テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
こんにちは!
前のアカウントが消えてしまったので再度作りました
以前のアカウントでは「ソンホ大戦争!〜コムチズ〜」と「なんで僕が好かれるの?!」をお届けしていました!
「なんで僕が好かれるの?!」に関しはまだ完結していない作品なので続きが見たい人がいればこちらで続きを出していこうと思います!
前のアカウントの作品も見ていただけると幸いです😊
では本編どうぞ!
第一話 距離の中に
リハーサル室の空気は、まだ朝の匂いを含んでいた。
鏡張りの壁に反射する自分の姿を眺めながら、ソンホは軽く肩を回す。
周りではメンバーがそれぞれ準備をしていた。
音楽を流して体を温める者、ストレッチをする者、ソファに沈み込んで眠気と格闘する者。いつも通りの風景だった。
けれど、ほんの少しだけ視線を逸らせば、いつも引っかかる存在がいる。
黒いパーカーを羽織ったテサンが、ヘッドホンを片耳だけ外してリズムを刻んでいた。
背が高く、体の動きが大きいせいか、彼がいるだけで空気がよく揺れる。
「……テサニ、今日やる気ある?」
ソンホはわざと何気ない声を投げた。
するとテサンは、すぐにこちらへ目を向けて笑った。
「もちろんですよ、ソンホヒョン。俺、ヒョンに負けてられないんで」
その口調は冗談めいていたけれど、瞳は冗談じゃなかった。
ソンホは、その真っ直ぐさに一瞬だけ言葉を失う。
すぐに肩をすくめて、
「負ける気ないけどね」と返した。
テサンは昔から、どこか挑むように自分を見てくる。
年下なのに、子どもっぽさよりも勢いが勝っているからだろうか。
ソンホにとっては、可愛い弟のようでもあり、時に妙に意識させられる存在でもあった。
その日もリハーサルは順調に進み、何度も振りを合わせた。
休憩に入ると、ソファに腰を落としたソンホの横に、当たり前のようにテサンが座る。
「ヒョン、今日のこの部分……俺、もっと揃えたいんですよ。ヒョンと」
耳元に落とされる声は低く、真剣で。
ソンホは胸の奥に小さな波紋が広がるのを感じた。
絡み合うはずのない線が、ふと重なって見える瞬間。
その意味を、まだ誰も知らない。