テラーノベル
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「……っ、黒瀬さん……」
目元に落ちた柔らかな唇の感触に、柊吾は胸の奥がキュッと締め付けられるような愛おしさを覚える。顔を覆っていた手を退けられたことで誤魔化す術もなくなり、至近距離で見つめてくる瑞樹の瞳から逃げるように視線を泳がせた。
「本当に、痛むところはありませんか? 無理をしているなら、ちゃんと言ってくださいね」
眼鏡の奥の瞳を小さく和らげ、瑞樹は柊吾の頬を包み込むように撫でる。昨夜の肉食獣のような威圧感はどこへやら、今の彼には自分を気遣う優しさと温もりしかない。
「あ……はい。本当に……大丈夫です。少し、腰が重いですけど……痛くは、ありません」
素直に白状すると、瑞樹はほっとしたように胸を撫で下ろし、今度は額へと優しく唇を落とした。
「よかった。……昨夜は抑えがきかなくて無理させたから……」
「……あの、瑞樹さん。そろそろ離れてくれませんか……すごく、恥ずかしくて……」
シャツ一枚で下半身を露わにしたまま見つめられる状況に耐えかね、柊吾がか細い声で訴えると、瑞樹はくすりと可笑しそうに笑った。
「いやです。恥ずかしがる柊吾さん、もっと堪能させて下さい」
熱い手のひらがするりと際どい部分を撫で、堪らず柊吾の口から小さな喘ぎが洩れた。
「なっ、ちょ……何処触って」
「おや? 少し硬くなってますね……えっちだなぁ」
「そ、それはっ! 黒瀬さんが触るからですって!」
「触っただけでそんなに可愛らしく反応されたら、やめられなくなりますよ」
瑞樹は意地悪く微笑むと、さらに指先に少しだけ力を込めてなぞり上げた。衣服越しではない直の体温と指先の絶妙な刺激に、柊吾は腰をビクッと跳ねさせ、顔を真っ赤にして瑞樹の肩を押し返す。
「〜〜〜っ! あ、朝からダメですって……っ!」
「ダメですか? でも、昨夜の続きをしたいと言ったら……嫌ですか?」
耳元で囁く低く甘い声と、上目遣いで覗き込んでくる瑞樹の表情。いつもの冷静で誠実な彼の姿からは想像もつかないような、甘やかで貪欲な一面に、柊吾の胸はドクンと大きく鳴り響く。
断らなきゃいけないのに、こんな風に色っぽく迫られたら「嫌だ」なんて言えるはずもない。
柊吾が返事に躊躇っている間にも、首筋に瑞樹の熱い吐息が吹きかけられ、ゾクゾクとした不快感のない痺れが全身を駆け巡る。さらに、じわじわと指先が足の付け根を優しく撫で上げていくと、あまりの甘い刺激に堪らず「っ……あ」と小さな喘ぎが漏れ、柊吾の腰が浮いてしまった。
「……顔、すごく赤くなってますよ。体が素直に反応してるのに、まだ拒むんですか?」
「〜〜〜っ! あ、朝から……ほんとにダメですって……っ!」
「ダメですか? じゃあ、朝食の後に僕とお風呂に入る……それなら許してくれますか?」
「っ、お風呂……っ!? な、何言ってるんですか! それはもっとハードルが高いです……っ!!」
あまりの提案に跳ね上がるようにワタワタと手を振り、柊吾は全身を真っ赤にして拒絶する。そんな柊吾の焦りようを愛おしそうに見つめながら、瑞樹は「ふふ、残念です」と喉を鳴らして可笑しそうに笑った。
「本当に、可愛い人だ……。これ以上イタズラしたら、嫌われてしまうかもしれませんね……」
瑞樹は惜しむようにゆっくりと手を離すと、立ち上がって着替えを渡してくれた。
「朝ごはん、出来てますから……着替えたら、一緒に食べませんか? 真里子さんが戻るまで、二人きりで過ごしたいんです」
瑞樹が古い襖を閉めて部屋を出ていくと、柊吾はへたり込むように畳に倒れ込んだ。
赤く熱を持った顔を両手で覆いながら、じんわりと湧き上がる愛おしさに口元が緩む。
「どうしよ。僕、心臓持つかな……」
ぽつりと漏れた呟きが、静かな部屋にぽつんと溶けていく。
赤く熱を持った顔を両手で覆ったまま、柊吾は深く息を吐き出した。ドクドクと早鐘を打つ胸の鼓動は、一向に静まる気配を見せない。
今までは優しくて誠実な「お隣の介護士さん」だったのに。こんな色気たっぷりに迫られて、意地悪に弄ばれるなんて反則だ。知らなかった瑞樹の艶っぽい表情や情熱的な一面を見るたび、胸がキュンと跳ねて、底なしの沼へずぶずぶとハマっていくのが分かる。
(でも……すごく、嬉しい……)
手の甲越しにむずゆいような笑みがこぼれた。自分に向けられる瑞樹の素直な情熱と愛おしさを噛み締めながら、ゆっくりと身体を起こす。
腰に微かな重みを感じつつも、枕元に置かれた服を手に取った。
洗剤の匂いに混じる瑞樹の香りを胸一杯に吸い込み、照れくささを振り払うように服に袖を通した。
#婚約破棄
霞花怜
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コメント
3件
朝からイチャイチャして〜♡もう、マジで大好き!!♡ なに!?この2人のイチャイチャ!!しかも柊吾様が照れていらっしゃるだと!? これは写真におさめたいッ!!作者様も、体調などにお気をつけてくださいね!!
かんなさん、第75話読みました。瑞樹さんの甘やかで意地悪な一面と、それに翻弄される柊吾さんの照れくさそうな反応がたまらなく愛おしかったです。「どうしよ。僕、心臓持つかな……」という呟きに、二人の距離が確実に縮まっているのが伝わってきて、胸がきゅっとなりました。朝の静かな空気の中で、瑞樹さんの優しさと情熱が混ざり合う時間がとても温かくて、続きが気になります。