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続、、、き、、、
作品がよすぎる

こんにちは、くろたです。
お待たせしました。
⚠︎ 政治的意図なし
完全なるフィクションです。犯罪を教唆するものではありません。
かちゃかちゃと金属の音がする。錆びついて、ガサついた金属が心地悪い。
もう嫌だ、と手が根を上げた。
居場所を求めるように視線をずらす。
隣に座り込んで黙って本を読んでいる日本をみた。
こちらに興味がないのかあるのか。
話しかけるわけでもこちらを見るわけでもないのに、ただ近くにいる。
いつもは気にならない。
ただ今はなんとなく落ち着かなかった。
古い記憶の形見を引っ張り出したからだろうか。
「…これ、昔貰ったものなんだ」
独りにはなりたくなくて。存在証明のようにそう言った。
日本がこちらを向く。その視線に安堵した。気がした。
「…確かに古そうですね。」
ちらりと俺に手元を見てそう言った。
裏表のない、言ってしまえば何も考えていなさそうな声。
今まで聞いたことがない声色だと常々思う。
「…前の雇い主に貰った」
「へえ」
日本が本を閉じる。
「……好きなんですか」
「……わからない」
少し考えてから答える。
「これしか知らないから」
「……ふうん」
先を聞き出そうとはしない。ゆっくりと頷くだけだった。
「……変な人だった」
「そうなんですか」
「俺を拾ったくらいだから」
「……そうですか」
淡々とした相槌。
「……いつから人を殺してたのか、正直覚えてない」
日本の指が、本の表紙の上で止まった。
けれど、何も言わない。
「……何度か拾われて、捨てられた」
「……親は?」
「わからない」
肉親のことなどもう思い出せなかった。
記憶を辿ろうとすると、ところどころが濁っている。
「最初の人は覚えてない」
「次の人で、初めて人を殺した」
「……へえ」
「ちゃんとやれば、食事も寝る場所も貰えた」
その後、何回拾われたのか。
何回捨てられたのか。
もう覚えていない。
場所が変わっても、人が変わっても、やることは同じだった。
何をしろと言われればやる。
失敗すれば殴られる。
ちゃんとやれば、食事が出る。
寝る場所を与えられる。
それだけ。
いつからか、それを疑問に思うこともなくなった。
「次はこれをやれ」
そう言われることが、嫌ではなかった。
むしろ、何をすればいいのかわかることが楽だった。
何をすればいいのかわからないことの方が、ずっと怖かった。
「……それしか、居場所がなかった」
「……そう、ですか」
日本の声は変わらない。
それが妙に心地よかった。
最後の人。
前の雇い主は、少し変わった人だった。
失敗しても怒らない。
それに、俺に刃物以外のものを渡した。
「……それ、ですか」
日本が俺の手元を指差す。
錆びついたパズル。
「そう」
あの人から貰ったのは、これだけだった。
それでもこれは俺の知らない世界だった。
初めてだった。
なんの役にも立たないものを貰ったのは。
『拾い物だ。それで暇潰してろ』
決して優しい声ではなかった。
それでも、何となく覚えている。
最初は、それが何なのかもわからなかった。
冷えた金属を理由もわからず弄った。
それだけだった。
「……それで」
言葉が途切れる。
抜け落ちた記憶を探しても、何も出てこない。
ただ最後に見た景色だけが、妙にはっきり残っている。
「何年か後に……いなくなった」
「……いなくなった?」
「ああ」
少しだけ目を伏せる。
「伽藍堂だった」
あの日の部屋は、やけに広く見えた。
人がいないだけで、こんなにも広くなるのかと思った。
「雇い主も。他の人も」
鼻腔の奥に、冬の匂いが蘇る。
冷たくて、乾いた空気。
あれだけは、今でも覚えている。
「……何も言わずに?」
「……ああ」
少し考える。
「……そんなものだ」
結局、いらなかったんだろうな。
そこまで言って、口を閉ざした。
日本は何も言わなくなった。
全てをうつすようでいて、全部透かして。
何も映らない目。
そのまま消えそうな。
かつての誰かの面影が重なった。
「……お前も、何も言わないんだな」
「……貴方のごく一部しか知らない分際で、慰められるほど僕は偉くないので」
簡素な声だった。
日本は少しだけ視線を落としていた。
頭の中が、一瞬だけ止まった。
可哀想でもない。
大変だったね、でもない。
そういう言葉を期待していたわけじゃない。
ただ、ありきたりな言葉が返ってくると思っていたのに。
「……変な奴だな」
「皆さん揃ってそれ言いますけど、僕は普通ですからね?」
日本がきゅっと眉を寄せる。
普段、表情なんてほとんど変わらないくせに。
こんなくだらないところでは、妙に顔に出るらしい。
「僕は変じゃない……いや、普通の基準が違うのか……?」などとぶつぶつと呟く日本を見る。
過去の話の余韻もへったくれもない空気。
さっきまで鼻の奥にこびりついていた冬の冷気まで、いつの間にか薄れていた。
「……これ、いらないと思うか?」
「……前の雇い主に貰った奴ですか?」
「そう」
手の中の錆びた金属を見る。
「……なんで持ってるのか、わからないから」
「………」
唐突な問いに、日本は考えるように視線を泳がせた。
しばらく考えてから、薄く口を開く。
「……僕なら、特別捨てたい理由がないなら、そのまま持ってますね。…別に、判断を急ぐようなものでもないですし」
じんわりと、温度の低い声が耳に残った。
掠れた頭のどこかで、かち、と音がした気がした。
「……お前、整頓下手そうだな」
「……バレました?」
形容しきれない感情のやり場を失って、そんなことを言えば、日本が眉を下げる。
「自覚してますよ……」
笑っている、というほどではないが、柔い顔だった。
胸の奥がぎゅう、と鳴る。
「……日本」
「……はい?」
「ここにいてくれ」
熱に任せるように、声を絞り出す。
日本がわずかに目を見開いた。
影に沈んでいた赤い瞳が光を拾う。
やけに綺麗だった。
「……もう少し」
それだけ言って、ようやく息を吐く。
「……別にいいですよ」
しばらく俺を見つめていた日本は、やがてそう言って、また本を開いた。
ずれていた空気が、ゆっくり元に戻って、何もなかったように振る舞う。
かちゃ、とやけに小気味良い金属音が鼓膜に届いた。
「フォロワーさんの推しが描きたい」を進めているんですが、思ったよりたくさんリクエストが来まして。嬉しい限りです。
なんか線画に五時間かかってましたが。大丈夫かなこれ。
ぼちぼちがんばります。
あと、YouTube始めました。
「kurotanngo」と調べたら出てくると思います。
ちょっとだけ動画も投稿しました。
それでは、さよなら。