹くんも動き出すことは知ってたけど、その前にどうしてもあの日は樹くんに知らせたくなって」
「美咲・・・」
「まぁ、結局それからオレが店に駆けつけた時は、すっかり透子出来上がっちゃって酔いつぶれてたからさ。しばらくオレは隣でそんな透子眺めてただけなんだけど」
「そうだったんだ・・・」
「だからあの時素直な気持ち透子から聞けて嬉しかったし、オレも透子に伝えた。もしかして記憶は飛んでて覚えてないかもなとは思ってたけど・・。まさか夢の中の出来事だと思ってるとは思わなかった」
「そっか・・。だから、あの時、夢の中のはずなのに、やけにリアルで幸せな気持ちになれてたのか・・」
「そりゃ。実際そこにオレいたからね」
「なら・・・もっと早く来てくれれば・・ちゃんと会えたのに・・・」
「ごめんごめん。なかなかその時間まで動けなくて」
「パーティーでも、ホントは会いたかった」
「うん。オレも透子あの日見かけて、ホントは声かけたかった」
「えっ?気付いてたの?」
「もちろん。オレが透子見過ごすはずないでしょ」
「だったら」
「でもあの時は、オレの中でまだ準備出来てなかったから」
「準備?」
「そう。あの時、声かけたところで、透子戸惑わせるだけだし。実際そこで声かけられたところで、まだオレとしては何も出来なかったから」
「そっか・・・」
「だから、ちゃんと全部準備万端にして、迎えに行くってそう決めてたから」
「そう、だよね」
「でも、やっぱオレも透子に会いたくて仕方なかったし、美咲さんに店でオレのことで荒れてるって聞いて、いてもたってもいられなかった。あの時は正直オレも何も考えずに気持ちだけ突っ走ってただけだったから」
樹も同じように想ってくれていたとわかっただけでも嬉しい。
「だから、あの時、透子酔いつぶれてた後でよかったかも」
「なんで?」
「あの時もし透子酔いつぶれてなかったら、間違いなくオレの気持ちも止められなかったから」
そうなってたら、どうなっていたんだろう。
「そしたら、また透子混乱させて傷つけてたかもしれないからさ。あのまま透子が気付かないままでよかった」
「そっか。そうだね。今まで待った意味ないもんね」
「うん。ここまで透子に待っててもらった以上、これ以上は透子傷つけたくなかったし、ちゃんと迎えに行きたかった」
「うん」
「ずっとオレを好きでいてくれて、待っててくれてありがとう」
「こちらこそ。ちゃんと迎えに来てくれてありがとう」
そうだ。
樹はこういう人だった。
私と出会う前からずっといろいろ考えてくれていた人。
だからこそ、最後まで中途半端なことを絶対しない人。
何があってもここまで意志を貫いてくれたからこそ、きっと今の私たちはこうしていられる。
樹は私を信じて。
そして、私は樹を信じて。
お互いがお互いを信じて、忘れられなくて、待っていたからこそ今がある。
私は少し不安なことがあれば、時に樹を信じられなくなったりしてたけど。
きっと樹はどんなことがあっても、私のことを、私へのその想いを信じてくれていたんだと思う。
その気持ちを大切にしながら、ちゃんと樹は迎えに来てくれた。
きっと昔とずっと変わらずに、同じ想いのままで。
だからきっと。
私は好きになった。
絶対に信じて想いを貫いてくれる樹を。
ずっと先の私まで守ろうとしてくれる樹を。
私のすべてを受け止めてくれる樹だから。
樹のすべてで私に想いを伝えてくれる樹だから。
だからきっと。
樹との出会いは必然で。
好きになるしかなかった運命。