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第6話 引いた手は、離れたとは限らない
翌朝。
学園は、驚くほど平穏だった。
(……拍子抜けですわね)
昨日のあの空気が嘘のように、
廊下ではいつも通りの挨拶と雑談が交わされている。
誰も、あの庭園の話をしない。
噂にもならない。
(全員、大人ですわね……)
そう思おうとして、
リリアーナは小さく眉を寄せた。
(いいえ。
“大人しくなった”のではありません)
――整理されたのだ。
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最初に違和感を覚えたのは、アレクシスだった。
朝の挨拶は、以前より丁寧。
距離も、きちんと保たれている。
「おはよう、リリアーナ。
今日の講義は選択制だったね」
「ええ、承知していますわ」
それだけ。
(……踏み込んできませんのね)
だが、その代わり。
時間割、行事、進路の話題になると、
必ず彼が“近くにいる”。
(干渉しない。
でも、主導権は渡さない……)
静かな王太子ムーブだった。
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次に、ルーク。
話しかけてはこない。
視線も控えめ。
だが――
図書室で欲しかった本は、
必ず先に確保されている。
「偶然です」
そう言って差し出される本。
(偶然が、過ぎますわ)
合理性の仮面を被った、
環境掌握型の距離感。
逃げ道は塞がない。
けれど、選択肢を“最適化”してくる。
(相変わらず厄介ですわね……)
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カインは、何もしてこない。
話さない。
近づかない。
ただ。
訓練場で誰かが声を荒げた瞬間、
彼が一歩、前に出る。
それだけで、場が静まる。
(……番犬ですの?)
守るとも、縛るとも言わない。
だが、触れさせない。
一番、原始的で、分かりやすい。
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エマだけは、変わらなかった。
「リリアーナ様、今日も素敵です!」
(そこは通常運転ですわね……)
救い、だった。
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その日の夜。
リリアーナは、日記を開く。
――拒絶は、成立しました。
――理解も、されたはずです。
けれど。
(誰も、手放してはいません)
力で囲う者。
理で整える者。
沈黙で守る者。
形が変わっただけ。
(独占宣言は……終わっていない)
それでも。
彼女は、ペンを止めなかった。
(いいですわ)
(なら私は――
“選ばせる側”でい続けます)
静かな駆け引きは、
もう次の段階に入っていた。
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昨日の続き!!今日は10話までいくよ〜!!
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