──翌朝、朝食を共にした後で、「週末は、どこかに行きませんか?」と、彼女へ誘いかけた。
「少しは、気持ちを確かめるようなことを、してもいいのではないのかと思って」
自分自身にも言い聞かせるような思いで、そう話す。
彼女はまだ不安感を隠せずに、返事に迷っている様子で、
「私が、あなたをエスコートをしますので」
少しでもその不安を取り去ることができればと声をかけると、「はい…」と頷きがて返された。
──週末になり、車で彼女を出迎えた。
高速を抜けて湖へ向かい、思い出深い観光船に乗った。
父との最初で最後の旅行になってしまった、幼かった頃の当時の記憶が蘇り、
「いつかまた、ここには父と来たいと思っていました。けれど、私も忙しさに追われている内に、その機会を逃してしまって……」
船のデッキで彼女を抱き寄せて、呟くと、
「だけど、そんなに大事な場所に来るのが、私とでよかったんですか?」
上目遣いに私を見つめ、そう彼女が口にした。
その優しげな思いやりに、どうしてこうも君は私の気持ちを掻き乱すんだと……、
「……あなただから、一緒に来たかったんです」
たまらなくなる想いを伝えると、その頬にそっと口づけた──。
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