「透子。オレから修さんたちに伝えていい?」
「ん?何を?」
「オレたち結婚すること」
「あっ、うん。お願いします」
そうだ。それもちゃんと伝えなきゃ。
一番心配かけて面倒かけて見守って来てくれた二人だから。
「修さん!美咲さんもちょっと時間空いたら話したいことあるんですけど」
「ん?話?今なら大丈夫だぞ」
「どしたの?改まって」
お店の流れが落ち着いて、二人が改めて私たちの元へ。
「修さん。美咲さん。オレ達、結婚することになりました」
樹が男らしくちゃんと二人に報告してくれる。
「おー!そうかー!」
「よかったねー!」
「ありがとう。ホント二人にはいろいろ心配かけちゃって」
喜んでくれる二人に有難い気持ちと、今までいろいろ心配かけてきた申し訳なさと。
だけど、ちゃんと二人でこうやって報告出来てよかった。
「長かったな、樹。ここまで」
「ハイ。ようやくここまで辿り着きました」
「でも昔から見て来てるお前がさ。透子ちゃんと出会うまではどうしようもなかったのに、ホントここまで来れるなんて正直思わなかったよ」
「修ちゃん。樹、そんなに昔酷かったの?」
ついそんな頃の樹が知りたくなって修ちゃんに尋ねる。
「まぁ。それなりに?(笑)」
「いや・・修さん。勘弁してください」
「ハハッ。こいつ透子ちゃんに昔の過去バラされるのが一番嫌がるからオレにしたら面白くてさ(笑)」
「何?樹、そんなに昔すごかったの?」
そして私もそんな困ってる樹に直接聞いてみる。
「いや。透子まで勘弁してよ。別に透子知らなくてもいい過去だから」
「なんで?私は樹のすべて知りたいけど。過去も悩んでることもなんだって」
「透子・・・」
「いや、でもまぁ・・他の誰か別の女性の話は、あんまり聞きたくないけど・・・」
正直、そこはまだ受け止められる余裕はない気がする。
「えっ、何?透子、オレの過去にヤキモチ妬いてくれるの?」
するとなぜか嬉しそうに反応する樹。
「ヤキモチっていうか・・なんか、それは別に知りたくないっていうか・・」
「なんか嬉しいね。オレの過去に嫉妬してくれるとか。こんな姿見れるなら昔のオレも悪くなかったみたいな?」
「ちょっと!」
「嘘。冗談。大丈夫。透子ほど好きになった人他にいないから」
だけど、きっと樹と時間を過ごした女性はたくさんいるんだろうな。
過去にヤキモチなんて妬いたって仕方ないのに。
「っていうか。ここまで好きになったのは透子ただ一人」
だけど、ちゃんとそんな言葉を伝えてくれる。
「樹はさ、ホントに誰かを好きになれないヤツだったからさ。正直オレは心配で、どうにかしてやりたかったんだよね。それはこいつの両親だったり家庭環境が関係してるのも知ってたんだけど、そこはオレにもどうしようもなくて」
「唯一昔から知ってくれてる修さんには、ホント全部知られてますからね」
「だから、こいつ救うのはどうすればいいかオレも一時期わからなくてさ。手を焼いてた時に救世主として現れたのが透子ちゃんだったってワケ」
「私?」
「そう。ずっとこいつフラフラしてて、何に対しても誰に対しても真剣になったり夢中になるってことなくてさ。そんな時偶然出会った透子ちゃんがそんなコイツを変えてくれた」
「オレさ、修さんにその当時”いつまでもそんなフラフラせずに、誰かを本気で好きになれ” ”誰かを本気で好きになれば、その人を守りたいと思うようになって、その人のために頑張れる自分になれる”って言われたことあって。でも、オレその時その意味全然わかんなくてさ」
「あ~オレ樹にそんなこと言ってたな」
「そもそも誰かを本気で好きになれなかったし、それが出来ないのにそういう気持ちとかマジでわからなかった」
「お前ずっとそれ愚痴ってたもんな」
「でもさ。それ透子好きになって初めてその意味がわかった。透子の存在で頑張れる自分になれた」
「樹の変わりようホントすごかったよ。好きな女出来たら、こんなに変われるもんなんだなって、はっぱをかけたオレが一番ビックリしてたよ」
次々出てくる樹のエピソードにただ驚きながらも、それと同時にそんな頃から想ってくれてたという幸せ。
そして、そんな頃から私が樹の力になれていたことが嬉しい。
「透子に出会えたおかげでさ。両親とも初めてちゃんと向き合えた」
「うん。それは私も嬉しかった。今までの樹のツラさとかはわかってあげることは出来ないけど、でも今苦しんでることは私にも分けてほしいし、一緒にこれからはちゃんと解決していきたい」
「ありがと透子。これからはそうする」
「透子ちゃんがまさかそこの問題も解決しちゃうとはね」
「そう。だから、透子は初めてオレが真剣になれて夢中になれた人。オレにすべての希望を与えてくれた人」
樹が隣でまっすぐ見つめながら優しい表情と共に伝えてくれる。
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