んー…ねむい
(明日学校祭 、吹部の発表だけ出る
start
き ー ん こ ー ん か ー ん こ ー ん
赫「 …… はぁ 」
机の上に広げられた答案用紙を、俺はじっと見下ろしていた。 真っ赤なバツ印が並んで、点数欄には無惨な「28」。
どうしよう。 親に見せるのも嫌だし、先生に呼び出されるのもごめんだ。
赫( 破り捨てるか … 隠すか … )
そんな事ばかり考えていると、次の授業が体育だと気づいた。
赫「 うわっ 」
ただでさえ気分は最悪なのに、わざわざ嫌いな授業に出る気なんて起きない。
赫( うん 、さぼろ )
どうせ俺がいなくたって誰も困らない。そう思って、捨てる予定の答案用紙を握りしめて、席を立ち上がり教室を出た。
人のいない廊下を歩いて、曲がり角を曲がろうとした瞬間 。
ぽすっ
赫 「 ん ” !? 」
誰かの胸元に顔をぶつけてしまった。
少し分厚い。女ではない。
紫「 また サボり ? 」
聞きたくなかった声。
見上げると、教育実習生のいるまがいた。
整った顔をわずかにしかめて、俺の手元の答案用紙に目を落としている。
紫「 酷い 赤点 。」
ゞ「 で 、次が体育だと知って尚更やる気出なくなったと… 」
赫「 …… 」
あっさり見透かされて、言葉に詰まる。
逃げ道を塞がれて、思わず足を止める。
赫「 …… どけよ 」
紫「 無理 。授業 戻って 。」
赫「 こっち の 方 が 無理 だっつーの ! 」
紫「 ぁ、おい !」
がしっ!
腕をすり抜けようとした瞬間、がっしりと手首をつかまれる。
赫「 … っ !」
握力が強すぎて、振り払えない。
一歩、二歩と後ずさるうちに、壁際へ追い込まれてしまった。
紫「 ほら 、出よ 。な ? 」
赫「 むり ! 」
紫「 んでだよ … 何 、この 前 みたいに 子供 みたい に 泣く つもり ? 」
赫 「 っ ! 」
昨日のは限界がきただけ。
俺は悪くない。多分。
赫「 …… 」
紫「 … はぁ 、見せて 。答案 」
赫「 ぇ 、? 」
紫「 いいから 。」
すっと、自分が握りしめていた答案用紙が抜き取られてしまった。
赫「 あっ 、… 」
赤点がでかでかと書かれた紙を、いるまが目の前で広げる。 冷静な視線が答案を一通り追ったあと、俺に向けられた。
紫「 なるほど … これじゃあ やる気 も 出ない わけだわ 。サボる のは 駄目 だけど 」
赫 「 …… うるせぇ 」
思わずにらみつけた。 けど、いるまは眉一つ動かさず、淡々と告げた。
紫「 授業 で センコー の 話 聞いてる より 、多分 俺 の 方 が 早い 。 」
赫「 は ? 」
突然変な事を言われて驚き、目を見開いた。
紫「 一応 大学生 ですから 。まあ 一応 だけど 家庭教師 は では あるんだわ 。」
いるまの顔は何故か真剣だった。
ただの教育実習生なのに…。どうしてこんなにただの生徒に?
赫( バカみてえ … )
紫「 親御 さん と 話 を 通せば 、正式 に 契約 できる 。そうすれば なつ の 事 も 堂々 と 見ていられる 。 」
こいつがいるのは1ヶ月間。
そして残り3週間。俺の受験日まで残り2週間弱。ちょうどいいと言っていいくらい。
こうして真剣に話を聞いてくれる大人は中々いない。みんな、成績の良い奴ばっかり。
でも、こいつなら__
赫「 …… はぁ、分かった 。まま達にも話しとくよ。」
紫「 まま 呼び なんだ、」
赫「 いちいち うっせ ! 」
__そして数日後
紫「 今日 から よろしく お願いします 」
母「 うちの子 頭 悪い から 、よろしく ね 」
紫「 はい 」にこっ
赫 「 ………… 」
玄関で母さんに頭を下げるいるまを見て、俺は思わず言葉を失った。
いつも見るきっちりした姿とは違って、ラフな服に袖を通し、無造作に髪をかきあげる仕草。学校出みる時よりもずっと大人で。
母「 なつ、ちゃんと 言うこと 聞くのよ 」
赫「 分かってるよ … 」
がちゃ
赫「 ん 、入って 」
ベッドと机しかない、狭い俺の部屋
いるまが当たり前みたいに椅子を引いて腰を下ろす姿に、なんだか落ち着かない。
俺は気まずく視線をそらし、机の端に答案用紙を置いた。
紫「 んじゃ 、今日 から 鍛え まくる から 」
紫「 ‐‐ 、〜〜 。」
赫 「 ………… 」
机に向かって答案を広げる。いるまが横に座って、わかりやすく解き方を教えてくれる。
……はずなのに、なぜか俺は字が頭に入ってこない。
ふと顔を上げると、いるまの目と視線がぶつかった。
赫「 ! 」
びくっとして、すぐに視線を逸らす
紫「 なつ 、? 」
いるまが静かに話しかける声に、心臓がやけに速くなる。身体の 距離は近いし、手元を覗き込むその姿が、なんだか妙に大きく見える。
赫「 な 、なに ? 」
もう一度顔を上げると、また目が合う。 視線の奥に、ほんの少しだけ柔らかい笑み。 思わず顔が熱くなるのを感じて、手が震えそうだ。
紫「 分かった ? 今の 」
赫「 ぇ、… ぁ … ごめん もう 1回 」
紫「 はぁ … 3度目 は 無い から 」
机の上にノートや答案用紙、資料など様々なものが広がり置かれていて、いるまが横で丁寧に解説してくれる。 「ここはこうだ」とペンで指し示すその指が、偶然俺の手に触れた。
赫 「 … ! 」
思わず体が跳ねる。
手のひらに伝わる感触は、ほんの一瞬なのに。
目線を上げると、いるまは変わらず真剣な顔で答案を見ている。
だけど、なんだかさっきより近くに感じる距離。 腕がほんの少し触れただけなのに、体が熱くなるのを感じた。 顔を上げると、いるまが薄く笑って、手を俺の横に置いた。
赫( ぁ … 避けちゃった )
……… いや、避けちゃったじゃねーよ!
乙女か!俺は男の子…男… うん。よし。
赫「 ……… 」 むずむず
紫「 … 」んじー
じっと俺を見ている目が、何かに気づいたように細められた。
紫「 集中 、しにくい ? 」
……バレてる。
思わず視線を逸らすと、いるまは微笑みながら椅子を少し後ろに引いた。
紫「 じゃあ 、少し 休憩 しよ 。 」
赫「 ぇ 、」
紫「 勉強 も 大事 だけど 、効率 も 大事 なんだよ 。 」
少し息をつきながら、いるまは口を開いた。
紫「 おすすめ は 、まず 理解して覚えること。丸暗記 は 最終手段 。」
赫「 なるほど … ? 」
紫「 それと 、1度 やった 問題 は 必ず 自分 で 解き直す 。書きながら 頭 で 確認 すると、記憶 が 定着 しやすい 。」
赫「 へ ぇ … 」
紫「 あと 、短い 時間 でも 集中 する ポモドーロ方式 」
ゞ「25分 集中 して 、5分 休憩 を 繰り返す 」
なるほど、確かに俺もさっきのように集中力が切れかけることあるし。 いるまの話を聞いているだけで、なんだか少しやる気が湧いてくる。
紫「……よし、じゃあ この 休憩 あと、もう 1度 やって みるか」
微笑みながらいるまが手元の答案を整理するのを見て、俺は少しだけ心が落ち着いた。
コメント
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ちょっと…藐くん、家庭教師まで、、実際教えるの上手そうだなぁw続きがどうなるのか楽しみでぇす!! 学校祭頑張ってください💪